エンテロウイルスの症状で麻痺も…子供の手足口病やヘルパンギーナ
子どもの病気には季節性の流行があるものがいろいろあります。インフルエンザやノロウイルス感染症などはその代表ですね。
流行性の病気は冬に流行るものというイメージがありますが、夏にはやる病気もたくさんあります。夏風邪などはその代表です。
そして、夏風邪を引き起こす原因ウイルスの代表として知られているのが、エンテロウイルスなのです。
エンテロウイルスは麻痺や手足口病の重症化など、最近危険な重症化の報道で注目を集めている病原体です。
それでは、子供が感染しやすいエンテロウイルスについて詳しく見ていきましょう。
この記事の目次
エンテロウイルスが引き起こす代表的な病気…手足口病など
エンテロウイルスとはどんなウイルスなのでしょうか。エンテロウイルスが原因で起きる主な病気をピックアップしてみましょう。
- 急性上気道炎(かぜ)
- 急性胃腸炎
- 手足口病
- ヘルパンギーナ
小さな子どもを持つお母さんであれば、一度は耳にしたことがある病気ばかりですよね。
エンテロウイルスは、子供に流行するさまざまな病気の原因となるウイルスなのです。それぞれの病気については、後程詳しくご紹介します。
エンテロウイルスには種類があります。次項では、最近特に話題になっているエンテロウイルスの仲間についてご紹介します。
特に注意したい「エンテロウイルスD-68」と「71」による病気
特に最近注目されているエンテロウイルスを2種類ご紹介します。ひとつは麻痺症状を起こす可能性があるD-68、もうひとつは髄膜炎を起こす危険があるD-71です。
エンテロウイルスD-68による麻痺症状と急に起きる気管支喘息
エンテロウイルスの仲間であるエンテロウイルスD68が、重い呼吸器疾患を起こすことが知られるようになりました。
平成26年(2014年)に、米国などでエンテロウイルスD68型による下気道感染症(気管支や肺の感染症)が大流行しました。
このウイルスの感染者の多くに気管支喘息のような症状が起こり、激しい咳こみや呼吸の苦しさに襲われました。
実は日本でも平成27年(2015年)の8月から9月に下気道感染症が大流行し、多くの子供たちが気管支喘息のような症状に苦しみました。
この病気にかかった子どもたちを検査したところ、一部からエンテロウイルスD68が検出され、やはりこのウイルスが関係しているのではないかと考えられています。
エンテロD-68は麻痺を伴う急性弛緩性脊髄炎を起こすことも
さらに問題視されているのが、急性弛緩性脊髄炎という病気を起こすことがまれにあり、ポリオのような急性弛緩性麻痺症状が出るという点です。
急性弛緩性麻痺とは、腕や足がだらりと麻痺してしまい動かなくなる状態です。2015年には例年より多くの患者さんが出て、もっとも多かったのは幼児とされています。
体の左右に麻痺が出て入院した赤ちゃんの中には、退院後もまひが残った子がいるという報告があります。
喘息症状が出た子の多くは、喘息の既往症が無かったそうです。夜中に突然寝ていられないほどの激しい喘息に襲われ、パパママも驚いたことでしょう。
これらの症例は少ないとはいえ、症状が重いだけに気になりますよね。
今後もメディアで報告される情報や、かかりつけの小児科・幼稚園・保育園で耳にする龍谷情報に注意しておきましょう。
11か月男児。急性弛緩性脊髄炎で入院。(中略)9月6日から発熱(39.1℃)、7日からポリオ様の右弛緩性麻痺が出現して同日紹介受診し、原因検索のため入院した。9月9日~10日にかけて左下肢も弛緩性麻痺が進行して対麻痺となった。(中略)9月10日で麻痺の進行が止まったが、改善は緩徐だった。退院時には左下肢の筋力が回復傾向だが、右は完全麻痺が残った。入院時の咽頭ぬぐい液からEV-D68を検出したが、髄液・便からは検出しなかった。
引用…国立感染症研究所
エンテロウイルス71による手足口病の重症化…髄膜炎・脳炎
手足口病はおもにコクサッキーA16というウイルスで起こりますが、エンテロウイルス71でも起こります。その際、重症化する可能性があります。
