貧血・めまい・疲れ・不眠・うつ…産後の不調に漢方がおすすめの理由

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2016/12/28

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大変な出産を終えた体はボロボロ…なのに、回復する間もなく始まる育児の日々。

激闘激務のなか、心も体もついてこれずに不調が出ることは全く珍しくありませんよね。

さらに、授乳で栄養も必要になります。でも食べる暇や余裕がない。休めば回復するだろうけど、睡眠を十分にとることなんて夢のまた夢です。

少しの不調を我慢しているうちに、日常生活に支障をきたすほどの頭痛・貧血・だるさや疲れ、冷えや肩こり腰痛などに悩まされることにもなりかねません。

そこまでの症状が出てしまうと、病院にかかることになります。でも、授乳中だったりするとやっぱり薬を飲むのもはばかられてしまいますよね。

そこで頼れるのが漢方です。

でも、普段お医者さんで処方される薬とは違うし、どこでどんな風に買って使うのかわからない方も多いのではないでしょうか。

今回は、上手に使えば産後の大きな味方になってくれる漢方についてご紹介していきます。


産後の不調は多種多様。でも強い薬は抑えたい…そこで漢方!

頭痛や腰痛、肩こりにめまい、食欲不振や倦怠感など、産後の不調は多岐にわたります。その症状ごとに薬をもらっていたのでは、薬漬けになってしまうほどです。

それに、授乳中の方も多いですから薬はとにかく避けておきたいのが人情というものです。もちろん緊急を要する場合や、症状とリスクを比較検討したうえで服用する場合はあります。

でも、日常的に症状が続くのが産後の不調の特徴でもあります。強い薬や母乳に影響が出るような薬を長期に渡って服用したくはありません。

産後、特に授乳中にこの不調・つらさを乗り越えるため、漢方が持つ利点は大きく次の2つです。

  • 副作用の心配が比較的少ない
  • 体質から改善して根治が期待できる

実は産後のママの強い味方である漢方、その良さを詳しく見ていきましょう。

授乳中でも使える薬は多くない…安心して使える嬉しさ

例えば風邪薬などの一般的な薬でも、授乳中には使えなかったりします。ただの風邪でも薬がないと本当に辛く、長引くものですよね。

抱っこやお世話で腰痛や肩こりに悩まされていても、湿布に含まれている薬効が気になって使えないというお母さんも。授乳中だからと色々な薬や治療を我慢しているママさんは多いのではないでしょうか。

その点、漢方はおだやかに効いて作用し、普通の薬(西洋薬)と比べると副作用も少なく、赤ちゃんへの影響もほとんど無いため、安心して服用することができます。

唯一、ダイオウ・センナを含む便秘に効果がある漢方を飲んでいると、授乳中の赤ちゃんが下痢をすることがある、という例が報告されていますが、それ以外の赤ちゃんへの影響が報告されたことはありません。

ただし、漢方などの生薬に副作用が無いわけではありません。西洋医学の薬と比べると、程度が軽く頻度が少ない場合がほとんど、ということです。

合わない薬を飲めば胃腸に負担がかかったり、熱やじんましんが出たりします。

万が一を期すためにも、特に妊娠中や授乳中のママさんは、授乳中であることをきちんと医師および薬剤師に相談した上で適切な指導のもと服用するようにしてください。

また、異常を感じたり、なんだかおかしいなと思った場合はすぐに服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。

根本解決…体質改善が期待できる

病気の症状を抑えたり、緩和させたりということに重点を置いている西洋医学とは異なり、東洋医学の漢方は病気の原因となっている体質そのものを変化させていこうという治療法をとっています。

そのため、病気が出てからその症状に対処していくのではなく、現在の症状を和らげると同時にその症状を出している部分に作用して、病気をしない体にする手助けをしてくれます。良く言われる、自分の免疫力や回復力を高める働きがある、ということです。

疲れが原因であれば疲れを取り回復を助け疲れにくい体づくりを、貧血が原因であれば血液を作る手助けをし血の巡りをよくしてくれます。

即効性があまりないと思われがちですが、漢方に即効性がないのではなく、元から変えていこうという働きの違いがあるということなんですね。

産後の体は基本的に疲れており、回復しきっておらず、血が足りず、内臓から疲弊しています。まだ症状として出るほどではなくても色々な不調が隠れていますから、漢方が有効なのもよくわかりますね。

