どうすればいい?障害を持った子供とその兄弟への接し方!

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2015/08/27

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我が子が重い病気や障害を持っていたら、家族は協力し合って子どもの成長を支えていく必要があります。その中で、問題となりやすいのが障害のある子どもの「きょうだい」です。病気や障害を抱える子とは違った悩みを抱える子も少なくありません。

障害を持つ子、持たない子をきょうだいとして一緒に育てていくとき、どんなことに注意をすればよいのでしょうか。きょうだいが心に負担を負うことなく、また傷つくことなく成長できるように、親ができることを考えてみましょう。

なぜ「きょうだい」なの?「きょうだい児」という認識と支援

ここでは、兄弟姉妹を「きょうだい」と表記しています。ではなぜ、「きょうだい」なのでしょうか。

病気を持つ子ども・障害を持つ子どもの兄弟姉妹「きょうだい児」

実は、病気や障害を持つ子どもの兄弟姉妹のことを、現在支援の現場では「きょうだい」、もしくは「きょうだい児」と呼んでいます。

病気や障害を持つ子どものきょうだいが、幼少時から寂しい思いをしたり、つらい思いをするといった弊害があることが、すでに問題視されているのです。

表立っていじめを受けることがなくても、さまざまなシーンで我慢を強いられたり、過度の期待を受けることもあるでしょう。

きょうだいを支援しようという動きはすでに10年以上前からあり、障害を持つ子の親に対してセミナーが行われている施設もあります。

我が家にも、自閉症スペクトラムと診断されている子どもがいます。またその上下には、健常児の兄弟がいます。さらに、私自身が障害者の「きょうだい」として育ちました。私はきょうだいの立場であり、きょうだいの親の立場でもあります。

最近、障害を持つ息子が通う支援学校でも、きょうだいに目を向けようという意識が強くなりつつあります。また、療育訓練施設などでもきょうだい支援セミナーが積極的に行われています。きょうだいにスポットがあたることが増えてきました。

その背景には、やはり近年「発達障害」と診断される子が目立つこともあるように思います。また、きょうだいとして育ってきた人々が社会で活躍する年齢に達したことも大きいでしょう。

きょうだい支援のセミナーに参加してみると、講師の先生方に「私もきょうだい児として育ちました」という方がいて、身近に感じられることも多々あります。

「きょうだい」が直面している現状を知ろう…おすすめの番組

では、実際にきょうだい児はどんな現状に直面しているのでしょうか。おすすめしたいのは、NHKの「ハートをつなごう」という番組です。この番組で「きょうだい-障害のある人の兄弟姉妹-」というテーマで特集が組まれていました。

ここでは、悩み苦しむきょうだい児の現状が赤裸々に語られています。NHKの福祉系番組は、NHK厚生文化事業団が行っている「福祉ビデオライブラリー」という事業で無料レンタルすることができます。

我が家も子どもが通う支援学校の先輩お父さんに勧められ、借りて両親そろって視聴しました。非常に胸を打たれました。

さらに、同じようにきょうだいへの対応に悩む療育仲間のママたちと一緒に視聴し、話し合いの場をもうけました。とても有意義な時間となりました。

ここに登場するきょうだい児は、さまざまなケースです。でも、どのきょうだい児も心に深い傷を持っています。それと同時に、きょうだいに対して深い愛情も持っています。「愛している、愛したい、だから苦しい」という、切ない現状が伝わってくる番組です。

私の弟は知的障害をもっています。弟が生まれたのは、1979年。この年は、障害のある子どものための養護学校が義務教育化された年でした。それまでは「就学猶予」「就学免除」といった形で、障害のある子どもは学校に行けないことも多かったのです。

弟と私が成長した時代は、まだまだ障害者への理解やサポートが充分ではない時代でした。偏見も非常に強かったのです。弟はもちろん、私も周囲の人々から心無い言葉をかけられることもたくさんありました。

しかし私はそれを親には言えませんでした。弟のことで日々つらい思いをしている両親を、これ以上悲しませることができなかったからです。親の立場になった今では、子どもに虐待やいやがらせの事実を言ってもらえなかった親は、どんなにつらいだろうと思います。

