不育症と診断されても出産できる?原因に合わせた治療法や対処法

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2017/08/30

夫婦で不育症の治療を受けている様子

不育症の検査などで原因が分かった場合は、リスク因子を取り除くために、必要な処置をしていけば、無事に出産にいたる確率は上がっていきます。

不育症と診断されても赤ちゃんを産むことが、出来ないわけではありません。不育症の原因が特定された場合の、”原因”に合わせた対処法について説明します。

【子宮形態異常(子宮奇形)】手術が必要か慎重に判断

子宮形態異常の人は、胎児の染色体が正常な状態の場合で流産することがあると分かっており、子宮奇形や子宮内腔に影響を及ぼす子宮筋腫は、不育症の原因とされています。

子宮形態異常の治療は手術のみ

子宮形態異常の場合は投薬での治療は行われません。治療は手術のみとなりますが、手術が明らかに有効ということは今のところ証明されていません。

手術をしない場合でも医師の指示に従い、安静にするなどの処置で無事に出産に至る場合もあります。

手術を必要とする状態
  • 不育症や不妊の原因が、子宮形態異常以外に考えられない場合
  • 生理時の激しい下腹部痛など、日常生活に支障をきたしている場合

弓状子宮では、手術を必要とする明確なエビデンスがないとされています。

子宮の形は人それぞれなので、治療や管理の仕方は違ってきます。そのため、検査を受けながら医師の話を聞き、方針を決めていくことが大切になってきます。

子宮奇形の手術の種類

手術の種類は主に4種類あります。

シュトラスマン(Strassmann)手術
主に軽度な双角子宮や弓状子宮に対して行われる子宮底形成術。子宮底部に横切開を入れて、縦方向に縫い合わせる手術
ジョンズ・ジョンズ(Jones & Jones)手術
主に高度な双角子宮や中隔子宮に対して行われる中隔除去手術。子宮底部に縦切開を入れ中隔を除去する手術
トンプキンス(Tompkins)手術
主に中隔子宮に対して行われる。子宮底部の真ん中に縦切開を入れて、子宮内腔に出ている中隔部分を切除する手術
子宮鏡下中隔切除術
先端に電気メスがついている子宮内視鏡を使用して、モニターで子宮内腔を確認しながら、子宮を二つに隔てている中隔を切り取る方法
開腹手術はお腹に傷が残り、体の回復にも時間が掛かるため、最近は子宮鏡下手術や腹腔鏡下手術により手術が行われることが多いです。

中隔子宮では手術が選択されることが多い

中隔子宮は、子宮の中が中隔により二つに隔てられている状態を言います。子宮奇形の中では、最も流早産の確率が高いと言われています。

その理由としては、中隔部分に着床した場合は血流が乏しいため、赤ちゃんが育ちにくい環境と言えるからです。

中隔子宮でも出産まで至るケースも多く、手術が本当に必要なのかどうか内診や経腟超音波、骨盤MRI等を用いて必要な検査を行ったあとに、慎重に判断する必要があります。

メリット
お腹に傷をつけることもなく、術後の回復も早いのがメリットです。入院日数も二日程度で終わります。
デメリット
1回の手術で終わらない場合があります。子宮穿孔・出血・子宮内感染・子宮腔内癒着水中毒になるなどの可能性があります。
中隔子宮の場合は、主に子宮鏡下中隔切除術で行われますが、状況によっては開腹手術や、腹腔鏡下手術を勧められることもあります。

【甲状腺ホルモン分泌異常】甲状腺ホルモン分泌量を調整

甲状腺ホルモンの値は正常で甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値が高い場合を「潜在性甲状腺機能低下症」と言い、不育症の原因の一つとされています。

