何が原因なの?不育症になってしまうリスク因子
流産は一度経験するだけでも辛い思いをしてしまうものですが、何度も流早産を繰り返してしまうと次に妊娠するのが怖くなることもあります。
流産を繰り返してしまう不育症になってしまった原因を知ることで、将来的に子供を持てる可能性があがってきます。
不育症となるのにはどんな原因があるのでしょうか?不育症の原因と考えられるリスク因子について説明します。
この記事の目次
【子宮形態異常】流早産しやすい子宮の形の場合も
子宮の外形は前後に引き伸ばした洋ナシを逆さまにしたような形になっていて、内側は三角形になっているのが一般的です。
子宮は胎児期の早い時期に2つの管状の臓器が一つに合わさって作られますが、融合が上手くいかずに、子宮形態異常(子宮奇形)になってしまうことがあります。
子宮奇形は成人女性の3.8~6.7%程度いるとされていますが、その殆どが無症状です。
子宮奇形の他には子宮筋腫などによって、子宮内腔が狭くなっていることも不育症の原因としてあげられます。
子宮奇形だと不育症になりやすいのはどうしてか
子宮奇形は自覚症状がなく、ブライダルチェックや妊娠した時に初めて知らされることが多くなります。
不育症の方の子宮奇形の割合は約13%で、不育症でない方の約3倍とされています。
- 子宮奇形が不育症になりやすい理由
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- 赤ちゃんが育つ部屋(子宮腔)が小さい
- 赤ちゃんに栄養が運ばれにくい
- 中隔子宮などは中隔の血流が悪く着床しても定着しにくい
- 子宮頸管無力症になりやすい
子宮形態異常にはどんな種類があるのか
子宮奇形には下記のような種類があります。
- 重複子宮
- 独立した子宮が2つあり、子宮口も膣も二つ存在している状態です。不妊症や習慣流産になる要因とされています。
- 双頸双角子宮
- 子宮内腔が二つあり、子宮口も二つあり膣はひとつの状態です。不妊症や習慣流産になりやすいです。
- 単頸双角子宮
- 子宮がハート型をしていて、子宮内腔にしきりが出来かけた状態で膣は一つです。不妊症や習慣流産になりやすいです。
- 中隔子宮
- 子宮の中が二つに分かれている状態です。不育症の原因として一番多いです。
- 弓状子宮
- 子宮の部屋の上の部分が弓のようにくぼんでいる状態です。不妊症や不育症の原因になることはあまりありません。
- 単角子宮
- 子宮の部屋を二つ作りかけて、片方の子宮が出来上がっていない状態です。出来上がっていない側の卵管は子宮と繋がっていないことが多いです。
子宮が通常より小さく流早産の原因になりやすいです。
【甲状腺機能低下症】甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値が高い
甲状腺ホルモンが低下すると、下垂体のTSH放出ホルモン(TRH)を刺激し、甲状腺刺激ホルモンとプロラクチンの分泌を促します。
その結果、プロラクチンの値が高くなり、プロラクチンには排卵を抑制する作用や、着床を阻害する作用があるため、不妊症や流産の原因にもなります。
同じ内分泌系異常の中で「黄体機能不全」「高プロラクチン血症」は、不育症より不妊症の要因として挙げられています。
最近は不育症患者に黄体機能不全が多く見られることや、プロラクチン血症が妊娠維持に不利な免疫状態に誘導していることがわかり、流産に関与していると考えられています。
甲状腺ホルモン低下症でも症状がない場合もある
甲状腺機能低下症には「顕性甲状腺ホルモン低下症」と「潜在性甲状腺機能低下症」があります。
甲状腺刺激ホルモンの値が2.5以上あると流早産する確率が高くなります。
日常生活に支障がない程度の軽い甲状腺ホルモン低下症(潜在性甲状腺機能低下症)が、不育症の原因になっている場合もあります。
- 潜在性甲状腺機能低下症
- 甲状腺ホルモン(FT3、FT4)の値は正常なのに、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値が高く、症状が表れない程度の軽い甲状腺ホルモン低下症のことを言います。
- 顕性甲状腺ホルモン低下症
- 倦怠感や眠気、記憶障害など、様々な体の機能が低下していて症状がはっきり出ているものです。甲状腺ホルモンの値が低く、甲状腺刺激ホルモンの値は高い状態です。
夫婦どちらかの染色体異常がある場合の染色体異常率は高い
夫婦どちらかに均衡型転座などの染色体異常があった場合、赤ちゃんが染色体異常になる確率があがり、流早産を繰り返す原因になる場合もあります。
均衡型転座を起こしている本人は、何の問題もなく健康で、染色体異常を起こしていることに気が付いていない場合がほとんどです。
夫婦どちらかに均衡型転座がある場合、理論上では16種類の組み合わせができ、流産しにくい組み合わせはそのうちの2種類になります。(着床前診断ネットワークより)
最終的に赤ちゃんを授かることができても、流早産を繰り返すのは辛いため、体外受精児に着床前診断を受ける方もいます。
【血液凝固異常】自己免疫疾患が要因になっている可能性も