いろいろなケース…障害を持つ子・重病と闘う子のきょうだい

私が経験したことはごくわずかなものですが、きょうだい児の数だけ問題は起きています。障害のある兄弟をからかわれ、子どもの間のいじめに遭う子もいます。

また、障害のある子が騒ぐためにレストランや遊園地に行きたくても行けず、我慢を強いられた記憶のある人は少なくないでしょう。

療育訓練は基本的に障害のある子どもと親だけが参加し、きょうだいの同席が許されないことがほとんどです。そのために、さびしい思いをしている子も多いはずです。

きょうだい児は、障害を持つ子の兄弟姉妹だけではありません。重病と闘う子どもの兄弟姉妹もきょうだい児と呼ばれています。入退院を繰り返す子どもに親がかかりきりになってしまい、預けられたり、留守番をしたりと孤独を味わっている子もいるようです。

重病になるほど大学病院などの大きな病院に入院することが多いですよね。しかし多くの小児病棟は院内感染を防止するため、親以外の立ち入りを厳禁にしています。きょうだい児でも入れない事が多く、ここでも寂しさと闘わなくてはいけない子がたくさんいるのです。

きょうだい児の学校行事や習い事の発表会・試合などがあるときでも、病気を抱える子に異変があれば、親はそちらを優先せざるを得ないこともあります。

どんなパターンがあるの?無数にある、子どもの病気や障害

それでは、子どもが抱える可能性がある病気や障害には、どんなものがあるのでしょうか。そのパターンと、きょうだい児の置かれる環境についてみてみましょう。

生まれた時からわかる障害や病気…早い段階で「きょうだい児」へ

障害や病気の中には、妊娠中、もしくは生まれてすぐにそうとわかるものがあります。たとえばダウン症などはそのひとつですね。心臓疾患も、妊娠中の心音から把握できることもあるようです。障害や病気といっても、その重さは人それぞれです。

ダウン症を持つ子でも、さまざまな合併症や自閉傾向を同時に抱えている子もいれば、活発で体も丈夫、という子もいます。生まれつきの病気を持つ子も、生後すぐに手術が必要な子もいれば、成長とともにさまざまな治療が必要になる子もいます。

脳性まひやトリソミーなど、この世界にはさまざまな障害や病気が存在します。子どもを授かって初めてその病気の名前を知った、ということもあるでしょう。

こうしたケースでは、産後すぐに親が障害を持つ子や病気を持つ子にかかりきりになってしまうことが多い、という特徴があります。

成長とともにあらわれる障害や病気も…少しずつ自覚するタイプ

障害や病気の中には、先天性ではないものや、先天性でも成長とともにその特性が明らかになっていくものもあります。小児がんなど、成長過程で発病することもあります。最近は生存率が飛躍的に高まっているとはいえ、やはり長い闘いの日々になります。

また、自閉症スペクトラムやADHDなど、多くの発達障害は、新生児期にはそうとわからないという特性があります。社会性や対人コミュニケーション能力に関する障害なので、成長とともに他の子との違いが明らかになってきます。

中には、小児期崩壊性障害など、2歳から5歳くらいまではすくすく成長するのに、退行して自閉症のような状態になる障害も存在しています。

こうした障害や病気を抱える子の家庭の場合、これまで平等に接していた兄弟姉妹の中で、急に「構ってもらえる子」と「我慢せざるを得ない子」が出てしまいます。

知的な障害と身体的な障害…障害にもいろいろな種類がある

子どもの病気が無数にあるように、障害にもいろいろな種類があります。

身体的な障害
知的な障害
発達障害
精神的な障害
重複障害

身体的な障害も多岐にわたります。視覚・聴覚障害や肢体不自由、また内臓の機能障害や免疫不全も身体的な障害の範疇です。

一方で、知的な障害は、知能の発達に起きる障害です。知的な障害を引き起こす要因もいろいろあります。

発達障害は、最近注目されている社会性やコミュニケーション能力に関する障害です。また、読字や計算などが苦手な学習障害もあります。

精神的な障害もあります。幼いころの発達障害は、小児精神科で診断を受けることもあります。

さらに、身体的な障害と知的な障害、発達障害など、いろいろな障害を複合的に抱えている場合もあります。それが重複障害です。

子どもが「きょうだい児」になるとき…下の子と上の子の葛藤

家庭に障害のある子どもが生まれると、その上下の子は「きょうだい児」になります。どんな葛藤があるのでしょうか。

最初に障害のある子が産まれたとき…下に生まれるきょうだい児

最初に生まれた子が障害や病気を持っていた時、親にとって「下にきょうだいを産む」ということは大きな決断なのではないでしょうか。

「病気や障害を抱える子を育てながら、妊娠や赤ちゃん育児ができるのだろうか」
という悩みもあるでしょう。
また、「次の子も病気や障害を持っていたらどうしよう」という不安もあります。

