胎盤の役割は?重さや完成時期、石灰化や遺残、胎盤食について

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2018/09/07

妊娠をするとつくられる「胎盤」は、赤ちゃんの成長に欠かせない大切な臓器です。栄養素や酸素を運ぶだけでなく、妊娠中はママが口にしたものは全て胎盤を通して赤ちゃんに伝わります。

妊娠中は赤ちゃんの健やかな成長のためにも、できるだけリスクを減らして過ごしていきたいですよね。

この記事では、胎盤を通して赤ちゃんに与える影響や胎盤の状態でわかる病気、胎盤が白くなる石灰化や分娩後に出ない胎盤遺残や胎盤食など、知っておきたい情報をお伝えします。

胎盤はいつから完成?胎盤の役割

胎盤は、子宮の中で赤ちゃんに酸素や血液、栄養素などを送り込むための重要な臓器で妊娠7週頃から作られ、妊娠15週(妊娠5ヶ月)頃には胎盤が完成します。

胎盤は、臨月(妊娠10ヶ月)まで大きくなり、赤ちゃんが誕生したら20~30分後に軽い陣痛が起こり子宮から剥がれ落ちます。これを「後産」と言います。

赤ちゃんの生命を担う胎盤ですが、では一体どのような役割があるのでしょうか。

1.妊娠に必要なホルモンの分泌

妊娠すると、赤ちゃんを育てるために胎盤からは複数のホルモンを分泌します。赤ちゃんの成長に対応できるように妊娠週数によって、その時に必要なホルモンが分泌されます。

ヒト絨毛性ゴナドオロピン(hCG) 受精後8~10日後に分泌されるホルモン。子宮の血流を促し、
子宮を柔らかく大きくする働きがある。
ヒト胎盤ラクトーゲン(hPL) 妊娠32~34週で分泌がピークに。ママの代謝を活発にし、
優先的に赤ちゃんへ栄養を運ぶホルモン。
エストロゲン 赤ちゃんの成長に対応するため子宮内膜の分泌腺や血管を
増やし子宮頚管を柔らかくするホルモン。
乳腺を発達させ出産準備を始める。
プロゲステロン 赤ちゃんが成長しやすいように子宮内環境を整えるホルモン。
ママはイライラなどの感情変化や便秘、シミなどができやすい。

2.胎児に必要な栄養の供給

胎盤には絨毛(じゅうもう)というたくさんの突起があり、この絨毛を通してママが摂取したアミノ酸、ミネラル、糖などのエネルギー減となる栄養素を供給しながら老廃物を出します。

特に妊娠初期は胎盤が完成するまでの重要な期間で、妊娠初期にママが口にしたアルコールや薬は直接赤ちゃんの器官形成に影響することがあります。

胎盤を通して赤ちゃんに送られるのは酸素や栄養素だけでなく、有害物質やウイルスなど直接胎児の発育に影響を及ぼすものもあるため、気をつけていきたいですね。

3.呼吸するための酸素の供給

子宮の中には羊水があるため胎児は呼吸ができません。人のような肺呼吸とは違い、お腹の中にいる間は胎盤の絨毛間腔を通してガス交換が行われ、母体から酸素を受け取り二酸化炭素を放出しています。

妊娠中にママが喫煙したり、副流煙を吸ってしまうと酸素が取り込めず、酸欠状態になり胎盤を通して赤ちゃんの成長に悪影響を及ぼすと言われています。

妊娠が判明したら禁煙し、パパが喫煙していたら赤ちゃんのために協力してもらいましょう。

4.胎児の老廃物を排出する

胎児は羊水を飲み込んで尿として排出する呼吸の練習をしていますが、この排出された老廃物を胎盤が運びます。

羊水の中は臨月まで、胎児の尿や剥がれた皮膚や髪の毛で汚れていきます。大きな老廃物は胎便として腸の中に溜めておきますが、小さな老廃物は胎盤を通してママの血液に送られ、羊水をきれいに保ちます。

胎盤の大きさや重さは?