不育症の原因の一つと考えられているのは、抗リン脂質異常、プロテインS欠乏症、プロテインC欠乏症など血液凝固異常です。
ただし、抗リン脂質抗体症候群以外の、血液凝固異常が不育症と関連しているという明確なエビデンスは現在のところありません。
【抗リン脂質抗体症候群】自己免疫疾患の一つ
抗リン脂質抗体症候群は血液中に抗リン脂質抗体(APA)を持ち、動静脈の血栓や不育症、血小板減少などの症状が表れる自己免疫疾患の一つです。
- 抗リン脂質抗体
- 細胞膜を構成しているリン脂質に対する抗体ですが、厳密にはリン脂質そのものにではなく、リン脂質に結合する血漿タンパクに対する抗体であることが分かっています。
- 自己免疫疾患
- 本来は外から入ってきた異物から体を守るための機能が、自分の細胞やたんぱく質などを異物と勘違いして攻撃したり、排除しようとしたりすることを言います。
抗リン脂質抗体症候群で流早産が起こる理由
抗リン脂質抗体症候群では妊娠12週までにおきる初期流産よりも、妊娠12週以降の死産によるものが多いです。
今までは、抗リン脂質抗体症候群は血栓が出来やすい状態のため、胎盤に血栓ができることが流早産の理由と考えられていました。
流早産した妊婦の胎盤に血栓が出来ていない場合もあることが分かり、現在は、胎盤をつくる絨毛細胞(トロホブラスト)に障害がおこるためと考えられています。
【血液凝固異常】プロテインS欠乏症やプロテインC欠乏症
プロテインS欠乏症やプロテインC欠乏症は、子宮内の血流が悪くなるため、流早産の原因になっていると考えられています。
- プロテインS・プロテインC欠乏症
- 血栓を防ぐための物質プロテインSやプロテインCが減少しているため、血栓が出来やすい状態になっています。
妊娠中はプロテインSが欠乏しやすく、プロテインSが正常値を下回っている場合は治療が必要になる場合もあります。
プロテインSの治療方針は病院によって分かれています。
非妊娠時にプロテインS活性が100%あっても、妊娠時は50%に減少します。非妊娠時にプロテインS活性が60%未満不育症患者では流産率が高かったとのデータがあります。
妊娠中はプロテインS活性が30%以上あれば正常とされていますが、どの時点で治療が必要かというのは専門家によって議論されています。
抗リン脂質抗体以外の血液凝固異常について
抗リン脂質抗体以外の血液凝固異常は、不育症の原因とはっきり断言もできないけど、原因ではないとも言い切れず専門家よって意見が分かれているのが現状です。
- プロテインS欠乏は抗リン脂質抗体症候群の場合が多い
- 抗リン脂質抗体症候群の人は、プロテインSが欠乏することが多いため、プロテインS欠乏症が、抗リン脂質抗体症候群に関与していると考えられています。
プロテインS欠乏自体が不育症の原因ではなく、抗リン脂質抗体症候群が原因でプロテインS欠乏を引き起こしているために、不育症になっているのではという意見もあります。
- 第Ⅻ因子欠乏症でも出産できた事例
- 第Ⅻ因子欠乏症も不育症の原因と考えらていましたが、2001年の浜松医科大学産婦人科チーム報告では、凝固第Ⅻ因子がなくても不育症にはならないとされています。
その理由は凝固第Ⅻ因子が生まれつきない女性が、4回妊娠し3回出産に分娩に成功しているからです。
凝固Ⅻ因子の欠乏自体が不育症のリスク因子ではなく、凝固Ⅻ因子活性を下げる自己抗体が不育症の原因物質になっているのでは…と、結論付けられています。
とはいえ、血液凝固異常は血流が悪くなり、血栓ができやすくなるため、妊娠中のハイリスクな状況として管理していく必要はあるため、医師の指示に従って治療しましょう。
【流産のストレス】偶発的に起こる流産が起因の場合も
偶発的な流産を経験する人は多いのですが、流産を経験したストレスが要因となって、不育症になっている可能性もあります。
- ストレスが引き起こす体の状態
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- アドレナリン上昇による血行不良…赤ちゃんへ栄養が行きにくくなる
- プロラクチン上昇により卵巣機能低下…黄体ホルモン分泌低下
一度流産を経験してしまうと、次も流産になるのではと不安を覚えてしまいます。
「子供はまだなの?」「早く産んだ方が良いよ?」など、周りからのプレッシャーがストレスになる場合もあります。
▼流産後の悲しみの手放し方についてはコチラも参考にしてみて!
不育症の要因は一つではない!正しく原因を知ることが大切
不育症の要因となるものをあげましたが、要因一つだけで不育症になっている人よりは、複数の要因が絡み合って不育症になっている人が多いです。
不育症の原因は約60%の人が不明とされており、赤ちゃんの染色体異常などの偶発的な流産や、まだ判明していない不育症の要因が存在する可能性もあります。
不育症については日々研究している機関があり、今 分かっていない原因が半年後、1年後に分かる可能性もあります。
不育症専門の医療機関に問い合わせれば、新しい情報も得られる可能性も高いです。
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