こうした不安は、ママひとりで抱えられるものではありません。パパや子どもの支援に携ってくれるプロ、そして育児をサポートしてくれる祖父母など、周囲の人とよく話し合いましょう。

次の子も病気や障害を持っているかもしれない可能性については、主治医にしっかり話を聞いておくと良いですね。できるだけ夫婦で話を聞きましょう。

また、妊婦健診や出産を行う病院選びも大切になります。病気を持つ子、障害を持つ子を連れていける産院か、その間預かってくれる施設や人を探す必要も出てきます。

2人目以降に病気や障害を持つ子どもが生まれた時、きょうだいは

2人目以降の出産で、病気や障害のある子どもが生まれることもあります。我が家は2番目の子が障害を持っているので、このケースに当てはまります。

成長とともに障害がはっきりしてくる場合は、きょうだいを育てた経験が生きることもたくさんあります。「お姉ちゃんとくらべて言葉が遅すぎる」「お兄ちゃんよりもはるかに落ち着きがない」といった特異性から、障害に気付くことも多いでしょう。

しかし、上の子は常に「下の子が産まれる」ときに、母親や周囲の人の注目を赤ちゃんに取られてしまうという葛藤に直面します。

障害や病気を持つ子が下に生まれると、この葛藤が強く、長く続くことになります。まさにこの点が、きょうだい児が抱えるつらさ・悲しさのポイントのひとつです。

障害を持つ子ども・病気を持つ子どもが複数生まれる家庭もある

障害を持つ子どもや、病気を抱える子が複数生まれる家庭もあります。遺伝的な因子のある病気の場合もあれば、そうでない場合もあるようです。

多くの障害や病気は、まだ原因や要因が完全に解明されていないため、兄弟姉妹に障害や病気を持つ子が複数出ても、親が自分を責める必要はありません。

とある家庭では、4人いるきょうだいのうち、現在3人まで自閉症スペクトラムや学習障害などを持っているそうです。4人目は乳児なので、両親は今後の発達を心配しています。

またとある家庭では、父と同じ病気を子ども2人も発症しました。いずれ身体的な障害を併発するため、現在からケアを続けています。

障害や病気の程度も子どもによってさまざまです。

本人も軽度の障害や病気を抱えているきょうだい。
複数の兄弟姉妹が障害や病気を抱えている、健常なきょうだい。

こうしたパターンも周囲にいて、決して珍しいことではないのです。

きょうだいへの説明…病気や障害をいつ、どのように説明する?

きょうだい児は病気や障害を持つ子どもと一緒に育ち、親よりも長い時間を共有するいわば「同志」になります。

いろいろと我慢や寂しい思いをさせることもあります。また、発達障害子どもの場合などは、一見他の子からみれば「ずるい!甘やかしだ」と感じる対応が必要になることもあります。

そこで、きょうだいに対して、「この子はこうした病気や障害を持っているから、こうした対応や治療が必要なのだ」と説明してあげましょう。我が家では、上の子が小学校低学年、下のきょうだい児が幼稚園の年中さんのとき、説明しました。

人は生まれてくるときに、みんな「個性」が入った箱を持ってくる。
その箱は無数にあって、自分で選ぶことができるけれど、
いくつかの箱の中には必ずひとつ、「病気や障害」が入った黒い箱がある。
誰かが必ず持って生まれなければいけない箱を、あなたの兄弟姉妹は選んだんだよ。
それはきっと、パパやママ、そしてきょうだいのあなたたちを空の上から見て、
「この人たちなら大丈夫。病気や障害を持って生まれても、好きになってくれる」と
思ったからじゃないかな。

我が家では、このように話しました。

ある自閉症児の家庭では、障害についてこう話したそうです。

君は、耳から聞いたことを脳に運ぶ、まっすぐなパイプを持っているんだよ。
だから、私たちの言ったことをきちんと分かって、お勉強もできる。
でも、この子のパイプは、頭の中で曲がっていたり、からんでいるんだ。
だから、聞いたことがまっすぐ届かなくて、困ったことが起きるんだよ。
でも、目から見たことを運ぶパイプは、少しだけまっすぐ。
字や絵で見えるように、説明してあげようね。

