なぜ戌の日に腹帯持参でお詣り?安産祈願の歴史と神社やお寺の探し方
安産祈願は日本古来の風習です。でもわからないことが多いですよね。
- 妊娠何ヶ月頃行けばいいの?
- お金はいくらかかるの?
- どうして安産祈願を受けるの?
- 神社とお寺、ご利益があるのはどっち?
そこで、持ち物は何が必要?腹帯じゃなきゃいけないの?など疑問や安産祈願の歴史についてもご紹介していきます。
この記事の目次
安産祈願とは?まずはどういった風習なのかを知ろう
日本には、昔から安産祈願という風習があります。私たちはお正月には初詣に行き、お盆には祖先の霊を家に迎えますね。古来日本人は、神社やお寺と関わりながら生きてきました。
- 神前で結婚式を挙げる
- 子どもが産まれたら初宮詣りに行く
- 七五三を祝う
このような儀式も行います。人が成長し、生きていく上で行う重要な儀式のことを人生儀礼と呼んでいます。
安産祈願も、そうした人生儀礼のひとつです。妊娠して赤ちゃんを授かったことを喜び妊娠期間を無事に過ごして安産で出産できるよう、神仏に祈るという儀礼です。
安産祈願の歴史は古い!いつの時代も神仏の力を借りお産を乗り切っていた
安産祈願は大変古い時代から行われていたと考えられています。神代の時代の応神天皇の母として知られる神功皇后も、住吉大神の神託を頼りにしたと言われています。
また聖武天皇の妃である光明皇后の安産を祈って建立されたお寺も現存します。源頼朝の妻・政子の安産祈願を行った神社なども残っています。
お産は母子ともに命がけの大仕事です。医学も科学も未発達だった時代には、神仏の力を借りてお産を乗り切ろうと考えられていました。
時代が進歩した現在でも、妊娠・出産は神秘の領域です。そこで今でも多くの妊婦さんや妊婦さんのいる家族は、神社仏閣を訪れて安産祈願を受けているのです。
なぜ安産祈願に腹帯なのか知っていますか?
安産祈願について調べると、必ず”腹帯”と”戌の日”というキーワードが出てきます。
腹帯は、日本にしかない風習と言われています。妊婦さんのお腹に巻く布のことで、古くは岩田帯と呼ばれていました。
岩田帯はさらしの一本布です。これを妊婦さんのお腹に巻くことで、妊娠中危険といわれる冷えを防いだり、大きくなるお腹を保護する効果があると言われてきました。
他にも逆子を防ぐなどの効能が信じられてきたのですが、近年の研究では医学的な根拠はないとされています。
しかし岩田帯はお守りとしての側面が大きく、今でも利用するママは少なくありません。また、腹帯も進化しておりいろいろなタイプが販売されています。
いろいろな腹帯のタイプを紹介
機能的に利用できる腹帯にはいろいろな種類があります。
- コルセットタイプ
- ガードルタイプ
- 腹巻タイプ
さらにトコちゃんベルトのように骨盤ケアができるものも人気です。どんどん変化していく妊婦さんの体調に合わせて選ぶと良いでしょう。
神社やお寺によっては、「鈴の緒」「鐘の緒」と呼ばれることもあります。その昔、社寺に下げられている鈴や鐘の紐を腹帯として使ったところ、安産になったという伝説が起源になっています。
実際に鈴の緒をお守りとして授与している神社もありますし、岩田帯を鈴の緒と呼んで朱印を捺している神社もあります。
多くの神社仏閣で安産祈願に行くと腹帯を授与してもらえる!
安産祈願はその昔、着帯の祝いと呼ばれていました。安産を祈って初めて腹帯を巻く日のことです。
腹帯は妊娠五ヶ月目に巻き始めると良いと言われています。つわりもおさまり、安定期に入る頃ですね。
そこで、今でも安産祈願は腹帯とセットになっていることが多いのです。多くの神社仏閣で、安産祈願に行くと腹帯を授与してくれます。
- 朱印入りの祈祷済み岩田帯を授与してくれる社寺
- 腹帯に縫い付けられるお守り布を授与してくれる社寺
また、最近では機能的な現代風の腹帯を授与している社寺も増えました。さらに持参した腹帯を祈祷してくれる社寺も多数派ですし、持参した腹帯に朱印を捺してくれるところもあります。
場合によっては腹帯の祈祷料が別途かかることもあるので、確認しておくと良いですね。
安産祈願はなぜ戌の日にと言われているの?