我が家の子供たちも手足口病にかかったことがあります。発熱はなく2~3日で軽快してしまったので軽く済む病気という印象でした。
しかしエンテロウイルス71による手足口病の場合、他のウイルスによる手足口病より重症化しやすいといわれています。
- 髄膜炎
- 脳炎
こういった重い合併症を引き起こす危険があります。
また下記のような症状がみられたら、ウイルス性髄膜炎や脳炎を起こしている危険があります。
- 継続する高熱
- 頭痛
- 嘔吐・吐き気
早めに医療機関を受診してください。
エンテロウイルスに治療薬やワクチンはない!対処療法が基本
エンテロウイルスには、基本的に治療薬がありません。ポリオ以外はワクチンもありません。
エンテロウイルスが原因で起きる病気にかかったら、手足口病もヘルパンギーナも対処療法が基本になります。
- 解熱剤
- 鎮痛剤
- 脱水に対する輸液等
これらの治療が、症状に応じて行われます。小さな子どもは特に脱水症状が起こりやすいので、早めに対処しましょう。
治療薬もワクチンもない病気がほとんどなので、感染予防がとても重要になります。
特に重症呼吸器疾患のリスクが高い喘息を持つ子や乳児は感染症予防をしっかりしたいですね。
エンテロウイルスは種類が多い!何度もかかるから要注意
エンテロウイルスと言われても、あまり耳慣れませんよね。実はいろいろな種類があり、さまざまな病気の原因になっているのです。
エンテロウイルスとは…腸管で増えるさまざまなウイルスの総称
エンテロウイルスとは、腸管で増えるウイルスの総称です。つまり何種類ものウイルスがひとまとめに「エンテロウイルス」と呼ばれているのです。
実は現在67種類もあるのです。これから研究が進めば、もっと発見されるかもしれませんね。最近よく目にするEVとはエンテロウイルスの略称です。
エンテロウイルスの仲間で、主な病気を引き起こすウイルスをご紹介します。
- エンテロウイルス
- コクサッキーA群ウイルス
- コクサッキーB群ウイルス
- エコーウイルス
- ポリオウイルス
エンテロウイルス・コクサッキーA群・コクサッキーB群というのはざっくりとしたおおまかな分類で、さらにその中で細かく分類されています。
エンテロウイルスは、現在新しく発見されたものにエンテロウイルス68~71という呼び名がついています。
知っておきたいエンテロウイルスの特徴…基本的に薬は効かない
エンテロウイルスの仲間の特徴を知り、急な病気に備えておきましょう。
- ワクチンや特効薬は基本的にない
- 糞口・経口感染、飛沫感染で広まる
- 潜伏期間は2日から5日
- のどから感染がはじまり、胃液などで死ぬこと無く腸管で増える
- おおむね軽い病気で済むが、まれに重い合併症を起こす
- 不顕性感染も多く、6割から8割と言われている
- 長期間便の中にウイルスが排出される
- 小さい子供の集団では感染が広がりやすい
- 予防法・予防対策は手洗い・うがいなど
エンテロウイルスの仲間が引き起こす病気は、あまり重いものにならないことが多いとされています。
症状が軽く済んでもウイルスは長期間ウンチの中に出続けます。感染しても顕著な症状が出ないことも多いので、気付かないまま広がっている可能性もあります。
幼稚園・保育園で手足口病やヘルパンギーナ・夏風邪が出たら、手洗い・うがいを徹底するなど感染対策し、注意しておきたいですね。
主要な感染経路は糞口感染であり、飛沫感染もあります。咽頭で感染成立の後、消化管で増殖します。この時期は無症状か発熱ていどにすぎません。(中略)ウイルスは糞便中に長期間排泄されますが、咽頭からは初期の短期間しか検出されません。通常は一過性の経過で、予後は良好です。不顕性感染が多く60~80%に達すると言われます。
いろいろなウイルスがさまざまな症状を引き起こす厄介な仲間
エンテロウイルスは種類が多いことがわかりましたね。実はもうひとつ厄介な特徴があるのです。
私たちがよく知っているインフルエンザウイルスは、インフルエンザを引き起こします。ノロウイルスも感染性胃腸炎を起こします。
でも、エンテロウイルスが必ずしも麻痺症状を起こすとは限らず、コクサッキーウイルスがいつも手足口病を起こすとは限らないのです。