また、どんな治療や療育が必要で、家族でこうした協力をしていきたいという見通しも話してあげましょう。「みんなで頑張ろうね」と、きょうだい児も家族というチームの仲間だということを伝えます。

「あなたはお姉ちゃんなんだから、我慢してね」「この子と比べて、あなたは病気が無いだけ恵まれているのよ」「この子の分まで勉強を頑張るのよ」といった声かけは、子どもにとって重荷になったり、傷つく原因になることもあります。ひかえましょう。

きょうだいとの接し方の基本!子どもに注ぐ愛情は、みんな同じ

では、障害のある子どもときょうだい児に、親や周囲の人間はどのように接していけば良いのでしょうか。

親が感じる「平等な愛」ときょうだいが感じる「平等な愛」は違う

どの子に対しても、親は「愛おしい」という気持ちを持っているでしょう。しかし、子どもが感じる「親の愛情」は、平等とは限りません。

病気を持つ子どもや障害を持つ子どもには、通院や入院、療育訓練などの特殊なケアが必要になります。そのため、親がつきっきりになることも多く、自然ときょうだい児に我慢をさせたり、寂しい思いをさせることが多くなっています。

親が「平等に愛している」と思って接していても、きょうだい児は「あの子ばかり構ってもらっているし、お母さんを独占している。自分は我慢や留守番ばかりなのに」と感じているかもしれません。

そもそも、「きょうだいすべてを平等に愛する」というのは、とても難しいことですよね。それは健常児の兄弟姉妹同士でも同様です。

その子に合った愛情のかけかた、その子が一番求めている時に、一番しっくりくる「愛情表現」を見つけてあげることが、大切なのではないでしょうか。

きょうだい児が経験する、いろいろなトラブルやつらい我慢

きょうだい児は、いろいろな我慢を重ねています。また、それは親にとって葛藤の場でもあります。

レストランや遊園地に行くことを我慢する。
親と遊ぶ・出かける約束を、ドタキャンされる。
留守番が多く、親に二人きりで甘えることができない。
周囲の人に「兄弟姉妹の分まで頑張れ」とプレッシャーをかけられる。
病気・障害を持つ子のことを、他人からからかわれる。

他にも無数のシチュエーションがあります。

発達障害を抱えている子では、レストランや遊園地で大人しく待つことが難しいため、旅行や外食ができないという家庭も少なくありません。また、親と出かける約束をしていたり、学校行事に来てくれる約束をしていたのに、急にキャンセルされてしまうこともありますよね。

あまりにも我慢することやつらいことが多いと、きょうだい児は親や病気・障害を抱える子に対して、不満や反発を感じるようになってしまいます。

しかしその一方で、親の大変さや病気・障害を抱える兄弟姉妹への愛情もあるため、自己嫌悪や自責の念で自分の心を傷つけてしまう子も少なくありません。

我が家ならどう対応する?子どもたちみんなに親の愛情を伝えよう

では、実際にこういったケースに直面したとき、どう対処してあげればよいのでしょうか。実体験をもとに考えてみましょう。

  • きょうだい児が行きたい所へは両親どちらかだけでも良いので一緒に行く
  • 予定のブッキングは早い方を優先
  • どうしても優先すべき用事の場合は早く埋め合わせを
  • きょうだい児との二人きりの時間を作る

レストランや遊園地などは、どうしても無理ならきょうだい児だけでも体験させてあげましょう。家庭によっては「家族みんなで行かなければ」と考えるかもしれません。しかし、幼い子どもにそういった理屈を理解することは難しいですよね。

きょうだい児と両親のどちらかが外食したり、遊園地や動物園に行くなど、できるだけ時間を作ってあげたいものです。その場合、一緒に行く親は、きょうだい児に選ばせてあげましょう。「いつもママはあの子ばかり…」といった不満を解消させることにつながります。

お出かけや行事をドタキャンしてしまったときは、どうすれば良いのでしょうか。実は我が家も直面しています。障害のある子の運動会と、上の子とパパの旅行の予定が重なってしまったのです。

我が家の場合は、母である私と障害のある子、健常なきょうだいの1人を連れて運動会に行き、パパと上の子は予定通り旅行に行くことにしました。非常に楽しみにしていた予定を無にされると、子どもはひどく傷つきます。

そこで、こうした予定のブッキングは、早い方を優先というルールを決めます。早く予定が入った方が優先されるという公平なルールがあれば、子どもたちも譲り合いながらいろいろな経験ができます。

