子供のうちからよく噛む習慣を!頭が良くなるなど嬉しい効果

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2018/02/16

よく噛んで食べている子供

「よく噛んで食べなさい」と子どものとき言われたことはありませんか?そう言われてもみんなが忙しい現代では食事の時間をゆっくり持つことが難しいですね。

その影響もあってか、大人も子どももあまり「噛まない」で食べる人が多いようです。実は食べ物を「よく噛む」ことはいいことづくめ!体の健康にも深く係わります。

習慣的なものなので、ぜひ子どものうちから身に着けるといい「噛む」チカラ。その効能と「噛む」ための工夫をご紹介します。

「よく噛む」といいことだらけ!

「噛む」ことで得られる効果を紹介しますと…

  • 満腹中枢を刺激するので、食べ過ぎを防ぐ
  • 咀嚼でかみ砕くため、栄養吸収がよくなる
  • 噛むことで脳が活性化する
  • 噛めばよく唾液が分泌されるので、虫歯や歯周病になりにくくなる
  • 噛むとストレスや緊張が軽減され、全力が出しやすくなる

ほかにも味覚が発達したり、がんの予防が期待できたり、血流がよくなったり…などなど「こんな子どもに育てたい!」という要素がいっぱい。

高価なサプリや運動器具を買ったりするわけではありません。「よく噛む」という生活習慣を身に着けるだけで実現できてしまうのです。

「噛む」ことで顔の筋肉が活発に動き、その動きがさまざまな伝達を行ってたくさんの反応を起こします。具体的にどのように反応しているのかを紹介していきます。

「よく噛むと」肥満を防止できる

ごはんを「噛む」ことで満腹中枢を刺激します。よーく噛んで食べると「おなかいっぱい」という感覚を自分でキャッチでき腹八分目で満足できるようになります。

早食いではこの感覚がつかめません。おなかが膨らんでいくのが目に見えても「まだ食べられる」のは明らかに満腹中枢が刺激されていない状態です。

ポテトチップスを気が付けば一袋空けてしまっていた…という経験はありませんか?噛まずに食べると満腹と感じないので、いつの間にかカロリーオーバーです。

また噛めば噛むほど体脂肪の分解が進むこともわかっています。「噛む」というのはそれだけで結構な運動になるのです。

「よく噛む」ことはお金がかかるわけでもなく、いつでもだれでも意識さえすればすぐにできる肥満防止策になります。

栄養吸収がよくなる

細かく「かみ砕かれた」食物は丸ごと胃に入るよりも消化や栄養吸収がよくなります。小さくなれば唾液で包まれて食道や胃などへの負担を和らげるからです。

特にご飯などのデンプン質は胃ではほとんど分解されず、唾液頼りで分解が進みます。分解して吸収する作用にも「噛む」ということがとても重要です。

記憶力がよくなる

よく噛むと脳の血流や代謝がよくなって、特に記憶をつかさどる海馬の神経細胞を活発化させるということがわかっています。

ガムを噛んだあとと噛まないで記憶のチェックをする実験では、噛んだあとの人は全員記憶力が向上していたということです。

噛むだけで子どもの学習能力のアップも図れますし、年をとっても「噛む」習慣があれば認知症の予防にもなります。

緊張が和らいで力が発揮できる

野球やサッカー選手が試合でガムを噛んでいる姿をTVで見ることがあります。これはガムをかむことでストレスや緊張を和らげる化学物質が脳内に増えるからです。

「噛む力」があるとここぞというときに最高のパフォーマンスが発揮できます。

噛んで唾液をいっぱい分泌すると口腔内が清潔になる

「よく噛む」ことの大きな効用の1つに「唾液の分泌が促進される」ことがあります。
唾液は食べ物をくるんで刺激を弱めながら胃へ運んだりしています。

もともと食べ物は体の外から入ってくる異物です。食べ物は噛まれて小さくなりながら、唾液に包まれながらやっと体の一部として取りこめるように変化します。

胃腸に負担がかかると、食べ物が「異物」とみなされて免疫反応が起こることもあります。

免疫反応
病原菌や異物が入ると消去しようとする体の反応

胃の調子が悪いと普段は平気でも特定の食べ物でじんましんが出たりします。これもアレルギーの一種です。

噛まないで食物が入ってくると胃酸をたくさん出さねばならず、胃に負担をかけ胃腸炎などを誘発することも!