血が足りなかったり気力がなかったり、自律神経やホルモンバランスが乱れていたりと、対処よりも改善が必要なことが多いのも漢方向きといえるかもしれません。

体に合ったものを、指導のもと使うのが安心

多様な漢方の中には、風邪薬もありますし肩こりに効くものもあり、精神安定剤のような効能を持つものさえあり、色々な症状をカバーできます。

多様な不調を大きくカバーするような配合のものもありますし、自分の症状に合わせて独自に配合してもらうことも可能です。

漢方を処方する場合、その人の状態や体質にあったものを見つける必要があります。

自己判断で購入することもできますが、できればしっかり問診を受けて、自分に合った漢方を処方してもらうのが大切です。

漢方には、「四診(ししん)」と呼ばれる独自の診断方法があります。以下に解説しますね。

【証(しょう)】
体力や抵抗力の有る無しを差します。虚証(きょしょう)は体力や抵抗力が弱く華奢で胃腸も弱いなど、実証(じっしょう)は体格も良く胃腸が強くて便秘ぎみなどという特徴を示します。
【気(き)】
気力を示します。元気かどうか、気合いが入るかどうかなどかなりぼんやりしているように見えますが、西洋医学で言うところの自律神経の働きやその異常を看るのに近いとされています。気が乱れていると、無気力・疲労感・うつ・のぼせ・動悸・発汗・不安感、食欲不振などがみられます。
【血(けつ)】
血の巡りを差します。全身を巡る血液が乱れていると、体のあちこちに不調が現れます。女性は月経があるのでなおのこと関係してきます。血が乱れると、月経異常・肩こり・便秘・貧血・肌荒れ・脱毛・冷えなどがみられます。
【水(すい)】
血液以外の体液全般を差します。体の70%は水分と言われますが、水分の代謝や免疫システムに関わる大きな部分です。水が乱れると、むくみ・めまい・頭痛・下痢・排尿に異常が出ます。意外な症状がこの水だったりすることも多く、知られていないことからも注意が必要な項目です。

漢方医はこれらのことをチェックしていきますが、詳しい問診を行って全身をしっかり看てからでないと判断はできません。要因が複雑に絡み合っていることもあります。

普段の生活や自覚症状などを聞き取る他に、舌の様子を見たり、脈や肌の様子を見たり、呼吸や声の大きさ、姿勢や目の色など、本当に色々なことを見て診断されます。

合わない漢方を使っても効き目がないどころか、お腹を壊してしまったりすることもあります。

できれば漢方医や漢方に詳しい薬剤師、カウンセラーの指導のもと、適切な処方を受ける方が良いでしょう。

多様な漢方とその効き目!症状別に一般的な漢方を紹介

先ほどの四診、なんだかどれも当てはまってしまって…という方も多いのではないでしょうか?産後の不調ってありとあらゆる症状を引き起こしますよね。

ここでは、産後の不調のうちよくある次の四つの症状別に、よく処方される漢方をご紹介していきます。

自分で試してみるときなどの参考にしてみてくださいね。

  • めまい・頭痛・肩こりなどの体の不調
  • 貧血・冷えなどの血液不足による不調
  • 体力低下・疲れ・食欲不振などの不調
  • うつや不安などの精神的な不調

市販の漢方薬では、パッケージに効能が示されているものがほとんどなので、それを見れば何に効くかは分かりますが、ここでは先ほどの四診も参考にしながらより詳しくご紹介します。

めまい、耳鳴り、頭痛、肩こり腰痛、産後の不調に効く漢方

めまいも肩こりもよくあるお悩みですよね。これら産後の不調として良く挙げられる症状をオールカバーしてくれるような漢方があります。

【当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)】
産後の不調ならこれ、というくらいよく処方される漢方と言われています。産院などでも良く処方されます。月経に関する悩み・不妊・更年期障害にも効きます。

体力・筋力があまりなく、冷えやむくみがあって貧血傾向があり、婦人科系の疾患を持っている人に向いています。血を作る助けをして貧血を解消してくれるほか、水の排出を助けてむくみをとります。産後のめまいは内耳などの水の巡りが悪くなって出ていることが多く、水分の排出で症状が軽快します。

【桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)】
当帰芍薬散と同じような効能を持っていますが、体格が良く体力がある方で特に冷えが辛い方におすすめです。血が足りないというよりは血が滞っているタイプに効きます。

生理痛が重い、上半身はのぼせているのに下半身は冷えている、という症状に有効です。子宮内膜症などの炎症性疾患にも処方されます。

【桃核承気湯(とうかくじょうきとう)】
生理痛やPMS(月経前症候群)の症状の中でも、精神的なイライラがある、という方に向いている漢方です。同じく血の巡りを良くしてくれると同時に、気のケアをする配合になっています。

比較的体力があり、便秘がちである、手足は冷えるけど顔はのぼせる、という人に有効です。

【加味逍遙散(かみしょうようさん)】
体力が無い虚弱な体質の人で、肩こりや疲れやすさを伴い、精神的に不安を感じる人に有効です。同じく血だけでなく気のケアをする配合になっています。

産後の貧血に効く、母乳栄養に良い漢方

母乳育児を頑張っていると、すぐに襲われるのが貧血。赤ちゃんの栄養不足にもならないよう、常に気をつけているお母さんも多いことでしょう。

貧血からはさらに色々な不調が出てしまいます。鉄剤は胃に負担がかかったりもするので受け付けない方も多いもの。そんな方にオススメの漢方です。

【キュウ帰調血飲(きゅうきちょうけついん)】
産後の体力低下や神経症、自律神経失調症などに効果があります。名前に血が入っているとおり、血のケアをすると同時に気にも作用し、血と気の巡りを良くしてくれます。

体力が無くやせ気味の方、疲れやすい・イライラする・冷えが酷い方におすすめです。

【通導散(つうどうさん)】
上のキュウ帰調血飲とほぼ同じ効能を持ちますが、こちらは体力がある・体格の良い人で、便秘傾向などが見られる方におすすめです。同じく血と気のケアをしてくれます。

産後・術後の体力回復、食欲不振に効く漢方

普通分娩にしろ帝王切開にしろ、どんなお産でも体力は限界まで削られています。その後始まる育児で睡眠不足や過労がたたり、予想以上に疲労回復ができていません。

食べる暇も休む暇もなく頑張っているお母さん達は、気づかないうちに食欲も落ちていたりします。毎日の元気がちょっと足りない、そんな方にオススメの漢方です。

【十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)】
低血圧で心身ともに衰弱している、胃腸が弱っている人に有効です。栄養ドリンクのようにあとちょとの元気を出す助けをしてくれます。体力が無くやせ気味の人、特に衰弱や消耗の激しい人に処方されます。
【補中益気湯(ほちゅうえっきとう)】
上記の十全大補湯とほぼ同じような効能を持ち、気力を補ってくれます。体力の消耗があまり激しくない場合、どちらかというと気力の充実のために有効です。慢性的な疲労感、長引く風邪やだるさなどにも効きます。
【人参養栄湯(にんじんようえいとう)】
同じく体力が無い人で、冷え・寝汗・貧血を伴う人に有効です。滋養強壮のための漢方で、気力だけでなく血の巡りも助けてくれます。回復力が高まり、傷の治りが早くなるとも言われています。

産後うつ、精神不安、パニックに効く漢方

女性ホルモンの乱れや大きなストレスもあり、産後は精神神経症状も出やすいもの。拾う倦怠感、動悸、めまい、不眠などの諸症状も心的なものから来ていることも多いです。

精神系のお薬はかなり強力なものも多く、かといって放っておくにはあまりに辛い症状ですよね。漢方にはそんな症状にも効くものがあります。

【半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)】
漢方の精神安定剤とも言われるほど、精神症状を和らげる効果を持っています。不眠・喉がつかえるような感じ・吐き気や息苦しさ、動悸などにも効果を発揮します。つわりにも効果があるとされています。

ある程度体力があり、精神的なものから動悸やめまいなどの身体的な症状が出ている人に有効です。

【香蘇散(こうそさん)】
胃腸が虚弱で、体力が無い人に有効です。うつなどの症状の他に、風邪の初期・じんましん・頭痛にも効果を発揮します。風邪の初期といえば葛根湯ですが、葛根湯は体力がある人向けです。

