体外受精(IVF)の費用と流れ!妊娠率が上がる高度生殖医療について

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2016/12/11

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体外受精は、一般不妊治療(タイミング法・人工授精)の次のステップとして行われる高度生殖医療(ART)の第一歩です。

夫婦の実態や原因に応じで、体外受精にステップアップする夫婦もたくさんいるので、必ずタイミング法や人工授精(AIH)のステップを踏んでからでないといけないという訳ではありません。

体外受精と聞くとお金や心理面、体調などを心配する人も多いですよね。

そこで今回は、体外受精とは何か、流れや費用はどうなっているのかを紹介していきます。計画的なステップアップの参考にしてもらえばと思います。

知っておこう!体外受精の基礎知識

体外受精と聞くと、身構えてしまう人も多いと思います。まずは、体外受精の基礎知識をおさえておきましょう。

  • 体外受精とは…日本でも30年以上行われる治療方法
  • 体外受精が適応となる夫婦の症状
  • 体外受精のリスクや副作用を知っておこう
  • 費用は保険適用外!夫婦でしっかりと相談を!
  • 体外受精の妊娠率は一般不妊治療よりも高くなります!

これらの項目について詳しく見ていきます。

体外受精とは…日本でも30年以上行われる治療方法

体外受精とは成熟した卵子を採取し、培養液の中で精子と一緒にすることで受精させ、受精した受精卵を子宮に戻すという治療方法です。

1978年、イギリスで世界初の体外受精による誕生をうけ、日本でも1983年に東北大学で体外受精が成功しています。

日本では、1万人を超える赤ちゃんが体外受精によって誕生しており、不妊治療の切り札としても定着しています。

一口に体外受精と言っても、孵化補法(AHA)、胚盤胞移植法、顕微授精などの様々な方法があります。

孵化補助術(AHA)
胚の周りを囲んでいる殻のような透明帯を、薄くしたり、脱ぎ捨てる手伝いをしたりすることで、着床率を高める方法です。

そもそも、胚盤胞まで分割した胚は、着床する直前になると、内側の細胞部分が透明帯の一部を破って外に出ます。

この細胞部分が子宮内膜に着床することで、妊娠が成立します。しかし、何らかの原因があり、透明帯が厚くなってなかなか破れないということがあります。

よい胚に育つのに、着床しにくいという時には、この透明帯を破る孵化がうまくいっていない可能性が高く、着床するための手助けが必要になります。

胚を子宮に戻す前に、事前に透明帯の一部を破いたり、薄くしたりしておき、細胞が外側に出やすくしておきます。そうすることで、着床する可能性が高まります。
胚盤胞移植法
通常の体外受精より体外で長く受精卵を育て、より高確率で妊娠を成立させる方法です。

通常の体外受精の場合は、2~3日ほど体外で培養した受精卵を子宮に戻しますが、胚盤胞移植の場合は、5~6日程度培養して、胚盤胞まで受精卵を成長させてから子宮に戻します。

自然妊娠では、卵子は卵管膨大部で受精します。そして、細胞分裂を繰り返しながら胚盤胞まで成長し、子宮内膜に着床します。

通常の2~3日培養した分割卵は、確実に胚盤胞まで成長するとは限りませんが、胚盤胞移植では、確実に胚盤胞まで成長することができた胚を子宮に戻すので、妊娠率が高まります。
顕微授精
精子を直接卵子の中に送り込む顕微授精では、重度の乏精子症、精子無力症でも受精することが可能です。

一般的な不妊治療では、シャーレの中で精子と卵子を出会わせて、受精させます。

この時に、透明帯を破って、卵子の内側に入っていくのですが、透明帯を破ることができず、受精まで至らないということがあります。

顕微授精では、精子を一匹吸い込み、吸い込んだ針を卵子の細胞質の中に差し込みます。これにより、精子が1匹でもいれば、受精することが可能になりました。

精子が1匹もいない無精子症でも、精巣や精巣上体に精子が残っていれば、顕微授精で受精を成立させることが可能です。

これらの方法は、不妊原因や身体の状態に合わせて、医師の判断により選択され、最も適切なものが実施されます。

体外受精が適応となる夫婦の症状

体外受精が適応になる夫婦の症状を紹介します。

  • 卵管が詰まっていたり、癒着したりしている
  • 排卵がうまくおこなわれない
  • 子宮周辺に癒着や炎症がある
  • 抗体精子抗体などの免疫性不妊がある
  • 数や量、運動率など、精子の状態が良くない
  • 一般不妊治療を長期間受けているが、妊娠しない