噛んで細かくする、唾液でくるむ、という作用が非常に有効な胃腸の病気の予防法になります。

唾液は歯の健康にも深くかかわっている

よく知られているのは消化吸収を助ける機能ですが、それと並んで大事な働きは「歯や口腔内の汚れを落とし口の中を清潔に保つこと」です。

食べると虫歯菌が酸を作りますが、唾液があることで一時間以内に口の中は中性にもどります。ここで歯の再石灰化が進みます。

酸が歯を溶かすので、唾液がないと虫歯だらけになってしまいますね!キシリトール入りのガムをかんだりすると、唾液が出るだけでなく歯を強くする効果も取り込めます。

このほかにも唾液にはこんな歯を守る効用があります。

  • 歯を強くするタンパク質が入っていて、しみこむことで歯が硬くなる。
  • 抗菌性の成分も入っていて細菌の発育を抑制したり、口臭を予防したりする。

唾液はよく噛めば10倍出ます。お口の健康は全身に影響することもわかっていますので、よく噛めば常に健康を維持できるかもしれません。

唾液は歯周病予防にもメリットあり

痛みもなく静かに進行する「歯周病」。気が付くと歯がグラグラになっていた!ということもある怖い病気ですが、これも唾液で予防できます。

歯周病の元は歯と歯茎の間にたまるプラークの中にいる歯周病菌です。唾液が多ければ口腔内を清潔にでき、プラークも増やさないように働きます。

また、噛む力が歯をしっかり歯茎にくっつけていることもわかっています。噛むことであごの骨と歯が強固になっていくのです。

「噛む」ことはハミガキと並び有効な歯周病予防になります。

歯の健康以外にもたくさんの唾液の効用

唾液は良く知られた消化酵素のほかにも驚きの成分が含まれていることがわかってきました。

  • 腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整えるラクトフェリン
  • 成長ホルモンとして直接働く成分IGF-1
  • 入ってくる最近の発育を初期に抑制するIgA(免疫グロブリンA)

特にIgAは、初乳にとても多く含まれ含まれ赤ちゃんを細菌から守る役割をしている抗体です。唾液にも常に入っています。

噛んで唾液を多く出すとさまざまな細菌を初期段階で予防してくれるので体全体の病気予防になります。

どんなサプリメントもかなわない能力を自分で所有しているわけです。これを利用しない手はありません。ぜひ噛んで唾液の恩恵も最大限受けたいものですね!

幼児期には「噛む」ことで歯並びが作られる

「噛む」ことはさまざまな健康に寄与するほかにも、幼児期には特に重要な役割があります。それは「歯並び」です。

やはり成長著しい子供時代にハンバーグなどやわらかい食事ばかりを食べてきているからなのでしょうか、近年歯並びの悪い人が多くなってきたと言われます。

歯並びは生まれつきではなく、子どものころからの噛む習慣で作られます。噛むことで顎が発達するからです。

あごの骨が発達すると成長に従い顎が広がって、歯が隣同士の余裕をもって生えることができます。

顎が広がらないと隙間なくみっちり生えてしまい、大人のサイズで生えてくる永久歯がスペースに収まりきらずに歯並びが悪くなる可能性が高いとも言えるのです。

よく噛まなければ顎の発達が促せず、狭い口腔内に歯が重なるように生えてきてしまいガチャガチャな歯の印象になります。

これを直すには矯正や、場合によっては歯を一本抜いたりしないと噛み合わせが悪くなることも!