安産祈願でもう1つポイントになっているのが、戌の日です。戌とは干支の戌のことで、「イヌ」と読みます。
古来日本では日付を十干十二支であらわしており、戌の日は12日に1度訪れます。昔から12日に1度の戌の日に、腹帯を巻き始める着帯の儀を行うと良いとされていました。
ではなぜ戌の日に安産祈願を行うと良いと言われてきたのでしょうか。
それは、犬が安産・多産の動物と考えられてきたからです。犬はお産が軽い動物で、しかも仔犬も良く育つと言われています。そこで犬の安産にあやかり、安産祈願を戌の日に行うと良いとされてきました。
戌の日に参詣できない場合はどうすればいいの?
正確には、着帯の祝いを戌の日に行うとよいとされています。戌の日に参詣できない妊婦さんも多いと思います。そういった場合は安産祈願で祈祷を受けた腹帯を戌の日に巻き始めるとよいでしょう。
多くの神社仏閣では、戌の日以外でも安産祈願を行っています。ただし一部、戌の日以外は安産祈願を行っていない神社や、戌の日を推奨している神社もあります。
事前に公式サイトでチェックするか、神社仏閣に電話などで確認をしておくと安心ですね。その際、腹帯の授与や持ち込みについてもたずねてみるとよいでしょう。
神社とお寺の安産祈願はどちらの方がいいなどはありません
神社では、神前で神職さんが祝詞をあげて祈祷を行います。お寺では宗派によってことなり、護摩を焚いて祈祷してくれるところもあれば、お経をあげてくれるところもあります。
それでは、神社とお寺ではどちらが安産祈願に向いているのでしょうか。悩むところですが、どちらの方が良い!ということはありません。>
全国には安産祈願で有名な神社もあれば、安産祈願で人気があるお寺もあります。どちらが霊験があり、どちらがより安産で産まれるということはありません。
神社とお寺とどちらを選ぶかということよりも、パパとママ、家族が無事な出産のために心を尽くし、赤ちゃんを迎えるために一丸となることが大切です。
有名社寺と地元の社寺は、どちらを選んでもいい!大切なのは気持ちです
安産祈願で有名な神社やお寺を選ぶか、地元で慣れ親しんだ神社やお寺を選ぶか……も、多くのパパママが悩むところではないでしょうか。
赤ちゃんとママの無事を思えば、少しでも霊験あらたかと言われている、有名で人気の高い神社の方が良いような気がしますよね。
でも出産したあかつきには初宮詣りを行います。その後は七五三も控えています。そういったことを考え合わせると、地元の「氏神様」もまた良いものです。
さらに代々この神社にお願いしているというお家もありますね。菩提寺に参詣するという家庭もあるでしょう。
難しい問題ですが、それもまたパパとママの気持ちで選ぶとよいでしょう。私の周囲の人々も家庭によってそれぞれの方法を選んでいます。
私自身は北陸に嫁ぎましたが、実家のある北関東で出産しました。安産祈願は東京の水天宮に行きました。
水天宮には安産ののに夫婦でお礼参りに行きました。初宮詣りは北陸に戻ったあと地元の神社へ行き、七五三も同じ神社へ行っています。
夫婦・家族でよく話し合い、納得できる神社・お寺を選ぶとよいでしょう。ママの体調を考えて無理のない場所を選ぶことも大切です。
安産祈願のお守りが2個以上になっても大丈夫ですよ!
自分も安産祈願に行ってお守りを頂いたのに、実家のお母さんやお姑さん、友人などから別の神社のお守りを頂くことがあります。
こういったとき、「お守りを2個以上持っていると神様同士がケンカをするのでは?」と心配する人も少なくありません。
神社によると、神様同士がケンカをしてしまう…などということは無いですよとのことです。いずれもお産が無事終わるまでは大切に身近なものにつけておくか、神棚・床の間などに安置しておくと良いでしょう。
無事に出産して落ち着いたら、お礼参りをしてお札を神社におさめます。購入した神社・お寺にすべて戻すことが出来ない場合は、お焚きあげをしている神社にお願いするとよいでしょう。
ちなみに、神様は「柱」と数えます。例えば「応神天皇・仲哀天皇・神功皇后の三柱の神を祀る神社」となります。
安産祈願で有名な神社・お寺を紹介
安産祈願で有名な神社やお寺は全国にあります。その中でも代表的なものを紹介していきます。
「水天宮」水野神ミクマリノカミが主祭神
水天宮は福岡県にある久留米水天宮を総本宮としています。水天宮では天御中主神を主祭神とし、安徳天皇やその母・建礼門院などを祀っています。
天御中主神は天をつかさどり、北極星や北斗をおさめることから五行の「水」に通じるとされました。そこで水の神である「ミクマリノカミ」という名が「みこもり」に通じ、安産の神となったと言われています。
