子供がおたふく風邪の合併症の髄膜炎に…症状や治療法を知ろう

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2016/08/22

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幼稚園や保育園へ通っていると、数年に一回程度、おたふく風邪や水疱瘡・麻疹などの感染症が流行する時があります。

ママ達が子供の頃、おたふく風邪にかかったお友達のところへわざわざ出掛けて、わざとおたふく風邪を移してもらったという経験をした方もいると思います。

麻疹・水疱瘡・おたふく風邪は一度感染しておくと免疫ができるため、地方や年代によってはそのような習慣もあるようですが、現在ではあまり奨励されることではありません。

誰もが子供の頃に経験する軽い病気と考えられがちですが、実はおたふく風邪は多くの合併症を引き起こす病気なのです!

その中で最も患者数が多いのが髄膜炎です。おたふく風邪にかかった子供の10人に一人が髄膜炎を合併していると言われるほど、子供にとっては身近に起こりうる病気です。

患者数が多い割にはあまり耳にすることのない髄膜炎という病気について、知っておきたいことを紹介します。


おたふく風邪の合併症としての髄膜炎とは

人間の脳は軟膜・クモ膜・硬膜に覆われており、その総称を髄膜と呼んでいます。この髄膜に炎症が起きた状態が「髄膜炎」です。

髄膜炎は大きく細菌性髄膜炎と無菌性髄膜炎とに分けられますが、おたふく風邪の合併症として発症するのは無菌性髄膜炎です。

無菌性髄膜炎の大部分はウイルス性で、夏風邪の代表的ウイルスであるエンテロウイルスと、おたふく風邪を引き起こすムンプスウイルスが最もよく知られています。

ムンプスウイルスが原因の髄膜炎の場合は、後遺症を残すことはほとんどありません。髄膜炎の中では症状が軽い部類に入ります。

子供の頃に経験する病気の代表のようなおたふく風邪ですが、おたふく風邪にかかった子供のうち10人に一人が髄膜炎を発症していると言われています。

またおたふく風邪には、かかっても症状のまったく出ない不顕性感染が多く、感染者の30~40%が不顕性感染で症状が出ないと言われています。

この不顕性感染者や、ほとんど自覚のないごく軽い症状のものまで含めると、おたふく風邪にかかった子供の半分は髄膜炎になっているとまで言われています。

他にはこんな病気も!おたふく風邪の感染症

おたふく風邪の合併症として最も多いのは髄膜炎ですが、他にも次のような病気があることが知られています。

脳炎

髄膜炎は髄膜に炎症を起こす病気ですが、「脳炎」は髄膜だけでなく、脳そのものに炎症を起こしている状態で、髄膜炎より重い病気です。

髄膜炎に併発して起こることが多く、痙攣や意識障害を伴います。発生頻度はおたふく風邪患者の0.2%程度とあまり多くありません。

まれに神経性難聴や顔の神経の麻痺などの後遺症が残る場合があります。

精巣(睾丸)炎・卵巣炎

機能がじゅうぶんに発達していない子供の頃にかかることはまれで、ほとんどは思春期以降に合併します。

膵炎

割合は数%と高くはありませんが、まれに発症することがあります。腹痛と嘔吐を起こしますが、1週間位で治ります。

ムンプス難聴

最近の調査で1000人に1人位の割合で発症することがわかっています。難治性で回復しません。多くは片側の耳だけですが、患者の15%程度は両側に起こります。

この病気は不顕性感染者でも発症する可能性があるため、全くの無自覚で難聴を合併してしまう危険性があります。

心筋炎

おもに成人の合併症で、頻度としてはまれです。発病すると心臓の機能が低下し、最悪の場合は突然死することもあります。

この中で最も注意すべきはムンプス難聴です。重症化しやすいうえに治療が大変難しく、子供の頃に聴力を失ってしまう原因の一つにもなっています。

誤解されがちですが、おたふく風邪の合併症として髄膜炎を発症したことの後遺症がムンプス難聴なのではありません。

ムンプス難聴もまた、おたふく風邪の合併症の一つです。

髄膜炎と同じで、おたふく風邪にかかった子供なら誰もが発症する可能性がある病気です。

その他にも、件数は少ないですが様々な症例が報告されています。おたふく風邪は合併症が多い病気だということを、しっかりと覚えておいて下さい。

髄膜炎の症状とは?もしものときに慌てないための知識

おたふく風邪は飛沫感染や接触感染のため、身近に患者がいるなど感染経路に心当たりがあることが多く、ママ達も診断を予想しながら小児科を受診すると思います。

ところが、おたふく風邪と診断されて数日たったにもかかわらず、熱が引かない・嘔吐が止まらないなど明らかに様子がおかしい場合があります。

そのときは何かしらの合併症が疑われますので、迷わずに病院に連れて行って下さい。意識障害などの緊急事態でない限りは、救急車の必要はありません。

ムンプスウイルスによる髄膜炎は、おたふく風邪の症状である耳の下の腫れが出てから3~10日後に発症することが多くなっています。

発症に時間差があるため、おたふく風邪の診断と髄膜炎の診断が同時にされることはあまり多くありません。

髄膜炎はどうやって見つける?病院での診察の流れ

