チョコレート嚢胞でも妊娠できる?原因・症状・治療法と妊娠への影響
女性の約1割が発症している子宮内膜症、その中で重度といわれるチョコレート嚢胞は、激しい痛みを伴い不妊を招くといわれています。
術後であっても再発の可能性も伴い、40代になるとの可能性もあるなど、子宮摘出するか閉経するまで長く付き合う必要があります。
チョコレート嚢胞はどんな病気?
体外へ排出されるはずの月経血が何らかの原因で逆流することにより卵巣内で出血を繰り返します。
経血の袋ができ、卵巣が膨らむことで周囲の卵管などに癒着し、袋にある経血が酸化しドロドロになることからチョコレート嚢胞と呼ばれています。
初経から閉経までの妊娠が可能な女性に発症する病気で、20代前半~30代に発症することが多いと言われています。
大きさは、小さいもので1、2cm、大きいもので10cm以上になるものもあります。約5cm以上で手術が必要と言われています。
主な症状は痛みや出血。悪化すると 嚢胞破裂も…
月経痛や出血、性交痛、骨盤痛などがあげられ、嚢胞が大きくなるとお腹が膨らんで見えたり、頻尿や便秘になることもあります。
さらに、手術後の嚢胞の再発や40代になると卵巣ガンを発症するリスクも上がります。
癒着によって卵子の動きに制限がかかることで不妊を招く原因にもなると言われます。
主な3つの痛みについて
- 月経痛:一般的な月経痛よりも痛みが強く出血も多い場合がある
- 性交痛:性交時に圧迫されることから痛みを伴う
- 骨盤痛:嚢胞が大きくなるにつれて圧迫されたり、癒着により引っ張られることで慢性的な骨盤痛を引き起こす
破裂の可能性は?
嚢胞が大きくなったり悪化することでまれに破裂を引き起こすこともあります。破裂の可能性は大きさに関わらずありますが、大きい方ほど注意が必要だと言えます。
また、破裂することで激痛を伴い、手術が必要になります。
目的に応じた治療法を知ろう!費用や副作用についてもチェック!
鎮痛や改善を目的とした鎮痛治療と、改善を目的とした手術療法の2種類があります。
- 鎮痛療法
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痛みを和らげるための鎮痛剤を服用する治療と、症状の進行改善を目的としたホルモン療法があります。
ホルモン療法中は妊娠することができないので、すぐに妊娠したいという方は鎮痛剤を服用しながら不妊治療を行います。
- 手術
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腹腔鏡下手術と開腹手術があります。
腹腔鏡下手術は、腹部に複数の小さな穴(0.5ミリ程度)をあけ、内視鏡器具を使い手術を行います。開腹よりも傷跡が残りにくく、回復も早いのが特徴です。
開腹手術は、腹部を縦横10cmほど切開し手術を行います。嚢腫が大きい場合や癒着がひどい場合また根治を目的として行われます。
鎮痛療法 | 摂取方法 | 使用期間 | 費用 | 効果 | 妊娠 | 副作用 |
---|---|---|---|---|---|---|
鎮痛剤 | 服用 | 期限なし | 安価 | 痛み | 妊娠可能 | 妊娠可能 ほぼなし |
漢方療法 | 服用 | 期限なし | 約4,000円/月 | 痛み改善・体質改善 | 妊娠可能 | なし |
ホルモン療法 | 摂取方法 | 使用期間 | 費用 | 効果 | 妊娠 | 副作用 |
---|---|---|---|---|---|---|
OC/LEP(低用量ピル) | 服用 | 期限なし | 約2,000~4,000円/月 | 避妊・生理痛 | 服用中は妊娠不可 | 吐き気・頭痛等 |
黄体ホルモン剤 | 服用 | 期限なし | 約8,000円/月 | 避妊・生理痛・病巣の縮小 | 服用中は妊娠不可 | 不正出血・貧血・頭痛等 |
偽閉経療法(GnRHアゴニスト) | 注射または点鼻 | 6ヶ月 | 13,000~20,000円(月1回)/9,500円/月 | 避妊・月経痛・病巣の縮小 | 使用中は妊娠不可 | 更年期の症状(ほてり・発汗・イライラ等) |
ミレーナ(黄体ホルモンを含む器具) | 膣内装着 | 5年毎 | 約10,000円/5年 | 避妊・月経痛 | 使用中は妊娠不可 | 不正出血・下腹部痛等 |
手術方法 | 入院期間 | 退院から仕事復帰 | 費用 | 手術内容 | 妊娠 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|---|---|---|
開腹(縦横約10cm) | 7~12日程度 | 1ヶ月程度 | 20~30万程度 | 子宮摘出/卵巣摘出(症状による) | 妊娠不可/妊娠可能(卵巣が一つ残っている場合) | 痛み・再発なし | 手術に伴う合併症 |