胎盤は、妊娠7週頃から作られ、妊娠15週頃までに機能が完成しますが出産までにどれくらいの大きさになるのでしょうか。

【平均的な胎盤の大きさ】

  • 重さ:約500~600g
  • 直径:約20㎝
  • 厚さ:2~3㎝

平均的な重さは約500~600g、直径約20㎝程の大きさになります。元気で健康な赤ちゃんの胎盤は、張りがありしっかり厚みもありますが、発育不全の赤ちゃんの胎盤は小さくて薄かったり、むくんでいることがあるようです。

胎盤の成長によって胎児の発育状況が変わる

妊娠4ヶ月頃は胎盤は約100g程しかありませんが、安定期に入ると胎盤を通して胎児がどんどん成長していきます。この時期にしっかり胎盤が成長し、栄養や酸素を届けれないと胎児に影響が出てしまいます。

とくに、妊娠高血圧症候群にかかってしまうと胎盤が十分に育たないため、必要な栄養素を届けられず胎児の発育が遅れてしまいます。

もともと血圧が高めだったり、糖尿病を患っていると妊娠高血圧症候群のリスクが高くなることがわかっています。妊娠中は予防をしながらできるだけ健康的な生活をしていきたいですね。

胎盤の位置や状態によって分かる病気

胎盤の病気は、赤ちゃんの成長やママの体に重大な影響を及ぼすため少しでも異常を感じたら病院へ受診しましょう。問題の早期発見と、適切な対処で悪化を防ぐことができます。

常位胎盤早期剝離

分娩前に胎盤が剥がれてしまう常位胎盤早期剝離は、ママと赤ちゃんの命に関わる病気です。胎盤と子宮壁の間に血液が溜まり、激しい痛みとお腹がカチカチになるのが特徴です。

以下のような症状がある場合は早めに病院へ受診します。

  • お腹の張りが頻繁に起こる
  • お腹がカチカチして硬い
  • 激しい下腹部痛がある
  • 胎動がなくなった

妊娠高血圧症候群やお腹を強打したことが原因と言われていますが、はっきりとわかっていません。母子共に危険が高まるので、緊急手術や帝王切開が必要となる場合があります。

前置胎盤

正常な胎盤は子宮の上にありますが、下のほうにずれている状態が前置胎盤です。胎盤の位置が低い場合は低置胎盤と呼びますが、子宮口に胎盤がかかっていたり、一部が覆っているなど様々です。

はっきりとしたことはわかっていませんが、受精卵が低い位置で着床したことが原因ではないかと言われています。前置胎盤は、胎盤と子宮壁がずれると大量出血を起こし早産に繋がる可能性があります。

状況によっては、即入院が必要になり、帝王切開での出産となるケースもあります。

胎盤機能不全

胎盤機能が低下し、赤ちゃんに栄養や酸素が届かなくなることです。原因は、妊娠高血圧症候群や糖尿病などです。

赤ちゃんの成長が悪い場合は、発育に影響を及ぼすため、胎盤機能が低下する前に陣痛促進剤を使って分娩を誘発します。

出産予定日を過ぎてもお産が始まらいこともあるため、通常分娩が難しい場合は帝王切開の手術が必要になるケースがあります。

癒着胎盤

赤ちゃんが出てきた後、通常は20~30分後に胎盤が出てきますが一向に胎盤が出てこないことを「癒着胎盤」と言います。

通常は、基底脱落膜にくっついている絨毛が、子宮の奥へくっついてしまい剥がれ落ちなくなっていることが原因です。

無理やり胎盤を剥がしてしまうと大出血を起こしてしまい、ママは出血性ショックで意識障害や呼吸困難、最悪は命に関わることもあります。

過去に婦人科系の手術経験がある、前置胎盤の診断を受けたことがある人は注意が必要です。

胎盤の石灰化と赤ちゃんへの影響について

胎盤は臨月になり出産予定日を過ぎると役目を終えるため石灰化が始まります。胎盤の石灰化がなぜ起こるのかはっきりとわかっていませんが、胎盤の細胞である絨毛にカルシウムなどの成分が付着し、石灰化が起こるのでは…と考えられています。

「石灰化=胎盤の老化」と混合しがちですが、実際は出産予定日を過ぎると一般的に起こる現象なのです。

石灰化が起きても、医師からの指示がなく胎動があれば過度に心配する必要はありませんが、何らかの原因で妊娠中期から胎盤が石灰化することもあります。

妊娠中期に、胎盤の石灰化を指摘された場合は生活習慣を見直すように指導されることが多いようです。

  • 塩分を控える
  • 脂質を減らす
  • 体を動かす
  • タバコの副流煙に注意する

タバコの煙が石灰化の原因に繋がるかどうかはわかりませんが、妊娠中のタバコは胎児の成長に大きく影響することは明らかです。

石灰化が予想以上に進むと、栄養や酸素が流れにくくなるため緊急帝王切開になることも踏まえて妊娠初期から健康的な生活を心がけていきたいですね。

子宮内に残る胎盤遺残とは?