エンテロウイルスの仲間の特徴を挙げます。
- 夏~秋、冬と流行する時期が固まっていない
- だいたい数種類のエンテロウイルスが同時に流行している
- 別のエンテロウイルスが同じ病気を起こすため、何度もかかる
たとえば手足口病を例にとっても、コクサッキーA16やエンテロ71、コクサッキーA4、エコーなどさまざまなエンテロウイルスの仲間が引き起こす病気です。
さらにアデノウイルスやインフルエンザなどが流行する時期にかぶり、胃腸症状や皮膚症状など症状もさまざまなので、診断も難しくなります。
小児科にかかった際、どの型のウイルスが流行しているか聞いておくと、我が子が感染する可能性があるかある程度予測できるかもしれません。
ポリオもエンテロウイルスの一種だった!珍しい危険な病気
めったに起きることはないのですが、エンテロウイルスと同じウイルスグループが原因となる危険な病気もあります。
- ポリオ
- 脳炎
- 髄膜炎
- 心筋炎
- 流行性胸膜痛(ボルンホルム病)
実はポリオもエンテロウイルスの一種なんですよ。予防接種のおかげで日本ではめったに発症は見られませんが、外国では流行を繰り返し麻痺などを起こす怖い病気です。
ほかにも脳に炎症が起きる脳炎や、心筋に炎症が起きる心筋炎、筋肉が感染して胸や腹部が痛む流行性胸膜痛という病気もあります。
ほかにも目に感染すると急性出血性結膜炎という病気になります。まぶたが腫れて、目が赤くなり痛みます。
ポリオ(急性灰白髄炎)にはワクチンがありますが、先述したようにほとんどのエンテロウイルスにはワクチンも治療薬もありません。
エンテロウイルスが引き起こす病気の症状と、治療や対処法
怖い合併症を引き起こすエンテロウイルスについて見てきました。一般には、エンテロウイルスはとても身近な病気です。それぞれの症状などについてご紹介します。
- 夏風邪
- 手足口病
- ヘルパンギーナ
- 急性胃腸炎
【急性上気道炎(かぜ)】…夏風邪を引き起こす主なウイルス
エンテロウイルスは、夏風邪の原因としてよく知られているウイルスでもあります。
「風邪という病名はない」なんて言いますよね。風邪はいろいろな病原体が引き起こす気道の炎症の総称ですが、エンテロウイルスもそのひとつです。
特に夏に感染することが多いのですが、先ほどもご紹介したように冬も感染するやっかいな病気です。
エンテロウイルスが原因で起きる風邪のおもな症状です。
- 発熱
- だるさ・倦怠感
- 機嫌が悪くなる・ぐずる
- 軽い胃腸症状(ないケースも多い)
- 筋肉痛(主に大人)
扁桃炎に発展すると、扁桃にうみがついて高熱が出ます。その際、5日~7日ほど発熱が続くことがあり、肺炎に発展するケースもあります。
治療とケア
エンテロウイルスにはワクチンや治療薬がありません。水分と栄養を補給し、安静にして免疫力に頑張ってもらいましょう。
病院ではのどの痛みやお腹の症状など、今苦しい症状に対する対処法として薬を処方してくれます。
我が家の息子たちが小さなころ、かかりつけ医に「夏風邪はブツブツとお腹の症状に注意」と言われました。
手足口病や突発性発疹ではないのに、小さな子どもの風邪で全身に発疹が出ることがありますが、エンテロウイルスが原因のこともあるようです。
【手足口病】…幼い子どもに多い、ブツブツが特徴の病気
手足口病は小さな子どもに多い病気です。6月から7月くらいに増え始め、秋の初めころまで患者さんが多くなります。
- 幼児~小学生くらいに流行しやすい
- 夏ころに小児患者が増える
- 乳幼児はよだれなどを介した接触感染でもうつる
- 発熱を起こす子は1~2割。38度前後ですぐ下がる
- 口のなかに痛い水ぶくれができ、よだれが増えることもある
- 手・足・膝やひじの関節・おしりに水ぶくれをともなう発疹が出る
ぶつぶつはあまりかゆみがなく、軽い痛みを伴う程度です。
水ぶくれが消えても10日ほどは感染力が残る病気です。幼稚園・保育園など園により出席停止などは対応が異なりますので確認しておきましょう。
発熱がある・水ぶくれがひどい・本人がつらそうという場合は、ケースバイケースでお休みさせ、安静にしてあげましょう。