女性側、男性側それぞれの因子に当てはまるものがあれば、体外受精を行うことを勧められます。

また、何年も不妊治療していても妊娠しない原因不明のカップルや、6回以上人工授精を行っても妊娠しないカップルなどがステップアップをして、体外受精を行う場合があります。

不妊専門の病院で検査することで、今まで見えなかった原因が見つかることもありますし、受精や分割の様子などを観察できるので、不妊原因を判明させる手立てになる可能性もあります。

体外受精のリスクや副作用を知っておこう

体外受精を行うことで、女性が抱える負担は今まで以上に大きいものになります。

中には、薬や麻酔による副作用で、頭痛や発疹、食欲不振、下痢などの症状が表れることがあります。

他にも、卵巣刺激剤や排卵誘発剤を使用することによって、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になる場合があり、重症だと腹水がたまったり、血栓症や呼吸困難が引き起こされたりします。

費用は保険適用外!夫婦でしっかりと相談を!

日本での平均費用は約300,000~600,000万円程度です。対外受精は保険適用外なので、費用はすべて自分の負担になります。

決して安い買い物ではないので、夫婦でしっかり相談をして、治療に臨むようにしましょう。

各費用についての目安の金額をご紹介します。

  • 卵巣刺激・・・・・・約70,000~230,0000(刺激周期)
  • 採卵・・・・・・・・約150,000円
  • 培養・・・・・・・・約10,000~30,000円
  • 胚移植・・・・・・・約80,000円~150,000
  • 凍結胚融解胚移植・・約100,000~150,000

卵巣刺激は、自然周期または低刺激周期の場合は約20,000~160,000円となります。

培養する個数や凍結する個数、体外受精や胚移植の際の特殊技術料、薬剤などによっても金額は変わってきます。

これらの金額はあくまでも目安です。通院するクリニックで費用を事前に確認し、しっかりと計画を立てておくようにしましょう。

体外受精の妊娠率は一般不妊治療よりも高くなります!

体外受精の妊娠率は、約20~30%と言われています。

女性が高齢になるほど成功率は下がり、30代後半になると約15%になります。

人工授精の妊娠率が1回につき5~10%なので、かなり成功率が高くなることが分かります。

また、赤ちゃんの奇形率や産後の成長などの様子も、通常の妊娠と変わらないということが様々な調査で分かってきています。

体外受精の流れを知って、見通しを持った治療を!

体外受精を行うためには、生理開始直後から準備をしていく必要があります。

  • 個に合わせた排卵誘発方法で卵巣刺激
  • クリニックに電話してスケジュールを確認!
  • 排卵誘発剤を使用して、卵胞を育てる
  • 採卵と精子の採取を行う
  • 精子と卵子が出会う!受精と培養
  • 体内に近い環境で細胞分裂を進めていく!胚培養
  • ベストのタイミングで胚移植を行う
  • 着床率を高める!黄体ホルモンの補充
  • 移植から2週間後、病院での妊娠判定

大まかにこのような流れで治療を進めていきます。落ち着いて治療に臨めるように、流れを把握しておきましょう。

個に合わせた排卵誘発方法で卵巣刺激

より良質な卵子を得るためには、それぞれの女性に合わせた排卵誘発方法を選ぶ必要があります。

排卵誘発方法には、採卵前の排卵を抑制するために、アゴニスト(点鼻薬や皮下注射)やアンタゴニスト(腹部皮下注射)を用いる方法や、クロミッドやセキソビッド、フェマーラなどの内服薬を使用したりする方法あります。

アゴニスト(点眼薬や皮下注射)を開始する時期によって、ショート法、ロング法、ウルトラロング法などに分かれ、それぞれの女性の体質、可能な来院回数、夫婦の希望などを考慮して、排卵誘発方法が選ばれていきます。

クリニックに電話してスケジュールを確認!

