絵に現れる子供の心理!アートセラピー観点から子供心を読み取る方法
まだ言葉が未熟な小さな子でも、クレヨンや色鉛筆を自由に使い、無心に表現を楽しむことができるお絵描き。
なぜ、絵に心や精神状態が表れるのでしょう。それは、お絵描きが、私たちの能力や本当の自分らしさが詰まっている「右脳」と関係しているからです。
脳と心の関係を知れば納得!今回はアートセラピーの観点から、絵を分析するためのポイントをお伝えします。
あなたが気づいていなかった子供の心の状態、才能、宝物がきっと見つかります。
この記事の目次
お絵描きってこんなにすごい!絵を描くことで得られる効果
年齢に関係なく、絵を描くことには素晴らしい効果があります。
「大人になってから絵を描く機会なんてなかなかない」という方も、子供と一緒にぜひ、お絵描きを楽しむ時間を取ってみてください。
上手、下手は関係ありません。子育て中のママ自身にとっても素敵な癒しの時間となることでしょう。お絵描きには、こんな素晴らしい効果があります。
心がスッキリ!カタルシス(心の浄化作用)を得る
絵を描くことだけでなく、時間を忘れて何かに没頭する時間は、心に大変良い影響をもたらしスッキリとします。
まだ言葉が未熟で自分をうまく伝えられない子供にとっても、思い切り自己表現ができるお絵描きは不安や不快な感じを浄化してくれたりと、心に安定をもたらします。
無心に描くことで自由な創造性が開花!能力開発
生まれたばかりの赤ちゃんは、快・不快の感覚機能しか持っておらず、自己表現の手段としては泣くこと、笑う事しか知りません。
だんだんと成長するにつれ言葉を学び、思考力を身に付けていきます。していいこと、いけないことの分別もついていきます。
これは、生きていく上でとても大切な事なのですが、時に子供らしい自由な発想や想像、創造性を邪魔してしまいます。
- 「こんな風に思うのは間違っているかな・・・」
- 「こんな話をしたら、お母さんになんて思われるかな?」
- 「妹や弟のために、自分は我慢しなくちゃいけない!」
と言うように、子供ながらに自分にブレーキをかけていることもあるのです。
絵を描き創作活動に夢中になることで、このブレーキが外れ、右脳(イメージ脳)が全開になり、脳全体の活動が活性化されます。
新たな創造性、才能が開花することにもつながります。
絵には、心、精神状態が反映される!『心理的投影』
まず、脳の役割と心の仕組みから、その関係を見てみましょう。
右脳と左脳、それぞれの役目と心の関係
図1を見てみましょう。
私たちの脳は、言語表現や思考を司る左脳と、感情・感覚やイメージを司る右脳(別名イメージ脳と呼ばれる)に分かれています。
そして心の領域で言えば、左脳は意識(顕在意識)の領域に、右脳は無意識(潜在意識)の領域になります。
- 左脳・・・言語や思考を司る。意識(顕在意識)的
- 右脳・・・感覚やイメージを司る。無意識(潜在意識)的
イメージを起こしてそのまま画用紙に表現する「お絵描き」には、イメージを司る右脳の領域が使われています。
右脳は、感情・感覚の領域です。そしてその右脳は、心に当てはめると無意識の領域になります。脳の役割を心の領域に当てはめて見てみましょう。
図2を見てみましょう。
心は図のように氷山に例えられます。
氷山は、海面に見えている部分は少しでも、水面下には大きなな船を転覆させてしまうほど巨大な氷の山となっています。
心も同じで私たちが意識できている部分(意識・顕在意識)はほんの少しで、意識できていない部分(無意識・潜在意識)の方がはるかに多いのです。
そしてその割合は意識の領域が1割、無意識の領域が9割あるいはそれ以上と言われています。
無意識にある膨大な心身からのメッセージ
例えば、今この記事を読んでいるあなたは、椅子に座っているでしょうか。
今そのように言われて初めて、腰やおしり、背中の感覚に注意を向けます。そしてその瞬間になって初めて、無意識の中にあったその感覚が、意識の上に上がってきます。
椅子の柔らかい感じや温かさ、あるいは硬さ。ではその時あなたは、あなたの足の裏が床に接している感覚に気づいているでしょうか。
腕の重み、手の温かさ、室温、部屋の中の匂い、小さな音、ケータイやパソコンに触れている感覚、まぶたの感じ、、、、、
この膨大な量の感覚たちを決して感じていないわけではなく、身体は全てちゃんと感じています。
でも、この膨大な感覚が全て意識の上に上がってきてしまったら、情報量が多すぎで処理しきれず、今優先して行わなければいけないことが何もできなくなってしまいます。
そして、意識の上には今必要なものだけが上がってきて、意識され、行動に移されるようになっているのです。
私たちが今この瞬間に意識できていることというのが、どれほどわずかな量にすぎないのか体感していただけたでしょうか。
一方で、意識されずに無意識の中にある情報量がどれほど多いのか、ということも感じていただけたでしょう。
そして、その膨大な情報がどこにおさめられているのかというと、イメージ脳である右脳の中なのです。
だからこそ、右脳を使って、何気なく描いた絵は心の奥の大切な情報を映し出す鏡となります。
アートセラピーによる分析のポイントを押さえれば、子供の絵に現れる心理を読み解くことができます。
絵の分析ポイントを知れば、子供の心の中が分かる
絵を分析するポイントはいくつかあります。
- 何が描かれているか?