髄膜炎の診断は症状と髄液検査で行いますが、まずは症状を確認します。

3大症状である発熱・頭痛・嘔吐のほかに項部硬直やケルニッヒ徴候などの症状が出ることがあります。

3大症状

微熱というよりも高熱になることが多く、38度から40度まで高くなることがあります。また嘔吐は1度きりではなく、何度か繰り返します。

項部硬直

仰向けに寝かせた状態で首の力だけでおへそを見るように医師に指示されます。項部硬直の症状が出ている場合、うなじ部分が固くなっているので首が曲がりません。

ケルニッヒ徴候

仰向けのまま片足を真っすぐ伸ばした状態で持ち上げていくと、途中で膝が自然と曲がってしまいます。膝を真っすぐに伸ばそうとしても抵抗感があり、伸ばすことができません。

その他

椅子に座ったままイヤイヤをする要領で首を左右に回します。頭痛がひどくなった場合は髄膜炎の可能性があります。

ここで髄膜炎を合併していると診断されると、殆どの場合はそのまま入院となります。病院によっては、入院中は24時間ずっと親が付き添うよう指示されることがあります。

入院中の様子は?髄膜炎の検査と治療

髄膜炎ではありますが基本はおたふく風邪です。おたふく風邪は感染症ですので、院内感染を防ぐために、小児病棟でも隔離された病室をあてがわれます。当然個室です。

入院するとまず初めに、髄膜炎と確定するために髄液検査をします。髄膜炎かどうかは血液検査ではわかりません。

また、ムンプス髄膜炎ではなく細菌性髄膜炎だった場合は、原因菌に合わせた抗生物質の投与を行う必要性があります。そのため、髄膜炎が疑われる場合には必須の検査です。

髄液検査(腰椎穿刺)はベッドに横向きになってエビのように背中を丸め、局所麻酔を行ってから腰から針を刺して髄液を採取する検査です。

この検査は子供にも親にも負担が大きいため、親を立会わせない病院もあります。というのも検査用の注射器はとても大きく、それを見た親がショックを受けてしまうからです。

また、注射への恐怖のため暴れて泣き叫ぶ子供が多いため、半ば押さえつけるような格好で検査をしなければならないからです。

子供によって注射の痛さの度合いは様々です。丸一日動けないほどの痛みの子もいれば、数時間で痛みが消える子もいます。

腰椎穿刺でわかること

髄膜炎と診断を確定するための髄液検査(腰椎穿刺)ですが、すぐに結果が出るわけではありません。入院中に先生から説明を受けます。

  • 液圧・・・髄膜炎のときは液圧が高くなります(数値が大きくなります)。
  • 色・・・健康な人の髄液は無色透明です。
    ※無菌性髄膜炎の場合は変化ありませんが、細菌性髄膜炎の場合は白くにごります。
  • 成分・・・髄膜炎のときはリンパ球(白血球)が増えます。

子供にとって痛くて辛い検査ですが、この検査には治療的な意味合いもあります。というのも腰椎穿刺により液量が減ることで液圧が下がり、症状が楽になるからです。

髄液検査の結果を待つ間、他の病気の可能性も探るために、必要に応じて頭部CTやレントゲン検査・血液検査などを行います。

治療の基本は入院による経過観察

おたふく風邪と同じように、ムンプス髄膜炎にはこれといった治療法も治療薬もありません。対症療法を行いながら、安静にして症状が軽くなるのを待ちます。

吐き気があるなら吐き気止めを、熱が高いなら解熱剤を、頭痛がひどければ鎮痛剤を、点滴に混ぜて投薬します。細菌ではなくウイルス性のため抗生物質は効きません。

とにかく安静にしていることが求められますが、入院も後半になると体調が回復してくるので、退屈を紛らわせることが大変になってきます。

入院している子供達のためのキッズルームがある病院もありますが、他の患者との接触は一切禁止されるため、残念ながらそういった場所で遊ぶことはできません。

インフルエンザ菌や風邪などを移されてしまうと、体力が回復していないため重症になりやすい状態です。隔離は他者からの感染を防ぐ目的もあるのです。

この期間を利用して、絵本を読み聞かせたり・字を書く練習をしたりするのもオススメです。担当の先生や看護師さんが褒めてくれるので、子供もやる気になることが多いです。

ただし、やはり体調が万全でないため疲れやすくなっています。体の回復を最優先にして、時間を見ながら声掛けをするなど、根を詰めすぎないように調整してあげて下さい。

ほとんどの場合、10日から3週間程度の入院で回復し、退院することができます。その後は自宅療養し、無理をしない範囲で通常の生活に戻ることができます。

おたふく風邪の予防接種と髄膜炎の関係

現在の日本では、おたふく風邪の予防接種は義務ではなく任意です。費用は居住地によって違い、5000円から7000円程度の自治体が多いようです。

ワクチンの有効率については、その子の体質による部分も大きいので諸説あり、1回摂取で良いという意見がある一方で、子供のうちに2回摂取すべきとの意見もあります。

ワクチンの開発・製造をしている北里第一三共ワクチン株式会社によると、1回の摂取で90%以上の免疫を得ることができるとされています。

一方、日本小児科学会ではワクチンの2回摂取を奨励しており、1回目を1歳のときに・2回目をその数年後に摂取するのが望ましいとしています。

予防接種には副反応がある場合も!