また、緊急入院や手術など、どうしても優先しなければならない事態が発生した時は、なるべく早く埋め合わせをします。約束を破ったまま放置してしまうことは良くありません。できるだけ早めに時間をつくり、ささやかでも二人きりの時間を作ってあげましょう。

きょうだい児は、常に寂しい思いをする環境に置かれています。そこで、「あなただけを見ている時間もしっかりあるんだよ」と伝える努力をしましょう。

我が家では、子どもとパパが二人きりで出かける「父旅」を実施しています。これはいずれ障害を持つ子も行く予定ですが、きょうだい児にとってかけがえのない思い出です。

また、母である私も、きょうだいそれぞれと二人きりになる時間を作るようにこころがけています。きょうだいそれぞれが一番「一緒にいて。自分に時間を使って」と思っている時をくみ取って、希望をかなえることを大切にしています。

二人きりで長時間過ごす必要はありません。膝の上に抱いて絵本を読むだけでも、子どもが望んだことならば十分に愛情が伝わりますよ。

特に宿題やテスト、体育など、「頑張った時」は、障害をもつ子もふくめた家族全員の前で、みんなで頑張りを認め、称えるようにしています。その子だけが、家族の中で輝く時間を作ることが大切なのではないでしょうか。

きょうだいならではの悩み…きょうだいに重荷を負わせない方法

きょうだい児は、周囲の人からプレッシャーをかけられることもたくさんあります。どう接していけば、こうした重荷から解放できるのでしょうか。

周囲からのプレッシャー…きょうだいをしばる「見えない鎖」

きょうだいに起こりやすいトラブルの中に、「周囲の人からプレッシャーをかけられる」というものがありました。私の知人は、親から「おまえの兄弟は将来性がないのだから、おまえはその分、他人の倍は頑張って勉強し出世しろ」と言われ続けてきたそうです。

彼女は結局重圧に耐えきれず、大人になる前に心身のバランスを崩し、重い病気をわずらってしまいました。実際に、こうしたあからさまなプレッシャーを子どもにかけ続ける親も存在します。また、親ではなく祖父母など周囲の人からかけられる子もいます。

また、誰もそういったプレッシャーをかけたつもりはなくても、きょうだい自身が「私がしっかりしなければ」と感じることも多いのです。かなり幼いころから、子どもは親が悩み、苦労する姿をよく見ています。

「これ以上親を泣かせてはいけない」「いじめられている兄弟姉妹を守らなきゃ」と感じています。また、成長とともに「親が将来いなくなってしまったとき、障害や病気を持つ子を私が支えて行かなければならない」と考えるようになっていきます。

こうしたプレッシャーのことを「見えない鎖」と呼んでいます。親は、それをすべて防いであげることはできません。

誉め方や励まし方でも、きょうだい児をしばってしまうことがある

とあるママが「お手伝いをしてくれた時や、障害を持つ子の世話をしてくれた時しか、きょうだい児を誉めていないわ…」と話してくれました。忙しくてつらいことの多い、余裕のない毎日だと、ついこういった誉め方になってしまいますよね。

でも、これではきょうだい児は「親が見ているのは自分じゃない。いつでも気にかけているのは、病気や障害を持つ子の方だ」と感じてしまいます。

また、ある家庭では、きょうだい児に「あなたはこの家や障害を持つ子のことなど一切構わず、自由に生きて行ってほしい」と伝え続けていたそうです。しかし、きょうだい児はその励ましを「自分はこの家庭にとって用無しなのだ。居場所がないのだ」ととらえました。

きょうだい児にとって、「親はちゃんと自分だけを見て考えてくれる瞬間がある」「自分もちゃんとこの家庭に必要な人間だ」と感じることは勇気になります。

意外に思われるかもしれませんが、きょうだいの中には「家族にとっての“かなめ”や“かすがい”になっているのは障害のある子で、自分はのけ者だ」と感じている人が少なくありません。

これもまた、必要以上のプレッシャーと同じように、きょうだい児をしばる「見えない鎖」の一種なのかもしれませんね。障害を持つ子も、そうでない子も、かけがえのない家族の一員。