- それは、どこに描かれているか?
- どんな色が使われているか?
- どんな塗り方か?
色々な角度から分析ができます。
何が描かれているか?描かれているアイテムには意味がある
絵に描かれているアイテムに現れる意味をご紹介します。
子供の絵に以下のようなものが描かれていたら、そのアイテムの意味を心に留めながら、絵を見てみましょう。
- 花=愛情、美しさへのこだわり
- 家=自分自身を投影している(派手で華美な家・・・自分をよく見せたい。質素な家・・・自信を喪失。窓、ドアの無い家・・・内にこもっていたい
- 雲=自由と逃避への願望
- うずまき=グレートマザー、偉大すぎる母。母親の力に飲み込まれそうな息苦しさを感じているかもしれない
- 格子模様=心の葛藤 好きだけど甘えられない、など
- 木=成長のシンボル 木があまりに多く描かれていたら、「お兄ちゃん(お姉ちゃんなんだから)」という言葉を聞かされ続け、成長を強いられている、「成長しなくてはいけない」と思っているかもしれない
- 太陽=温かさと成長のシンボル、愛を手に入れようとする努力
- ハート=愛情
- 星=愛情の剥奪、手の届かない愛情 下の子が生まれ自分への愛情が奪われてしまったと感じているかもしれない
- 石=障害
- 水=抑うつ、涙
- 月=抑うつ、悲しみ
- 雪=凍った涙
- 食べ物=本能的、生理的欲求
- 動物=描き手のイメージを強調(自分より大きい動物・・・男性的側面、積極性、行動的 自分より小さい動物・・・女性的側面、優しさ、情緒的)
そのアイテムが「どこ」に描かれているかで意味が変わる!空間表象
図3を見てみましょう。アイテムの意味と合わせて見る必要があるのが、それがどこに描かれているか?ということです。
この空間の表す意味を空間表象と言います。
まず、紙面を右上から左下に斜めに見てみると、真ん中(1)は現在を表しています。右上が未来に向かっていき、左下が過去へと向かっていきます。
紙面を上下に見ると、上の方が精神性を表し、下の方が身体性を表します。紙面を左右に見ると、右の方が外面的なもの、左の方が内面的なものを表しています。
この区分に従って見ていくと右上、(2)は「行動、目標、目的」を表すポジションとなります。右下(3)はスキンシップ、家庭的なもの、現実が表れます。
(4)は哲学、精神活動、思想が描かれる場所です。(5)は心の傷、トラウマが表れる場所となります。
花が(2)に描かれているとしたら、美しさや可愛さを手にしたい、という気持ちや行動目標、あるいは愛情に満ちた環境を手に入れようとする意志かもしれません。
(4)に花が描かれていたら、愛情を大切に生きていくことを、自分の哲学として持っているかもしれません。
(5)に描かれていたら、トラウマの場所になるので、過去に愛情を十分得る事ができなかったと感じているかもしれません。
色彩に現れる体調や心の状態、色彩心理
使われている色使いにも、意味があります。選ぶ色彩から心身の状態を見て、改善をしていくカラーセラピー(色彩療法)の観点から、色別に見てみましょう。
その人が直感的に選ぶ色には、体調や心の状態が表れます。
- 虹色・・・社交性、コミュニケーションが活発な時、充実感あふれる
- 赤や黒で荒く塗りつぶす・・・色自体は問題ないが、激しいタッチの場合は、強い不安、ストレス、恐怖を感じている。危険信号
- 寒色ばかり・・・悲しみ、寂しさ、疲れている
- 赤色・・・エネルギーの高さ、好奇心
- 黄色・・・お父さん、お母さんが好き。もっと甘えたい。自己アピールしたいとき。楽しく、うきうきした気分。
- ピンク色・・・幸せな時。優しい気持ち。恋愛
- 緑色・・・疲れている、休みたい気分。マイペースな性格
- 青色・・・プレッシャー、自立心(長男、長女にあらわれることがある)
- 紫色・・・癒しを求めている。病気をしている時、精神的に疲れている時