甲状腺ホルモン補充療法により、甲状腺刺激ホルモンの分泌を下げる方法が取られています。

甲状腺刺激ホルモンの値は、2.5までが望ましいとされています。

また、甲状腺ホルモン亢進症も流産の原因になっており、低下症とは逆に甲状腺ホルモンの分泌を抑える薬が処方されます。

甲状腺機能に異常が見つかった場合、甲状腺から分泌されるホルモンの量を調整するなど、十分に治療してから妊娠・出産に望むことが大切です。

【夫婦どちらかの染色体異常】遺伝カウンセリングや着床前診断

夫婦どちらかが染色体均衡型転座を起こしている場合は、本人は健康な状態のため、染色体異常には気が付いていないことが殆どです。

染色体異常を治療する方法はない

現状、染色体異常が見つかっても、染色体異常自体を治療する方法はありません。

染色体異常については検査を受ける前から、しっかりとした遺伝カウンセリングを受けることが推奨されています。

均衡型転座を起こしている場合でも、60~80%が最終的に出産まで至ることが分かっていますが、何度も流早産を繰り返すのは心身ともに負担が大きくなります。

着床前診断という選択肢

染色体異常による流産を防止するために、体外受精の胚を着床前診断して、染色体異常のない胚を移植するという選択肢もあります。

均衡型転座保因者の習慣流産の場合の着床前診断を、日本産科婦人科学会は2006年から容認しています。

但し、現在のところ「着床前診断を行った方が自然妊娠より生児獲得率が高くなるというエビデンスはない」としています。
(「厚労研究班の研究成果を基にした不育症管理に関する提言」により)

着床前診断の是非は医師によっても見解が分かれいて、カウンセリングや倫理的な説明ができる施設でないと生命の選別など、なし崩し的になるのでは?との懸念の声もあります。

着床前診断は保険適用外となるため、費用が高額(50万円~100万円くらい)になってしまう場合があります。

流産を繰り返してしまう身体的・精神的負担は計り知れません。遺伝カウンセリングや費用面などを十分に確認することが大切です。

【自己免疫疾患と血液凝固異常】血栓予防と免疫の働きを正常に戻す治療

抗リン脂質抗体などの自己免疫疾患や凝固因子異常には、主に下記の4つの治療方法があります。

低用量アスピリン療法
バファリン81mg、バイアスピリン100mgなどの低用量アスピリンを服用することで血栓を防ぎます。妊娠前の高温期から医師の指示に従い服用します。
ヘパリン療法
血栓を防ぐ目的で妊娠反応がでてからすぐに、12時間ごとにヘパリンの皮下注射を打ちます。
夫リンパ球免疫療法
免疫学的に似ている夫婦に起こりやすい同種免疫異常の治療のために行われます。夫の血液中のリンパ球を妻に注射する方法です。

抗リン脂質抗体などがある場合は病態を悪化させることもある、夫の血液による感染症、有効性を疑問視する研究があるなどの理由から、慎重に対応されています。

球免疫療法
同種免疫異常の治療に行われる新しい治療法です。免疫賦活剤ピシバニールを摂取することでNK細胞の活性を正常化、受精卵の夫由来部分への免疫反応を正常に調節します。
治療の方法は自己免疫異常や血液凝固異常の状態によって異なります。医師の指示に従って治療していくことが大事です。

【流産のストレス】カウンセリングにより不安を取り除く

不育症の検査を受けても原因不明な場合が60%以上も存在しています。

不育症患者の17.4%に抑うつ、不安障害が認められ、適切なカウンセリングにより改善したという報告もあります。

厚生労働省研究班の報告によると流産回数が2回の場合は、流産リスクの有無にかかわらず、カウンセリングを受けることで次回の成功率が高くなるとしています。

一度流産をすると次も流産してしまうかも…という不安からうつ状態になり、ホルモンバランスを崩してしまうことも考えられます。

どこに相談すれば良いのか分からない場合は、厚生労働省のホームページに全国の不育症相談窓口が載っているので、そこに連絡して相談してみることをお勧めします。

不育症専門の医師や臨床心理士によるカウンセリングを受けて不安を取り除くことで、ストレスを軽減でき、妊娠・出産につながることも多いです。

▼流産の悲しみだけを手放す方法についてはコチラも参考にしてみて!

研究段階の治療法も多い!何もしなくても妊娠継続の可能性も

不育症と診断されても検査を受け、治療することで最終的に出産できる確率は高いです。

不育症の原因が複数存在する可能性もあるので、治療を受ける場合は他の可能性がないかなど、十分に検査を受けた後で治療を進めていくことも大切です。

研究段階の治療法も多く、治療にかかる費用が高くなる場合もあります。

それでも、今までは赤ちゃんを諦めなければいけなかった状況でも、治療により出産できるようになった、カウンセリングのみで状況が改善した、という事例も多くあります。

不育症の検査と適切な治療・カウンセリングを受けながら、十分な睡眠と栄養をとり、いつでも赤ちゃんを迎えられる準備をしておくことも大事です。

▼不育症の検査や費用についてはコチラも参考にしてみて!

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