流産・早産の原因にも!絨毛膜羊膜炎の原因・症状と治療法

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2017/08/30

絨毛膜羊膜炎にかかっている妊婦さん

妊婦になると怖いと感じる流産や早産ですが、妊娠12週以降の流産・早産の主な原因として挙げられるのが絨毛膜羊膜炎です。

切迫流産や切迫早産で入院する人の多くに絨毛膜羊膜炎の症状が発見されています。絨毛膜羊膜炎とは、どんな病気なのでしょうか?

絨毛膜羊膜炎の原因・症状と治療法について説明します。

絨毛膜羊膜炎の原因は膣の細菌感染からの上行感染

妊娠12週以降の後期流産・早産の主な原因の一つとして挙げられるのが、絨毛膜羊膜炎です。28週未満の流早産の原因の60%以上が、細菌性絨毛膜羊膜炎とみられています。

最近では羊膜感染と呼ばれています。

絨毛膜羊膜炎は細菌感染により、赤ちゃんを包み込んでいる絨毛膜羊膜に炎症が起きた状態を言います。

絨毛膜羊膜に炎症が起きた状態のイラスト

絨毛膜羊膜炎になると羊水やへその緒などが感染し、最終的に胎児に感染すると、出産後、赤ちゃんの障害の原因になる恐れがあります。

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絨毛膜羊膜が細菌感染してしまう理由

正常な状態であれば、膣内は酸性(乳酸菌などの働き)の状態を保っていて、悪玉菌の繁殖を防いでくれています。

膣炎からの上行感染
膣炎→子宮頸管炎→絨毛膜羊膜炎になるケースが多く、細菌自体は膣内の常在している菌ですが、何らかの原因で悪玉菌が繁殖すると炎症がおこることがあります。

  1. 膣内の酸性の状態が維持されなくなる
  2. 悪玉菌が増えて細菌性の膣炎を起こす
  3. 炎症部分が増えて、絨毛膜羊膜まで達する
  4. 絨毛膜羊膜炎が起こる

それ以外の感染経路の一つとして、歯周病も挙げられています。

歯周病が原因になる場合も
妊婦の歯肉炎は早産の原因として挙げられており、歯周病菌が血液を通って全身を巡り、絨毛膜羊膜に感染し炎症を起こしている可能性があるという指摘もあります。
絨毛膜羊膜炎は妊娠中期から掛かりやすいですが、妊娠初期からの膣炎や子宮頸管炎を起こしている可能性もあります。