おたふく風邪のワクチンが定期接種ではなく任意接種なのには理由があります。

おたふく風邪のワクチンは、副反応として無菌性髄膜炎を発症することがあるからです。

1989年に、麻しんおたふくかぜ風疹3種混合(MMR)ワクチンが定期摂取導入されていましたが、この時は500人~1000人に1人の割合で無菌性髄膜炎を発症していました。

副反応としては発生件数が多いということが社会的な問題となり、1993年には事実上廃止されました。

現在摂取されているおたふく風邪単独のワクチンでは、接種から2~3週間後に、2000~3000人に1人の割合で無菌性髄膜炎を発症するという報告があります。

しかし自然にかかった場合には、数十人に1人が無菌性髄膜炎を発症して入院治療を受けています。

合併症の可能性を比較すると、自然に感染するほうが明らかに危険なのです。

世界的には、おたふく風邪の予防接種は、定期接種として2回の摂取が行われています。近い将来、日本でも再び定期接種化されるかもしれません。

1回のワクチン摂取で髄膜炎を発症!我が家の場合

我が家の長男は、幼稚園の年長になる直前の春休みに、おたふく風邪から無菌性髄膜炎を合併して10日間入院しました。

1回目の予防接種から2年経ち、そろそろ2回目を摂取しようと予定していた矢先のことでした。

息子の場合は、予防接種の副作用としての無菌性髄膜炎ではありません。

かかりつけの小児科でおたふく風邪の診断を受けたのですが、2日経っても嘔吐と高熱が治まらずにグッタリしていたため、再度受診すると髄膜炎と診断されました。

その病院には入院設備がなかったため紹介状を書いてもらい、その日のうちに家から車で20分ほどのところにある総合病院に入院しました。

衝撃の髄液検査と経過観察

病院について院内着に着替えるとすぐ、髄液検査のため息子だけが担架に乗せられて処置室に連れて行かれました。この頃には自分で歩くこともできませんでした。

これほど弱っていたにも関わらず、息子の全力で泣き叫ぶ声が処置室から遠く離れた病室まで聞こえてきました。

主治医からは歴代No.1の暴れぶりだったと言われたほどです。

息子にとって腰椎穿刺はかなり痛みが強かったようですが、「一番初めの治療」と説明された通り、酷かった頭痛が緩和されるなど症状が楽になりました。

呼吸が荒く眠りが浅い状態が続いていたものが、この検査の後からはちゃんと眠れるようになり、自力で起き上がれるようにもなりました。

その後、3日目くらいからは少しずつお粥なども食べられるようになり、1週間後には食欲も通常並に回復、10日後には無事退院することができました。

入院にかかった費用について

入院すると当然費用がかかります。地方によって子供医療費助成の内容が違うので、平均どれくらいかかるとは一概には言えません。

我が家の居住地区の場合、入院時の食事療養費や差額ベッド代は対象外でした。付き添いにかかる諸費用も、もちろん対象外です。

入院した総合病院では、幼児は保護者の24時間の付き添いが必須だったため、小児病棟の一番端の個室を用意され、母である私と2歳になる長女も一緒に泊まりこみでした。

当時、娘はワクチンを摂取していませんでしたが、「兄が感染した以上、妹も潜伏期間である疑いがある」という担当医師のすすめで一緒にいることにしました。

この時はウイルス感染防止に必要な隔離ということで、個室部屋代はかかりませんでした。ただし付き添い用のベッド代や布団のレンタル料・クリーニング代などは有料でした。

さらにテレビ・冷蔵庫などの使用料が加わり、最終的にどれくらい請求されたか正確な金額は忘れてしまいましたが、10日の入院で50000円前後だったように記憶しています。

また、患者である息子には食事が出ましたが、付き添いの私と娘にはありませんでした。そのため3食とも売店で用意しなければならず、これが思いのほか費用がかかりました。

髄膜炎にならないために親がしてあげられること

ムンプス髄膜炎がおたふく風邪の合併症である以上、ムンプスワクチンを摂取することしか、予防法はありません。

我が家の息子は抗体ができにくかった残念な体質でしたが、その後は後遺症が出ることもなく、至って健康に過ごしています。

おたふく風邪と油断せず、少しでも様子が違うと感じたら診察を受けてみることをお勧めします。納得がいけなければ、他の小児科にあたってみることも大切です。

大切な子供の健康を守ってあげられるのはパパとママだけです!子供が送ってくる小さなサインを見逃さないよう、見守ってあげて下さいね。

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