腹腔鏡下手術(0.5~2cmを数ヶ所) | 4~6日程度 | 1~2週間程度 | 20~30万程度 | 卵巣摘出/病巣のみ摘出 | 妊娠可能(卵巣が一つ残っている場合) | 痛み・再発リスク軽減 | 手術に伴う合併症・術後卵巣機能低下 |
【すぐに妊娠を考えている場合】痛みを抑えてから不妊治療をする
すぐに妊娠を希望する場合は、不妊治療をしてから嚢腫の治療を行います。
- 1.鎮痛療法によって痛みを抑える
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子宮内膜症になる方は、不妊治療をして妊娠される方がほとんどです。
したがってチョコレート嚢胞の治療と不妊治療は同時に行えないのでこの場合は、先に痛みの症状を薬で抑え、そのうえで不妊治療を行っていきます。
- 2.不妊治療を行う
-
排卵日と予測して性生活のタイミングを合わせる方法と、人工授精、体外受精があり、不妊のレベルによって治療を行います。
この間、症状が悪化した場合や不妊治療を1年~1年半の間に数回行い妊娠しない場合は、嚢胞の治療を優先させます。妊娠中は、月経による排卵が止まるため症状は進行する心配はありません。
- 3.治療する
-
産後に月経が再開されれば嚢胞も進行する可能性があるため、ホルモン療法か手術のどちらかを選択し治療を行います。
妊娠ができかった場合は、腹腔鏡下手術をして症状の改善を図りその後、不妊治療を再開します。
年齢が38歳を超えた場合は、卵巣の機能の低下を引き起こす可能性もあるので手術はせずに、妊娠率が高い体外受精などを先に勧める場合もあります。
【いずれ妊娠を考えている場合】先に嚢胞の治療を優先させる
妊娠時期が未定の場合は、先に嚢胞の治療を優先させます。
- 1.進行を抑える治療を優先
- 4~5cmを超えた嚢胞は手術するのが一般的です。それ以下の場合は、症状が軽ければ鎮痛療法を行い、症状が重ければホルモン療法により改善させます。
- 2.再発を防止する早めの不妊治療
- 手術後は再発の可能性もあることから、なるべく早めに不妊治療を始めることが望まれます。
- 3.進行を抑える治療
- 産後は、医師と相談してホルモン療法で改善を目指すか手術による改善を目指すか決めます。
また、術後に再発してしまった場合も、不妊治療を優先させるか嚢胞の治療を優先させるか医師と相談します。
【妊娠後にわかった場合】治療の判断は医師にしてもらう!
妊娠中は、症状が悪化することはないものの、圧迫されることで破裂の危険を伴います。
よって大きさや症状を診てもらい、そのまま温存して産後に治療を行うか、出産を待たずに手術を行うか医師に判断してもらいましょう。
再発の可能性や再発後にすべきこと
子宮を全て取り除かない限り再発の可能性はなくなりません。ですから、手術によって病巣だけを取り除いたとしても必ず再発の可能性はあります。
再発しても、再度治療することも可能ですが、手術に関してはさらに卵巣を摘出することになるか医師からは根治のため子宮摘出を勧められる可能性も高いです。
また、病巣の摘出だとしても妊娠の可能性が低くなるなどリスクも上がります。
チョコレート嚢胞に漢方は効く?期待できる効果
漢方は子宮内膜症に直接の効果はあまり期待できませんが、長期服用することで体を温めるなど体質改善を行い症状を緩和します。または、薬の副作用の緩和などに効果を発揮します。
穏やかな効き目という印象の漢方ですが、中には即効性があるものや副作用があるものもあるので、必ず自分に合った漢方を医師から処方してもらってください。
- 漢方で効果があるもの
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- 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン):体温調節や血液の流れを促進したり痛みの伝わりを抑制する効果があるという研究報告がある
- 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ):筋肉の痛みや内臓の痙攣や痛みを緩和する効果も期待される。
- 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン):貧血や体を温める効果があり、更年期障害などの症状や生理の乱れなどにも効果がある
閉経までの長い期間うまく付き合っていきましょう!
子宮内膜症は、生理が続く間は症状の進行や再発または卵巣癌が発症する可能性があります。
妊娠の希望の有無に限らずチョコレート嚢胞と診断された場合は長期でみて自分に合った治療を選択してください。
また、不安がある場合は別の婦人科でセカンドオピニオンを行うなどご自身で納得したうえで治療を選択できるといいですね。
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