絨毛膜羊膜炎の原因菌は?ウレアプラズマ細菌について

絨毛膜羊膜炎の原因菌の代表的な細菌として、下記が挙げられます。

  • B群溶連菌(GBS)
  • ガードネラ菌
  • バクテロイデス
  • マイコプラズマ・ホミニス
  • ウレアプラズマ

絨毛膜羊膜炎の原因菌の一つとして挙げられるウレアプラズマは、マイコプラズマ科の細菌で、マイコプラズマ科の細菌は、細菌の中でも最も小さな生物です。

多くの場合は、細菌感染が見られると羊水が混濁するのですが、ウレアプラズマが原因の場合は羊水混濁が見られず、普通の病理検査では発見されません。

大阪母子医療センターは、「センター内の症例から見ると、疫学的にウレアプラズマが流早産に起因する最も多い微生物と考えられる」としています。

また、最近はマイコプラズマ科の病原体と他の細菌が一緒に感染することで重症化に至ることが分かってきています。

膣内の自然のバリアを正常化または強化し、ウレアプラズマ細菌などの増殖を防ぐことで、流早産を経験した女性も次の妊娠では、出産に至ることが期待できます。

絨毛膜羊膜炎の原因になる悪玉菌が増える要因

絨毛膜羊膜炎の原因になる悪玉菌が増えるのには、下記の要因が考えられます。

  • ストレス・体力・免疫力の低下
  • 歯肉炎
  • 妊娠中の性行為
  • 膣内の過度の洗浄

通常、膣内は乳酸菌によるバリアで酸性度を保つことにより、外部からの細菌や微生物の侵入や繁殖を防ぐことが出来ます。

ストレスや不規則な生活などで体力・免疫力が低下することで、膣内に悪玉菌が増えて正常に保つ作用が阻害されます。

また、精液の中には炎症を促す作用がある物質が多く含まれているため、妊娠中のコンドームなしでの性行為で感染が拡大する可能性もあります。

最近では便座シャワーなどの普及で、膣部の洗浄をする回数が増えてきています。過度の洗浄により善玉菌も洗い流され、悪玉菌が増えるきっかけになるという指摘もあります。

おりもの専用シートなどで、通気性の悪い状態が続くと、菌が繁殖しやすくなるため、妊娠中の使用は避けた方が良さそうです。

歯周病がある場合は治療をし、妊娠中の性行為がOKとされていてもコンドームを使用するなど、絨毛膜羊膜炎の起因となることを減らすことが大切です。

どうして絨毛膜羊膜炎が流早産に繋がるのか

絨毛膜羊膜炎は流早産の原因になっていますが、なぜ 絨毛膜羊膜炎が流早産に繋がるのかをお話しします。

炎症性サイトカインにより子宮頸管の熟化が起きる

絨毛膜羊膜まで到達した細菌が、エンドトキシンという物質を作り出すと、炎症細胞(マクロファージなど)に作用し、炎症性サイトカインという物質の産生を促します。

炎症性サイトカインは、子宮頸管の熟化と子宮収縮に作用し早産を誘発します。

子宮頸管の熟化とは
妊娠中は赤ちゃんを外に出さないために、子宮頸管の強度は強くなっています。分娩する時は子宮頸管が柔らかくなって、赤ちゃんを外に出す準備を始めることを言います。

好中球や単球により卵膜が破壊されることが前期破水の原因になる

炎症した箇所には白血球(好中球や単球)が集まってきて、炎症の原因菌を退治しようとしますが、この時に卵膜を破壊してしまうことがあります。

好中球が活性化するとエラスターゼという物質を放出しますが、このエラスターゼはコラーゲンを分解する性質を持っています。

卵膜や子宮頸管はコラーゲン組織で出来ているため、エラスターゼが放出されると、薄くなってしまい前期破水の原因になります。

プロスタグランジンにより子宮収縮が促される

細菌感染は胎児の視床下部から、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンの分泌を促します。そうすると胎児副腎皮質からのコルチゾールというホルモンが増加します。

コルチゾールが増加し、絨毛膜羊膜からプロスタグランジンという物質の産生を刺激することが、流早産に繋がります。

細菌感染から赤ちゃんを守るためのしくみ

絨毛膜羊膜炎を発症すると、ママの体を守るために子宮内の感染源を除去しようとするしくみにより、流早産が起こるとされています。

絨毛膜羊膜炎の場合は感染に対しての治療が必要で、早産のみを防止すると、お腹の中で赤ちゃんが細菌感染し、重篤な障害を残してしまう可能性があります。

細菌感染によって流早産が引き起こされるのは、赤ちゃん自体を細菌感染させないために起きているしくみとも考えられています。

早期発見が大切!不顕性と顕性の絨毛膜羊膜炎の症状

絨毛膜羊膜炎は妊娠中に診断を確定することが出来ず、分娩後に胎盤の病理検査を行うことで診断が確定されます。

そのため、妊娠中は「絨毛膜羊膜炎の疑いがあるかどうか」の診断となります。

絨毛膜羊膜炎になる前、膣炎・子宮頸管炎などの状態の時に気付くことは、流早産のリスクを減らすことに繋がります。

絨毛膜羊膜炎は、症状があまり現れない不顕性と、症状がはっきり現れる顕性に分けられます。

不顕性の時点で発見・治療できれば進行を防ぐことが出来る

絨毛膜羊膜炎は症状があまり現れていない不顕性の時点で発見することが大切です。

  • 軽度のお腹の張り(軽度の子宮収縮)
  • 内診で子宮頸管の短縮が確認される
  • いつもと違うおりもの(生臭い魚のような匂い、灰色掛かった色、量が多いなど)