- 水色・・・従順さ、素直さ。寂しい気持ちを抱えている時
- 白色・・・正義感、完璧主義、神経質、または自信を喪失している
- 暖色系・・・年齢相応な成長をしている。温かい家庭環境で、愛情を感じながら安心して、自由な自己表現ができている状態。子供らしく、のびのびしている。
- 寒色系・・・抑圧された感情、自分を抑制して周りに一生懸命合わせようとしている。冷めたところがあり、愛情表現をしたがらない。
小学校へ上がるくらいになると、男の子は青色や緑色を好み、女の子はピンクや赤色、明るい色を好むという性差は表れてきます。
また、男の子より女の子の方が色彩へのこだわりが強く、カラフルな色を使いたがる傾向はあります。
その他、表現方法に現れる意味
その他にも、色の塗り方や表現の仕方によっても心身の状態が表れます。
- 重ね塗り・・・強迫観念
- 雑な塗り方・・・怒り、ストレス
- 自分だけがいない絵・・・自己肯定感の低さ
- 描かれている他の家族、メンバーとの距離・・・心の距離
- 自分像や両親像の真上にあるアイテムは特に重要な意味を持つ
- 服のボタン・・・その人への愛情、愛着
- 人物の周りの囲い(縄跳び、布団、柵など)・・・その人を守りたい、守らなければいけないと思っている。
- 目・・・大きく見開かれた目は緊張感、警戒心。目が閉じているのは、見たくない気持ち。目が閉じた大人は、お世話をしてくれない人
- 口・・・依存性。大きな口は甘えたいと言う気持ち。口の省略は甘えられない気持ち。「お兄さん、お姉さんなんだから、泣かないよ」と言われている 等
- 鼻・・・怒りの表し方。鼻の省略は、怒りはよくないものとして、過度に怒りを抑圧する家庭。大きな鼻は激しい怒り。
- 足の省略・・・不安定で、すぐにどこかに行ってしまう「ジプシー」のような存在
こんな風に、色々な視点から、絵をとらえることができます。しかし、ここにある分析ポイントにだけ縛られて、絵を左脳的に分析することばかりにとらわれないように気を付けましょう。
例えあなたが気になるアイテムが描かれていたとしても、色やアイテムが希望に満ちていて、そこに住みたくなるような世界が描かれているとしたら、概ね健康的な絵と言えるでしょう。
子供の自由な表現を促し、能力を開発するための言葉がけ
子供の絵から心を見ようとするときに、絵の上手、下手は全く関係ありません。
そして、幼稚園や保育園の同じ年齢のお友達と自分の子を比較して、「○○ちゃんに比べてウチの子の絵は・・・」などと、どうか悲観的にならないでください。
幼児期は、同じ学年であっても月齢による能力の差がまだまだ大きいです。子供によってクレヨンや鉛筆を握る力、描く力の発達にも大きな差があります。
目の前で今、子供がどんな様子で絵をお絵描きしているかが大切
一番大切なのは、その子がどんな様子で絵を描いているか、ということです。
あなたがちょっと気になるアイテムを子供が描いていたとしても、その意味にあまり縛られて子供の心の中を断定しすぎないように、気を付けましょう。
例え、紙面左下にお花を描いたからと言って、過度に心配しないでください。アイテムの意味から誘導するような言葉がけをしないようにしましょう。
子供の絵を、それを描いている子供自身を、否定も批判もせずに、まずありのままを受容し、どんな思いで絵を描いているのかを聴き、その気持ちに寄り添っていくようにします。
言葉がけは、評価無しに、具体的に
次に、避けた方がよい言葉がけと、どんな言葉が子供を勇気づけ自由な創造を促すのか、例を見てみましょう。
- 「あなたって、全然絵が上手にならないわね」
-
◯「前より丁寧に色が塗れるようになって来たね。しっかり線が描けるようになって来たね。鉛筆の握り方、良くなってきたね」
批判せずに、前よりも少しでも進歩しているところを見つけて具体的にフィードバックしていきます。
- 「ここに○○を描いたほうがいいんじゃないの?」