親にとっては「きょうだいはみんな同じように気がかりな存在で、同じように大切な愛する我が子なんだ」ということを、常に言葉や態度で伝え続けてあげましょう。

1人で頑張る必要なんてない!「きょうだい支援」で得られる仲間

現在は、障害や病気を持つ子のきょうだいを支援していくためのきょうだい支援が積極的に行われています。こうしたサポートを行っている会に参加することで、同じような立場の人々や、同じ悩みを抱えている人々と出会うことができます。

親に言えない、「親を愛しているからこそ言えない」悩みでも、同じ立場の人々と分かち合うことで心の重荷を少し軽くすることもできるでしょう。

また、「私は恋や結婚ができるの?」「親がいなくなったあと、どうすればいいの?」といった不安も、経験者の話を聞きながら共感することができます。

自閉症など特定の障害を持つ子のためのきょうだい支援もあれば、広義のきょうだい支援の会もあります。兄弟姉妹が通っている病院や支援施設・学校で問い合わせてみましょう。

家族みんながフラットな関係を築くために、親ができること

我が家をはじめ、きょうだいと障害・病気を持つ兄弟姉妹が現状仲良く過ごせている家庭に見られる特徴をご紹介しましょう。

  • 障害や病気を持つ子を、きょうだい児の行事や送迎に連れていく
  • きょうだい児の行事や送迎にも、障害や病気を持つ子を連れていく
  • 障害や病気を持つ子の入園・就学は、きょうだい児も考慮して決める

家族の行事には、できるだけ家族みんなでオープンに参加することは、とても大切です。

そうすることで、周囲の人も自然と障害や病気を持つ子の存在を認識してくれるようになりますし、社会への受け入れもスムーズになっていきます。

障害や病気を持つ子の入園・就学は、きょうだい児も家族会議に加え、意見を聞きながら方向性を決めていくと良いかもしれません。

「一緒に通いたい」「障害や病気のサポートによりよい環境を選んだ方がいい」など、きょうだい児が驚くほどしっかりとした考えを持っていることもあります。

また、現在障害を持つ子のための支援学校では、地域で受け入れていくための「インクルーシブ教育」が盛んにおこなわれ、交流が進んでいます。本来就学するはずだった校区の学校を訪問し、交流学習を行います。

こうした交流でも、受け入れ側の学校に通うきょうだい児がポイントになります。彼らの意見も聞きながら、よりよい方向を探っていきたいですね。

きょうだい児と障害・病気を持つ子がともに成長する未来のために

きょうだい児の支援は、ここ十数年で取り上げられるようになってきた、まだ新しい概念です。きょうだいとして生きる人々の力で、今後どんどん充実していくことでしょう。

障害や病気を持つ子どものいる家庭では、子ども自身、そして親の高齢化も問題となりつつあります。そこでもきょうだいへのプレッシャーや重責は拭いきれるものではありませんが、さまざまな支援やサポートが、私たちには用意されています。

きょうだい支援の会に参加したり、親がしっかり向き合ってくれることで「1人で抱え込まなくてもいいんだ。自分にも居場所があるんだ」と感じられるようになるかもしれません。

きょうだいは、親よりもはるかに長い時間、障害や病気を持つ兄弟姉妹と過ごすことになります。ともに育ったからこそ分かち合える喜びもあります。

子どもには何よりも「愛情にあふれた安心できる場所」が必要です。親がフラットにかかわりあえる関係性をしっかり築き、幸せに支え合う明日を目指しましょう。

みんなのコメント
  • 名無しさん

    私もきょうだいです。
    全てその通りだと思いました。
    今まで漠然としていたモヤモヤが代弁されていて涙が出そうでした。
    私は大人になって子供を持ってもまだ生きづらさを抱えたままです。
    どうか、そんなきょうだいが一人でも減って、健やかに育ってくれる事を願うばかりです。

  • 山野さん

    私は、障害や病気もほとんどないほぼ健常者ですが
    なるほどなと思いましたわ。

  • 私は大丈夫よ。さん

    私もきょうだいです。
    障がいの状況はそれぞれ違うけれども、きょうだいとして抱え続けてきた複雑な責任や怒りや不満などの気持ちの共感はしてもらい難く、辛い気持ちを話しても分かってもらません。優しく支援するきょうだいの役割を求められ、自分もそうしなければと感じ、優しく出来ない時は、障がいもっている人に優しく出来ない自分を責めてしまいます。
    母は、障がいを持っている姉にも、そしてきょうだいである私にも、関心を持っている様には感じられませんでした。育った時代もあるのでしょうけれども。

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