水天宮は久留米以外にも、東京の日本橋蛎殻町、横浜市・神戸市など全国各地に点在しています。
「塩竃神社」潮の満ち引きをつかさどる神シオツチノカミを祀る神社
塩竃神社は、シオツチノカミという神様を祀る神社です。シオツチノカミは航海の神とされ、製塩の神としても信仰されています。
さらに潮の満ち引きをつかさどると言われており、そこから潮の満ち引きに影響されると考えられていた、出産にも関わる神と考えられるようになりました。
現在では安産の神として親しまれています。シオツチノカミを祀る神社の総本宮は、宮城県にある鹽竈神社です。
塩竈神社も名古屋など全国各地に点在しています。また塩竃という名ではないものの、六所神社も塩竃神社の祭神を祀っており、安産に霊験があると言われています。
「浅間神社」火を放った産屋で安産を遂げたコノハナサクヤヒメが祭神
浅間神社は、富士山を神格化した神社です。その祭神は富士の女神とされるコノハナサクヤヒメです。ニニギノミコトに嫁いだ絶世の美女とされています。
桜の花のたおやかなイメージがある姫神ですが、海幸彦・山幸彦の母でもあります。彼らきょうだい神を出産する時、コノハナサクヤヒメは夫であるニニギノミコトに子の父を疑われました。
そこでコノハナサクヤヒメは自ら産屋に火を放ち、その中で安産することで身の潔白を証明します。美しいだけでなく、激しさと強さをあわせもつ女神なのです。
そこでコノハナサクヤヒメを祀る浅間神社は、安産にご利益があるとされています。浅間神社も全国各地にたくさん点在しています。
「八幡神社」安産、子育ての神である神功皇后と応神天皇が祀られている
八幡神社・八幡宮など、「八幡様」と呼ばれる神社は数多くありますね。その総本宮は、九州にある宇佐八幡といわれています。
八幡宮は、応神天皇という神代の天皇を祀る神社です。またその母である神功皇后もあわせて祀られていることがよくあります。
神功皇后は臨月の身でありながら住吉大神の神託を受けて三韓征伐におもむき、見事成功して凱旋したと言われています。さらにその後、無事安産で応神天皇を産みました。
応神天皇は病気ひとつせずにすくすくと成長し、大変な長寿をたもちました。そこで応神天皇と神功皇后は安産・子育ての神としても親しまれているのです。
実は八幡と名付けられている神社は、日本で最も数が多いと言われています。お住まいの地域にも、ひとつは八幡様があるのではないでしょうか。
安産祈願で有名なお寺もあります
安産祈願で有名なお寺も各地にあります。
- 鎌倉・大巧寺
- 宝塚・中山寺
- 奈良・子安山帯解寺
- 大巧寺
- 「おんめさま」とも呼ばれ、檀家を持たないという特別な立ち位置の寺院です。関東では大変有名な安産のお寺です。
- 中山寺
- 一方、関西で人気のある安産寺といえば、宝塚の中山寺ですね。鐘の緒と呼ばれる安産腹帯が有名です。
- 子安山帯解寺
- 奈良の子安山帯解寺は、文徳天皇の時代に安産祈願で大変霊験あらたかということで、勅命により名前を改めたといういわれがあります。
その他にも、子安観音と呼ばれる観音像を安置しているお寺や子安地蔵を安置しているお寺などは、安産祈願に選ばれることが多いですね。
その他の神社仏閣や安産祈願にご利益がある祭神
安産にご利益があると言われている神様を紹介します。
- オオクニヌシノミコト
- ククリヒメ
- イチキシマヒメ
- オオクニヌシノミコト
- 因幡の白ウサギで知られる神で、医薬に通じ大変な子だくさんだったと言われている神様です。
- ククリヒメ
- 白山神社の女神で、イザナギ・イザナミの仲裁をしたとされています。夫婦和合や安産・子育てなどにご利益があるとされています。
- イチキシマヒメ
- 宗像三女神と呼ばれる女神の一柱です。ほかにも海幸彦・山幸彦伝説に登場するトヨタマヒメなども、安産育児に関わると考えられることがあるようです。
また、祭神や本尊に関わらず、「子安」「子易」などと名前がついている神社・仏閣は、安産祈願で人気があります。
さらに実際に天皇や歴史上の偉人・英雄などが安産祈願を行った場所や、出生に関わる場所なども、時を経て安産祈願にご利益があるとされることも多いですね。
法力で難産の女性を救ったという伝説を持つ弘法大師や、身寄りのない子を育てた子育て呑龍なども、安産・子育てを見守る仏様としてあがめられています。
安産祈願で有名な神社・お寺の中には、赤ちゃんの男女がうらなえる場所もあります。下記のような感じです。
- お札の色が白なら男児・赤なら女児