「これは○○色より○○色で塗った方がいいわよ」 -
◯「○○を○○色で塗ったのね。この色で塗りたい気持ちだったのね?」自分の価値観や一般的な常識に縛られたり押し付けたりせずに、子供の世界観を聴きながら共感していきましょう。
- 「星にはこういう意味があるんだけど、あなた、今こんな気持ちなの?」
-
特に、ここで深堀りして原因を探る必要はありません。星が描かれていることをあなた自身が心の隅に書き留めて、子供の普段の様子を観察してみましょう。
絵だけで子供の心の中を分析しよう、原因を探ろうとするのではなく、絵をもとに一緒にお話をしながら子供の言葉、心に耳を傾けていきます。
アイテムや空間の意味は、一つの情報として心に留めながら、全体的な様子を観察します。
また、4歳くらいまでの幼い子供は、特に何かの形を描くというのではなく、なんとなく色を選び自分の心のままに描くことがあります。
「何を描いたの?」と言う質問で、その自由な気持ち、想像、創造性が邪魔されてしまう場合もありますので、あまり問いかけをせずに見守りましょう。
もし、子供が「この絵、どう思う?」「見て!これ、上手?!」と聞いてきたとしたらあなたの評価が気になっているサインです。例えポジティブでも「上手だね!」と評価するような言い方にならないように気を付けましょう。
子供が、あなたの感想を求めてきたら、それには応じず「あなたはどう思うの?」と、本人の思いを聴いてみましょう。
そして、その出てきた答えを受け止めます。「うーん、、、あんまりうまく描けなかった」と子供が言ったら、「どの辺が?」「どんな風にかけたらいいと思うの?」と。
「うまく描けたと思う!」と言ったら「そうなの!どの辺がうまく描けたと思う?」「それで、どんな気持ち?」と言うように、あくまでも子供の気持ちを聴き、受け止めていくようにしましょう。
お絵描きは親子のコミュニケーションの大切な場!子供の光るものを見つけて
例え、子供の話が、絵からどんどん脱線して別の話題に移ってしまって行っても構いません。無理に絵に立ち戻る必要はありません。
まだ言葉が未熟な子供も、普段あまりおしゃべりではない子供も、お絵描きには、リラックス効果、脳の活性化効果があるので、描き終えた後は、心が柔らかくほぐれた状態になっています。
どんな言葉もまず、そのまま繰り返し、受け止めていきます。その言葉に込められている気持ちを具体的に聴いていきます。
こんな時に、子供が自由に表現するものから、あなたが思いもしなかった、意外な発想、素晴らしい才能が顔をのぞかせることがあります。
そのキラっと光るものを、どうぞ、たくさん見つけてください。
親であるあなたに、温かくありのままの自分を受け入れてもらうという体験が、子供にとっての心の栄養となり、自信を育み、新しいことにどんどんチャレンジしよう!と思える原動力になっていくはずです。
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保育士さん
記事読みました!該当する絵に対する心の分析における、エビデンスを教えてください!
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mama-senseiさん
コメントいただきありがとうございます。
こちらの記事は、https://mamanoko.jp/articles/10718 などを参照して執筆されております。 -
回答希望さん
質問欄があるのに、回答がないのは失礼なサイトですね…。
私もエビデンスが知りたいです。 -
mama-senseiさん
コメントいただきありがとうございます。
大変失礼をいたしました。
こちらの記事は、https://mamanoko.jp/articles/10718 などを参照して執筆されております。
具体的にどの箇所についてなどあればまたお伝えいただけますと幸いです。