胞状奇胎とは?誰もがなり得る、危険な異常妊娠について
胞状奇胎(ほうじょうきたい)という病気をご存知でしょうか?
発症率があまり高くないため知名度の低い病気ですが、妊婦さんであれば誰もがなり得る染色体異常を原因とする異常妊娠です。
胞状奇胎になると、残念ながら妊娠の継続は非常に難しく、母体を優先して処置が行われます。ここでは胞状奇胎について詳しくご紹介します。
この記事の目次
胞状奇胎は絨毛性疾患の一つ。発症するメカニズムについて
胞状奇胎とは、絨毛性疾患の一つで、妊婦さんの400~500人に1人という確率で起こるといわれている異常妊娠のことです。「絨毛」とは、胎盤の元となる組織のことです。
- 胞状奇胎
- 侵入奇胎
- 絨毛癌
この中で最も発症率の高いものが「胞状奇胎」です。
胞状奇胎は、子宮内にぶどうの房のような「つぶつぶ」ができるため、別名「ぶどう子」や「ぶどうっ子」とも呼ばれます。
欧米に比べてアジア地域での発生率が10倍も高く、また40才以上の高齢出産の場合にリスクがやや上昇する傾向があります。
しかし、現在の日本は少子化により出産自体が減少しているため、胞状奇胎の発症率も減少しています。
胞状奇胎は、発症率があまり高くないため知名度は低い病気ですが、特別な病気ではなく、誰もが発症する可能性があります。
そして、発症してしまうと妊娠の継続は難しく、また適切な処置を行わないと絨毛癌になることもあります。
胞状奇胎は、女性の体内で精子と卵子が受精するときに、何らかの異常が起きることで発症します。
卵子と精子が受精して2週間以上経過すると、受精卵は子宮内膜に着床して妊娠が成立します。
このとき受精卵は、胎児へ変化する「胎芽細胞」と、胎盤や卵膜へ変化する「絨毛細胞」にわかれます。
細かい毛のような組織である絨毛細胞は、胎芽細胞と臍帯を通してつながっていて、子宮内膜内へ伸びていき、母胎から栄養分や酸素を吸収します。
胞状奇胎とは、この絨毛細胞だけが異常増殖を起こすことで水疱状になり、最終的に子宮の中を覆い尽くしてしまった状態のことをいいます。
胞状奇胎には2種類ある
胞状奇胎はその発症原因によって、大きく2種類にわけられます。
- 全胞状奇胎…受精後に卵子の核が不活性化または消失し、精子の核のみが分裂増殖していくことが原因
- 部分胞状奇胎…正常な一つの卵子に二つの精子が侵入することが原因
いずれの胞状奇胎の場合でも、正常な胎児に発育することはありません。
部分胞状奇胎の場合、一卵性の双子の妊娠で一方は胞状奇胎、もう片方が正常胎児ということもありますが、このようなケースは滅多にありません。
胞状奇胎はほとんどの場合、治癒可能で、侵入奇胎を発症するのは10~20%、悪性の絨毛癌を発症するのは1~2%程度です。
侵入奇胎とは、子宮の筋肉の中まで胞状奇胎の細胞の一部が侵入し、腫瘍性の病変を形成してしまうもののことです。
侵入奇胎は、胞状奇胎を発症してから6カ月以内に発生し、約30%の確率で肺に転移します。
絨毛癌とは、侵入奇胎と同様に、子宮の筋肉内で腫瘍を形成する病気です。
発症すると、肺や脳など全身に転移する可能性がありますが、絨毛癌の治癒率は80~90%と非常に高く、子宮の全摘出にまで至ることはあまりありません。
胞状奇胎の原因は染色体の異常
卵子と精子の受精の際に異常が起きる理由や、胞状奇胎になる原因は、まだはっきりと解明されていませんが、遺伝による発症はないということはわかっています。
▼胞状奇胎の原因についてはコチラも参考にしてみて!
胞状奇胎の症状は様々
胞状奇胎の主な症状には以下のようなものがあります。
- 通常よりも早く子宮が大きくなり、子宮がやわらかい
- 不正出血
- 尿中または血中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の数値が異常に高い
- 切迫流産の症状があっても、重いつわりがある
胞状奇胎は、妊娠初期でわかることが多い
精子と卵子の受精後、受精卵が子宮内膜に着床し、育つときに異常が現れる病気のため、ほとんどの場合は妊娠初期で発見されます。
胞状奇胎は、これまでは不正出血や妊娠高血圧症候群などの検査を受けた際に発見されることがほとんどでした。
しかし最近では、エコー検査の著しい進歩により、妊娠初期のエコー検査によって発見されることが増えています。
▼胞状奇胎の症状についてはコチラも参考にしてみて!
胞状奇胎になると妊娠の継続は難しい
全胞状奇胎の場合は、胎児へと成長する「胎芽」が確認できないため、妊娠を継続することはできず、流産の場合と同じ処置が行われます。
それに対し、部分胞状奇胎の場合は卵子と精子の染色体が正常な部分もあるため、胎児の心拍を確認できる場合があり、妊娠の継続は不可能ではありません。
しかし、治療を行わないと絨毛癌へ発展する可能性もあり、高いリスクを伴うため、通常は母体を守るために中絶手術が行われ、出産まで進めることはほとんどありません。
▼胞状奇胎と妊娠継続についてはコチラも参考にしてみて!
胞状奇胎の主な治療法は3種類
胞状奇胎になると、以下のような処置が行われます。
- 子宮全摘出手術
- 子宮内容除去手術(子宮内掻爬手術)
- 抗ガン剤による化学療法
この中で最も多く選択されるのは子宮内容除去手術です。これは、子宮の入口である子宮頚管を開き、異常に増殖した絨毛などの子宮内容物を掻き出す手術です。
子宮内容除去手術の後も、侵入奇胎や絨毛癌を発症する可能性があるため、通院しながらの経過観察が必須です。
どの治療法を選択するかは、年齢や症状、今後も妊娠を希望するかなどを考慮して決められます。
▼胞状奇胎の治療についてはコチラも参考にしてみて!
胞状奇胎は治療すればほとんどの場合また妊娠できる
胞状奇胎になると、そのまま妊娠を継続することは非常に困難ですが、適切な処置を行えば多くの場合再び妊娠可能です。
再発の可能性は約2%ととても低く、安心して次の妊娠へ進めます。
胞状奇胎は絨毛癌へと発展する可能性もあり、また妊娠の継続は難しいなど、いろいろ不安な要素があります。
しかし適切な処置を行えば完治することができ、再び妊娠することも充分可能です。
胞状奇胎は誰もが発症する可能性のある病気のため、もしも発症しても自分を責めず、前向きに治療に取り組んでください。
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