乳幼児の場合、口の発疹が痛くて水分も受け付けない場合があります。脱水症状を起こさないようすぐに小児科に行ってくださいね。
治療法とケア
特に特効薬やワクチンなどはありません。だいたいは発熱もすぐおさまり、発疹も数日で消えていきます。
お風呂は発熱がある間はやめましょう。汗をかくシーズンなので、しぼったタオルでそっと汚れやすい場所を拭いてあげます。
熱が下がったら、水ぶくれがあるうちはシャワーで体を洗います。ブツブツが軽快してきたら、ぬるめのお湯から入浴をスタートしましょう。
【ヘルパンギーナ】…乳幼児に多い、のどと口内が痛くなる病気
ヘルパンギーナも、乳幼児など幼い子どもに多い病気です。お父さん・お母さんが子どものころはあまり聞かなかった病気のひとつですよね。
ヘルパンギーナもエンテロウイルスが原因です。主にコクサッキーウイルスの感染で起こる病気です。
- 38度以上の発熱。40度近くまで上がることもある
- 口内炎・口内の水疱
- のどの炎症・強い痛み
高熱・口内炎・のどの痛みが、ヘルパンギーナの三大症状です。手足口病と似ていますが見分けがつくと思います。
症状は激しくみえますが、高熱はだいたい4日ほどでおさまります。4日以上高熱が下がる気配がないようなら、再度受診しましょう。
ヘルパンギーナも口内・のどの痛みが強くて飲めない・食べられなくなる病気です。脱水症状が気になる場合は即病院へ行きましょう!
治療方法とケア
ヘルパンギーナもワクチン・治療薬がありません。症状はつらいのですが、対処療法で様子をみるしかありません。
冷たい茶碗蒸しや卵豆腐・スープ・ヨーグルトなど、のど越しが良くかまずに済むもので水分・栄養を補給してあげましょう。
高熱がある間はお風呂はやめておきましょう。熱がさがり、脱水症状がなければお風呂は大丈夫です。
【急性胃腸炎】…夏にも胃腸炎は起きる!下痢と嘔吐
急性胃腸炎も、エンテロウイルスが原因で起きる病気のひとつです。胃腸炎を起こすウイルス・細菌は実はたくさんあるんですよ。
感染性胃腸炎は冬の病気というイメージがありますが、そうではありません。夏場は雑菌が繁殖しやすく、暑さで体力を消耗しやすいので起きやすい季節です。
我が家の息子の中にもひとり、幼稚園時代は毎年のように初夏~秋にかけて一度は急性胃腸炎を起こしていた子がいました。
エンテロウイルスが原因で起きる胃腸炎は、ノロやロタのようには重度になりにくい傾向にあります。
- 2~3日でおさまる下痢
- 嘔吐・吐き気
嘔吐・吐き気は出ないこともあります。もし嘔吐と頭痛・発熱などをともなう場合は、無菌性髄膜炎を起こしている可能性があるのですぐに受診しましょう。
夏風邪や手足口病など、他の病気で下痢をともなうこともあります。お腹が痛い場合は発熱も起こすことが多いそうです。
治療とケア
治療薬はありません。病院では腸内環境を整えるお薬をもらうことが多いのではないでしょうか。
軽く済むことが多いのですが、季節がら脱水症状には要注意です。我が家の息子は点滴を受けていました。
嘔吐をともない飲めなくなってしまった場合は、すみやかに再診し点滴を受けましょう。
エンテロウイルスは毎年の流行と重症化の傾向に注意して
エンテロウイルスが原因で起きる病気には、手足口病やヘルパンギーナなどさまざまな病気があります。
なかには夏風邪のように身近ですぐ治るものもあれば、近年注目されている麻痺や髄膜炎・脳炎に発展するものもあります。
特にエンテロウイルスD68や71による重症化には注意したいですね。手洗い・うがいなどの予防方法を徹底しましょう。
また、「どうせ治療薬はないし、数日で治るでしょう」と甘くとらえず、おかしいなと感じたら受診しましょう。
髄膜炎や急性の喘息・麻痺など怖い症状が出ない場合も、多くのケースで口内やのどの痛みが出ます。吐き気をともなうこともあります。
赤ちゃんや小さな子どもは、飲めなくなってしまうとあっという間に脱水を引き起こします。早めに受診し、ケアしてあげたいですね。
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