絨毛膜羊膜炎は、妊娠初期からの細菌性膣炎が原因となっていることが多いため、膣内の分泌物や粘液の検査を行います。

早産マーカー(顆粒エラスターゼやCAMマーカー・膣炎マーカーなど)を使用した検査は、顕性の絨毛膜羊膜炎に進行する前に発見する方法として、有効とされています。

この時点で絨毛膜羊膜炎の診断確定はされませんが、細菌性膣炎や頸管炎を早期に治療することで、顕性の絨毛膜羊膜炎になるのを防ぐことが出来ます。

顕性の絨毛膜羊膜炎は進行を止めるのは難しい

顕性の絨毛膜羊膜炎の診断基準は下記になります。

ママ自身が38℃以上の発熱があり下記に1つでも当てはまる場合
  • 母体の脈拍が1分間に100以上ある
  • お腹のきしむような痛み
  • おりものからの悪臭(魚の腐ったような匂い)
  • 白血球が15,000/μL以上

発熱が無くても全ての項目に当てはまる場合は、顕性の絨毛膜羊膜炎が疑われます。強く感じていた赤ちゃんの胎動が弱くなった時にも注意が必要です。

顕性の場合は治療をしても防ぐことが難しく、1週間以内に流早産になる可能性が高いですが、少しでも症状に気付いたら医療機関を受診しましょう。

絨毛膜羊膜炎の治療法はケースバイケース

絨毛膜羊膜炎が疑われる場合は、赤ちゃんと母体のバイタルサイン(体温、脈拍、赤ちゃんの心拍数など)を調べ、妊娠週数や状態により治療方針を決めていきます。

不顕性の絨毛膜羊膜炎の場合は抗菌剤などの投与しながら、安静にして炎症の広がりを抑えていきます。

顕性の絨毛膜羊膜炎の場合の処置
  • 34週以降…分娩させる方法がとられる
  • 34週未満…赤ちゃんの成長と子宮の状態を確認しながら治療が行われる。
抗菌剤(抗生剤など)の投与
絨毛膜羊膜炎が疑れる場合は、細菌感染を取り除くことが大切です。そのため、膣内の分泌物を培養検査に出し、抗菌剤を投与します。
ウリナスタチン(ミラクリッド)の投与
ウリナスタチン(炎症を抑える効果のある薬剤)を膣内に投与することで、子宮頸管の熟化を抑える効果が期待できます。

副腎ステロイドと子宮収縮抑制剤の投与
副腎ステロイドは妊娠末期の妊婦に投与することで、赤ちゃんの肺を成熟させることが分かっています。新生児の呼吸窮迫症候群(RDS)を予防するのに有効とされてます。

副腎ステロイドの効果は最低でも48時間が必要になるため、子宮収縮がある場合は子宮収縮抑制剤が投与されます。

子宮内環境の管理
子宮内感染についても、精密検査と赤ちゃんの状態を頻繁に確認しながら、子宮内の環境の悪化が見られる場合は、分娩の検討が行われます。
絨毛膜羊膜炎の可能性がある場合は、医師の指示に従い投与された薬の使用と、炎症を抑えるために安静にしておくことが大切です。

妊娠中に無理は禁物!流早産リスクを減らし赤ちゃんを守る

絨毛膜羊膜炎は赤ちゃんへの感染リスク、流早産のリスクが高い病気です。妊娠中の歯周病、細菌性膣炎などの要因を取り除くことが大切です。

妊娠中はただでさえ、免疫力が低下しがちになります。忙しい仕事を抱えて居たり、子供の世話などあると、なかなか休めないものですよね。

それでも、絨毛膜羊膜炎になると赤ちゃんの命が危険に晒されてしまうため、妊娠中は極力ゆったりと生活しましょう。

睡眠・食事をきちんととり、疲れたと感じた時はゆっくり体を休めて、ご自分と赤ちゃんのことを優先することで、絨毛膜羊膜炎のリスクを減らすことが出来ます。
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