ご紹介した漢方は、それぞれの効能や配合が重複しているものも少なくありません。試しながら合っているものを探していくこともできますが、やはり医師や薬剤師の指導を受けると良いでしょう。

漢方はどこで?多様な選択肢を比較検討して

漢方って全く見たことも使ったことも無い、という人もまだまだいますが、最近は取り扱う店舗も増え、割と身近な存在になってきました。

漢方を購入する、処方してもらうのには、大きく次の3つの方法があります。

  • 病院で医師に診察を受け処方してもらう
  • 漢方薬局で買う
  • ドラッグストアなどで買う

それぞれにメリットとデメリットがありますが、詳しくご説明しますので、判断の参考にされてください。

病院で処方してもらえば、より良いものを探せて出費も減らせる

漢方も病院で処方してもらうことができます。どの病院でも漢方を使いたいのですが、と相談することはできますが、漢方に詳しい医師は実はそう多くありません。

漢方医、漢方専門医としてきちんと看板を掲げている医師も最近は増えてきましたので、できればそういったお医者さんを探すことをおすすめします。診断ができて処方も間違いありませんから。

大きな総合病院の中にも漢方を扱っているという先生がいたり、個人病院でも漢方を積極的に取り扱っているところもあります。

病院で診断を受けて処方される漢方は、保険が効きます。診察が必要な分、時間と手間はかかりますが、長期に渡って服用し体質改善を目指す、根治を考えている方は特に医療機関にかかって処方を受ける方が経済的です。

漢方に詳しいお医者さんを捜し当て、診察を受ける、という時間と手間がかかることがデメリットですが、一番確実で安心な方法です。

漢方薬局には漢方カウンセラーがいることが多く指導が受けられる

今やどこにでもあるドラッグストアの他に、看板に大きく「漢方」や「生薬」と書いてある、漢方薬局がまだまだあるのをご存知でしょうか?

看板の通り、漢方を専門に扱っており、専門のカウンセラーや薬剤師が常駐していることが多いです。ちょっと入りにくい門構えのところもありますが、一度覗いてみてはいかがでしょうか。

病院と違って私費になりますが、詳しい診断と処方が期待できますし、合わないなと思ったら行かなければいいだけなので何店か巡ってみるのもいいかもしれません。

ドラッグストアやコンビニで買うことと、医師に処方してもらうことのちょうど中間のような選択肢になります。メリットもデメリットも半々といったところです。

ドラッグストアでも手に入る…すぐに試せて症状に対処できる

最近は市販のお手軽な漢方も増えてきました。24時間営業のドラッグストアなどでもたくさんのメーカーの多様な漢方商品が取り扱われています。

粉末だけでなく固形や液体のものなど、飲みやすさ・効きやすさにも工夫があったり、分かり易く「こういった症状に効く漢方です」と書いてあるのも良いですね。

いつでも買いにいけるという手軽さからも、ちょっとお高くはなりますが試してみるのには良いかもしれません。漢方に詳しい薬剤師が常駐しているところだと良いですね。

最も手軽な方法ではありますが、市販薬は効果が薄かったりあまり良くないものがある、というお医者さんもいます。選んで買うのも使うのも基本的に自己責任となるところも注意が必要です。

産科・婦人科でもよく処方されている漢方、活かして健やかな産後を!

効能の中に、不妊やつわりにも効く、などという記載があったのにお気づきの方も多いかと思います。

産婦人科でも漢方を処方するところはかなり増えてきているようです。

最も処方されているのは当帰芍薬散でしょう。一番試しやすく、諸症状に効くものとも言えそうです。

これで漢方がいけそうだな、大丈夫そうだなと思ったら、より自分に合ったものを探していくというのも一つの手かもしれません。

漢方の世界は奥深く、その効能は決して温いものではありません。医師や薬剤師によるきちんとした指導は是非受けていただければと思います。

自分に合った適切な漢方と出会えれば、産後の不調もきっと和らぎます。出産を経てぼろぼろになった体を放っておくと、何年もして大きな症状が出てくることもあり得ます。

漢方で産後の体をしっかり回復させ、疲れや傷みを後に残さず元気に暮らしていけるようケアしてみませんか?

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