大人にとっても好く噛んであごの骨を発達させることは大切で、表情筋を鍛えることになるので口元の皺を予防することになります。

口元の美しさは幼児期の「噛む」習慣にあるとぜひ覚えておいてください。

幼児期によく噛んで食べる習慣がつくと「キレない子に育つ」?!

キレる原因は食生活やさまざまな要因が関与していると言われますが、噛まない子が多くなったということも大きく関係しているようです。

カッとなって暴力をふるったりするのは脳の偏桃体という箇所が反応するからで、そこに理性などでブレーキをかけるのが前頭葉の前頭前野です。

ものを噛むとこの前頭前野が刺激されることが実証されています。よく噛まないとこの前頭前野の機能が低下していると考えられます。

前頭前野の発達が促されないとキレやすくなる可能性が高くなるとも言えるかもしれません。

子供のころから歯ごたえのあるものを食べさせましょう

噛むことの効能や、噛めば出てくる唾液の効果を最大限受けるためには幼少期からの「よく噛む習慣」が不可欠です。

乳歯のときから「よく噛んで」いれば顎の発達にも寄与しますので、ぜひ習慣づけをしましょう。

  • 歯が生え始める頃:何でもかじりたがるので、興味を利用して噛ませてみる
  • 離乳食期:歯は生えそろってなくても歯茎で噛めるので野菜スティックや根菜類で噛む力を付けるメニューを
  • 幼児期:和食にすると噛みごたえのあるメニューを取り入れやすい
  • 成長する間の共通事項:テレビを控える

乳幼児のときから歯ごたえのあるメニューで噛む力を鍛えることができます。また和食にすると、玄米や分付米など硬さを選ぶこともできます。

具沢山の味噌汁など一皿で栄養バランスにもすぐれたメニューを作りやすくなり、野菜類をい大きめに切って入れればたくさん噛ませることも噛むトレーニングになります。

味噌汁の具を考えることは食育にもつながり咀嚼力もつき、栄養バランスも満点なごはんが簡単に用意できます。具は以下の4つのカテゴリーを意識してみましょう。

根菜類:ゴボウ、にんじん、大根、ジャガイモや里芋
野菜類:ほうれん草・小松菜・大根やカブの葉・キャベツなど青菜
だし:煮干し・こんぶ・かつおぶし・干しシイタケなど
大豆製品:豆腐やあぶらあげ

全部が硬くて噛みごたえのあるものなので食物繊維が豊富です。このすべてを入れたとしてもお味噌汁としてきちんと味がまとまります。

栄養は相互作用で働くのでにんじんだけ、豆腐だけ、ではなくどの種類からも何か使うことが大切です。最後に卵でも落としてみれば栄養バランス的には完璧です。

煮干しで出汁を取ったら味噌汁に入れたままで食べてしまうのも噛む練習になりますし、大豆製品がない場合は豚汁のように肉を入れてもいいでしょう。

最後に良質のごま油を何滴か垂らすと油脂類も取れ、いつもとちょっと違う味に仕上げられます。

大きく切ることなら、子ども包丁でもできるのできそうな子には切らせてみるとお子さんの食育にもなってオススメです。その際親は必ず立会いましょう。

噛みごたえのある材料を使うと、脳の活性化も高めます。繊維の多いもの、弾力のあるものを入れて自然に噛む回数を増やしてみましょう。

テレビを控えて食事に集中することも大切です。

テレビを見ていると食べることはもちろん、飲み込むこと、噛むことにも集中できなくなります。

高齢になるとこれが誤嚥につながることも多いと言われます。食事に集中すると、よく噛んで味がよくわかり、味覚も発達します。

じっくり味わって食べるので腹八分目でおなかもいっぱいになります。「食べる」ことに集中できるごはんの時間を作れるといいですね!