- 供物の袋が兜形に折られていたら男児・舟形なら女児
- 境内で会った人が男性なら男児・女性なら女児
古い神社の場合、神道の神社となる以前から、山岳信仰や自然信仰の聖地になっていたことが多いものです。そういった場所はパワースポットなので、安産パワーを頂けるのではないでしょうか。
安産祈願のご祈祷料について
安産祈願を受けに行く際、多くのパパママが悩むのは「祈祷の料金」ではないでしょうか。神社によっては「お気持ち・お志」として、料金が書いていないことも多いものです。
安産祈願の代金は、神社の場合初穂料や玉串料と呼ばれます。お寺の場合は祈祷料やお布施と呼ばれることが多いですね。
相場としては5千円前後という神社・仏閣が多数派です。場所によっては6千円というところもあれば、3千円というところもあります。
祈祷済みの腹帯が授与されるかどうかによっても異なります。
お志とあって金額の明示がなく、迷った場合は5千円から1万円を目安に包むとよいでしょう。
場所によってはお酒を1升用意するところなどもあります。地域の口コミや神社の公式サイトなどを参考に準備しましょう。
祈祷料の払い方
祈祷の前には社務所などで受け付けを行うところがほとんどです。その場でお札を取り出して「料金」として支払うことは、あまりおススメできません。
できれば紅白蝶結びののし袋にお金を入れ、「初穂料」「玉串料」「御祈祷料」「御布施」などと表書きをして、妊婦さんの名前を入れて奉納しましょう。
安産祈願に出かける前に確認しておくべきこと
まず大切なのは予約の確認です。多くの神社仏閣では予約の必要なく祈祷を受け付けています。ただし予約制の場所もあります。予約をせずに行くと受け付けてもらえなかったり、長時間待たされることもあります。
また、祭礼や結婚式・神事・法要などと重なると、やはり祈祷に時間がかかったり、お断りされることもあります。
今は多くの社寺が公式サイトを運営し、メールフォームなどを完備しています。当日の確認は電話で行うようにしてくださいね。
腹帯を持参する場合は、新品のものか洗濯した清潔なものにしましょう。汚れているものは神前・仏前でお祓いを受けるのにふさわしくありませんし、朱印を捺す場合もあります。
買ったばかりのものは包装紙をはずし値札などもとっておきます。それからできるだけきれいにたたみ、風呂敷などに包んで持参するとよいでしょう。
避けた方が良い日
安産祈願に良いと言われているのは戌の日でした。では、避けた方が良い日もあるのでしょうか。暦をみて、仏滅に当たる場合はやはり避けた方が安心かもしれません。
宗派などによっても異なるので、神社・お寺に問い合わせるとスッキリとした気持ちで祈祷を受けられます。
また、安全上、待ち時間の都合などで避けたい日もあります。
- お正月の初詣期間
- お祭り・大きな神事・法要がある日
- 結婚式が多くなる大安の土日祭日
- 七五三シーズンの土日祭日
これらの日には、通常通りの祈祷が行われなかったり時間が大幅にずれることがあります。また境内も大変混みあいます。
何時間も待たされると妊婦さんにはとても辛いですよね。こうした時期をさけるか、それが無理であればせめて平日に参詣することをおすすめします。
妊婦本人が行けない場合
妊婦さんの体調によっては、安産祈願に行けない場合もあります。長期入院を余儀なくされたり、つわりがおさまらないこともあります。
そういった場合は、代参を受け付けている神社やお寺を選ぶと良いでしょう。腹帯などを持参してもらい、妊婦さんの代わりに祈祷を受けてもらいます。
また、遠方の場合は祈祷済みの腹帯やお札を郵送で届けてくれる神社・お寺もあります。そういった社寺を選んで安産祈願を受けると良いですね。
どんな服装が良いか
妊婦さんの場合はマタニティ使用の服で特に問題ありません。ただし、神前・仏前にお詣りするので、ジーンズやショートパンツといったあまりにもラフな格好はふさわしくありません。
正装をする必要はありませんが、大人としての節度ある服装を心がけるとよいでしょう。ただし妊婦さんは、寒い季節・夏のエアコンなど冷えに注意してくださいね。
安産祈願で大切なことは、赤ちゃんとママの無事を祈る心です
安産祈願はパパとママが我が子のためにささげる最初の祈りです。色々な決まりがあっても地域や神社仏閣のしきたりによって異なってきます。
あまりしきたりなどにはとらわれず、何よりも赤ちゃんとママの無事を祈る心が大切です。産まれてくる家族のきずなを感じながら、安産を願いましょう。
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