通常は、分娩後に軽い陣痛があった後に胎盤が剥がれ落ちますが、何らかの原因で胎盤が剥がれ落ちず子宮内に残ることを「胎盤遺残」と言います。

胎盤遺残は、胎盤の一部が残る場合と全てが子宮に残っている場合の2種類あります。
胎盤遺残の症状は、胎盤の状態によって現れ方が異なります。

  • 癒着胎盤:胎盤の一部が子宮から剥がれない状態。一部の剥離部分から大量出血が起こり命に関わる
  • 胎盤嵌頓:胎盤嵌頓(たいばんかんとん)は、子宮挟部が収縮し内臓の腹膜が隙間からはみ出してしまい元に戻らない状態

出産後、不正出血が続きます。このまま放置してしまうと下腹部痛や感染症による発熱が現れます。

その他に考えられる胎盤遺残の原因

胎盤遺残は癒着胎盤と胎盤嵌頓が主な要因ですが、その他にも以下の原因が考えられます。

娩出力不足
胎盤が剥がれても体外へ出すことができない状態は、分娩出力不足が原因でもあります。子宮の収縮具合やいきみ不足によって胎盤が残されてしまいます。
付着胎盤
付着胎盤は胎盤遺残の最も多い疾患で、絨毛は奥に入り込んでいないが胎盤が剥がれにくい状態のこと。用手剥離(手でかき出す)をすれば剥離が可能です。

分娩後の胎盤遺残の症状

胎盤遺残は主に出血が続きます。分娩後の出血は分娩後24時間以内の早期出血と、分娩後24時間以上の晩期出血に分けられ、どちらも胎盤遺残の原因となります。

早期と晩期いずれも生命に関わる大量出血になることもあるため、血圧や脈拍、意識状態を確認しながら迅速に治療を行っていきます。

胎盤遺残の治療方法

胎盤遺残の状態によって治療方法が異なりますが、改善が見られない場合は高度な治療を行っていきます。

①子宮収縮促進マッサージ 癒着胎盤や付着胎盤、分娩出力不足が原因として考えられる
場合に子宮促進マッサージの治療が行われる
②薬剤投与 マッサージで改善がない場合は注射による薬剤投与で子宮収縮
を促進させて行う
③胎盤用手剥離・胎盤圧出法 マッサージ、薬剤投与で改善がなければ手で子宮を剥がす
用手剥離や子宮に圧をかける胎盤圧出法の治療を行う
④手術 ここまで治療の改善がみられなければ子宮全摘除、
膣上部切断の手術を行う

出産後に食べる「胎盤食」とは?

美容や健康を促進させる効果の期待によって、芸能人や助産師さんの体験談にもみられる「胎盤食」は一部の女性で注目が集まっているようです。

胎盤食については正確な情報や記録がないため、米ワイル・コーネル・メディスン産婦人科の医師たちは、

「胎盤食による健康上のメリットはなく、むしろ感染症などのリスクを伴うことが明らかになった」との文献レビューが掲載されています。

胎盤は「プラセンタ」とも呼び、海外ではカプセルやスムージーで摂取したり米国では多くの企業が胎盤を食用に加工するサービスがありますが、日本では分娩後の胎盤は医療廃棄物として処理をすることになっています。

海外では、胎盤のカプセルを摂取した母子がB型連鎖球菌に起因した敗血症を発症した報告もあり、感染症のリスクもあることから、胎盤食は科学的根拠はないと言えそうです。

胎盤の健康に気を配って赤ちゃんに栄養を届けよう!

赤ちゃんの命綱ともいえる「胎盤」は妊娠が分かってから作られる臓器です。とくに、妊娠初期は赤ちゃんの器官形成に大事な時期で、胎盤が完成していなくてもママが口にしたものは全て赤ちゃんに伝わります。

妊娠中の妊娠高血圧症候群や感染症は胎盤を通して赤ちゃんの発育に影響があることも分かっています。

胎盤によって様々なホルモンが分泌されると、ママの体調変化も現れやすいので、気分転換やストレス発散をしながら規則正しい生活ができるように心がけていきましょう。

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