噛むトレーニングは30回を意識すること

食事を「よく噛む」ように工夫してもなかなか噛む習慣がつかないときは意識して一口30回の咀嚼をするトレーニングをしましょう。

顎を均等に発達させるためにも左で10回、右で10回、全体で10回の合計30回をいちいち数えさせてみます(もしくは数えてあげます)。

満腹中枢が刺激されるので少量でもおなかいっぱいになり摂取カロリーが落とせます。
カロリーが落ちると長寿遺伝子「サーチュイン」が働きだすことがわかっているのでアンチエイジングのおまけつきです。

いつも座る席が決まっている場合は席替えも効果的!

ご飯の時に椅子が決まっているというご家庭は多いかと思います。同じ席だと体の向きが固定されてしまい、顎も左か右かで多く使う側が偏ってしまう恐れがあります。

顎の左右に発達のずれが出ると噛み合わせが悪くなって体に影響するのでたまに席替えをするといいですね!

偏った噛みかただと顔の筋肉の発達も左右非対称になりゆがんだ顔が作られてしまうので、幼いときから左右両方をバランスよく使うことは大切です。

食事のときのしつけが大切です。

食事のときに両親や祖父母から「よく噛んで食べなさい」「好き嫌いせず何でも食べなさい」などと言われたことはありませんか?

最近は大人は仕事、子どもも塾や習い事で忙しく、一緒にゆっくり食卓を囲むことが少なくなって来ているようです。

それと同時に食事の時の「よく噛んでたべなさい」を筆頭とする食のしつけがなくなってしまっています。

あまり噛まないで好きなものだけ食べる子どもが増えているは、この時間が減ったからだとも考えられます。

食事のときは脳の前頭前野がよく働いて、理性や情緒を司る脳を養っています。このときに食の倫理観を両親や祖父母が話して聞かせるととても効果的と言えます。

幼稚園のお弁当でも、もちろん家でのごはんの時でも、先生や親が自分の思うことを話したり倫理観を教えたりするのは、とても大切です。

食事の時間は子どもが自分の情緒を形成するとてもいい機会です。噛んでるときに聞くからこそここで繰り返し言われたことは深く脳に刻まれます。

子どもが「孤食」と言われる今、ぜひ幼少時から「噛む」ことの大切さを意識して子どもの豊かな人格を形成するおしゃべりとしつけの時間をとってみてください。

現代人は噛まない!少ない食事の時間

『よく噛んで食べる 忘れられた究極の健康法 斎藤滋 2002 p28』に、弥生時代と江戸時代、現代と一回の食事の時間・咀嚼回数を比較されていました。

弥生時代 江戸初期 現代
咀嚼回数 3990 1465 620
食事時間 51分 22分 11分
カロリー(kcal) 1302 1450 2025

それぞれの時代に食べられていたメニューを再現し、現代人が食べて時間と回数を計る実験を元に作成されたデータです。

弥生時代から比べると現代は噛む回数が約1/6ですが摂取カロリーはトップで、洋食やよく噛まなくても食べられるスナック菓子などの普及がその理由と考えられます。

噛まずに食べてカロリーが高いことは生活習慣病にも深くかかわっていることが予測されます。

最近は子どもでも「内臓脂肪の蓄積による生活習慣病が増えている」と指摘されているので「噛まない」影響は大人だけにとどまりません。

習慣づけは子どものときが大切です

「三つ子の魂百まで」と言われるように幼いときの性質やつけた習慣は老年まで変わりにくいものです。

ここで体によい「噛む」習慣が身につけられれば大人になって健康で悩むことが少なくなるかもしれません。

忙しい現代ではつい「早く早く」と子どもをせかしてごはんを食べてしまいがちですが、「噛むことの効能」を頭においてじっくりと食事の時間を取ってみてください。

幼少期が一番その子の歯や顎の骨を育てる一番大事な時期でもあります。逃すとこの時期は戻ってきません。

「よく噛む子」に育て、大人になってもその効果が得られるようにできるといいですね!

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