自然妊娠できるの?多嚢胞性卵巣症候群の原因・症状について
不妊の原因となるものは様々ですが、妊娠しにくい症状として「多嚢胞性卵巣症候群」と呼ばれるものがあります。
あまり知られていない病名ですが、実は気が付いていない人もかなり多いようです。
どんな病気なのか?どんな人がなりやすいのかなどを見ていきましょう。
この記事の目次
多嚢胞性卵巣症候群とは?
多嚢胞性卵巣症候群はPCOS(polycystic ovarian syndrome)とも呼ばれるもので、卵巣機能に異常をきたすものです。
人の卵巣では卵胞という卵子の素もとが成長し、正常であれば成熟した卵胞から卵子が毎月一個ずつ排出されます。これが排卵です。通常卵胞は一つのみが完全に成熟し、それが破裂して、そこから卵細胞(卵子)が飛び出す形で排卵します。
しかし、多嚢胞性卵巣症候群の場合、卵巣内での卵胞の生育が上手くいかず、排卵がきちんと行われません。
PCOSは超音波で卵巣を見ると、10mm前後の均等な大きさの卵胞が一列に数珠つなぎに見えることが多く、卵胞はこれ以上大きくなりません。そのために「多嚢胞性卵巣」と呼ばれるのです。
この未熟な卵胞はまるでネックレスのように見えるのでこれをネックレスサインと呼び、多嚢胞性卵巣と診断する上では重要な所見となります。
多嚢胞性卵巣症候群の自覚症状について
PCOSの場合卵巣自体に痛みを生じたり、不快感があるということはありません。
- 月経周期が長い(おおむね35日以上)
- 月経不順
- 月経過多・月経が止まらない
- にきびが多い
- 多毛
- 肥満
ただ、これらの症状は別の病でも生じるものが多いのが特徴。生理不順は、PCOSの他に子宮疾患や他の卵巣疾患の可能性もありますし、にきび・多毛・肥満といった症状には個人差があります。
PCOSであっても多毛や肥満等の症状がなく、自覚症状としては月経不順程度しか感じない人もいます。
よって、自覚症状だけでは確定できない病ですので、月経不順等がある場合は病院等での検査が必要です。
多嚢胞性卵巣症候群の原因
PCOSの原因は卵巣のホルモンバランスの乱れであると考えられています
排卵を誘発するには、LH(黄体化ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)という二つのホルモンが必要ですが、PCOSの場合は、LHの分泌が増え、FSHの働きが弱くなってしまい、排卵が困難になります。
そして、排卵が起こらないと排卵を促すためにLHの分泌がますます過剰になり、バランスがどんどん崩れてしまいます。
また、インシュリンという血糖値を下げるホルモンの増加もPCOSの発症に関連していると考えられています。
肥満の人は要注意
PCOSは肥満を起因として発症することがあります。
体脂肪に男性ホルモンや女性ホルモンの一つであるエストロゲンがたくさん蓄えられるためです。
さらに、肥満の人は血中のインシュリン濃度が高くなりやすく、インシュリンのバランスも崩れやすいために正常な排卵を阻害する可能性があります。
そのため、過度な肥満はPCOSの引き金となるのです。
多嚢胞性卵巣症候群は妊娠しにくい傾向…しかし自然妊娠も可能な場合も!
PCOSは排卵障害のため、当然ですが妊娠しにくい傾向にあります。
しかし、実際には生殖可能年齢の女性の6~7%程度がこの症状を示すと言われており、なんと20人に1~2人はPCOSの可能性があるんです。
自覚症状である肥満やにきび、多毛などは直接排卵障害と結びつけることが難しいので、どうしても気が付きにくいんですね。
ただし、自然妊娠が不可能なわけではありません。
PCOSでも、軽度の場合はきちんと排卵できるケースがあります。どの程度の頻度で排卵ができるのかが自然妊娠をする上で重要になってきます。
実際、PCOSとは気が付かずに妊娠している人もいます。
PCOSは不妊の原因の一つではありますが、PCOSだから自然妊娠しないというわけではありません。そのため、患者が若い場合や症状が軽度で自然に排卵ができると考えられる場合は自然に妊娠するのを待ち、積極的な不妊治療をしないケースもあります。
なかなか妊娠できず、症状に思いあたる場合はすぐ受診を!
PCOSの発症数は20人に1~2人程度とかなり高く、特に不妊を疑って病院を受診した際に発見されることが多くなっています。
聞きなれない病名なので、赤ちゃんができないのではと不安も大きいでしょうが、珍しい病気ではなく、これを克服して赤ちゃんを授かった人はたくさんいますので、不安になる必要はまったくありません。
また、PCOSは加齢とともに症状が重くなることが多く、徐々に正常な排卵がしにくくなると言われています。
そのため、同じPCOSの症状を持つ患者でも、30代よりも20代の方が自然妊娠の可能性が高くなります。高齢出産であったり、妊娠を少し先と考えているご夫婦にも知っておいて欲しい病気です。
▼多嚢胞性卵巣症候群の検査・治療についてはコチラも参考にしてみて!
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