生理が開始した日を1日目数え、月経が確認できたら、クリクニックにスケジュールを確認します。

排卵を抑える薬の種類や排卵誘発の方法によって、病院に通う日が決まっているので、予定に間違いがないか必ず確認しましょう。

病院に通う周期が分かると自分のスケジュール調整もしやすくなります。

排卵誘発剤を使用して、卵胞を育てる

排卵を確実にするために、生理開始3日目くらいから排卵誘発剤を使用して、良質な卵を育てます。

3~11日目は、超音波検査やホルモン検査などで卵胞の大きさを測定していきます。

直径が18㎜ほどに成長したら、hCGを注射して排卵を誘発させます。その後約30~40時間後に採卵していきます。

排卵誘発剤には、子宮内膜を薄くしたり、多胎妊娠のリスクが高まるなどの副作用もあります。使用の方法やリスクについても事前に確認しましょう。

採卵と精子の採取を行う

12~13日目には、採卵が行われ、成熟した卵子を排卵の直前にとりだします。

超音波の画像を見ながら、プローブにとりつけた採卵針で慎重に採卵していきます。約10分で採卵は終わり、処置後にしばらく安静にして帰宅になります。

処置後に痛みを伴う場合もあるので、出血の状態や体調に不安のある場合には、遠慮なく病院に問い合わせる様にしていきましょう。

男性は、女性の採卵に合わせて病院内か自宅で採精し、専用の容器に入れて持参します。

精子と卵子が出会う!受精と培養

精子を遠心分離にかけ、採精した精子の中から運動性の高い精子のみを取り出し、受精させます。体外受精になるのか、顕微授精になるのかは、精液の所見によって決定します。

専用の培養液の中で3~12時間培養し、受精卵になるのを待ちます。

精子の状態がよかったり、通院回数が限られている場合など、希望に応じて、精子を凍結保存することもできます。

体内に近い環境で細胞分裂を進めていく!胚培養

体内に近い環境をつくり、受精卵を培養していきます。受精卵は細胞分裂を開始すると胚と呼ばれるようになり、通常は2~3日で子宮内に移植されます。

この時に受精した受精卵が必ず成長していくとは限りません。見た目が良くても、卵子のや精子の質に問題がある場合には、成長していかない可能性もあります。

ベストのタイミングで胚移植を行う!

培養した胚を子宮内に移植します。子宮内に戻せるタイミングは限られているので、身体の状態や病院の治療方針などが考慮され、ベストのタイミングで移植が行われます。

新鮮胚を採卵周期(刺激周期)に移植する
受精後2~3日分割胚を移植する分割期胚(初期胚)移植や、受精後5~6日培養した胚盤胞を移植する胚盤胞移植、分割期胚と胚盤胞を同じ周期で連続して移植する二段階移植などの方法があります。

胚盤胞移植の場合は、通常の分割期胚移植よりも妊娠率が高くなると言われています。

また、二段階移植は、最初の移植胚で子宮内膜が刺激されるため、胚盤胞の着床率が上がる効果があるとされていますが、多胎妊娠のリスクが高まります。

自然周期で凍結融解胚を移植する
凍結保存は、移植胚以外に複数の良好胚が育った場合や、妊娠成立による副作用の重症化予防、妊娠率の向上などの目的のために実施されます。

子宮膜が妊娠しやすい理想的な状態の時に、受精卵を戻すことができるので、妊娠率が向上すると言われています。

次の治療では、卵巣刺激と胚培養を行う必要がなくなるので、身体的・経済的負担も軽減されます。

着床率を高める!黄体ホルモンの補充

胚移植後着床率を高めるために、黄体補充療法がおこなわれます。これによって子宮内膜はふかふかになり、妊娠しやすい環境が整います。

黄体ホルモンを補充には、注射や飲み薬を服薬する方法があります。人によりますが、服薬中は妊娠が成立していなくても、生理がこないということが多いです。

移植から2週間後、病院での妊娠判定

胚移植から約2週間後に妊娠判定を行います。尿検査や血液検査を行い、妊娠しているかどうかを判定していきます。

この時期は、流産のリスクも高い時期なので、いつも以上に生活には気つけるようにしていきたいですね。

夫婦で支え合って治療を行っていきましょう

治療を進めていくためには、夫婦で治療のことをしっかりと話し合い、どんな結果も2人で分かち合っていこうとする気持ちが大切です。

体外受精の場合、女性が受ける精神的・身体的な負担はとても大きくなります。また、治療費の負担も増えるため、助成金を活用したとしても、金銭的な負担も大きくなっていきます。

女性は「赤ちゃんが欲しいのは自分だけではない」という気持ちを、男性は「女性の苦労を理解したい」という気持ちを大切にするようにしましょう。

新しい家族を迎える喜びを、2人で感じることができるように、治療を行っていく過程でも、相手を思いやるようにしていきたいですね。

自分たちを信じて、時には休憩もしながら、焦らずに治療を進めていきましょう。

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