自閉症の子に使う絵カードのメリットや使い方、注意点
自閉症や発達障害を持つ子どもたちは、目に見えないことを言葉だけで伝えても先の見通しを立てることが苦手なので、癇癪を起したりパニックになってしまうことがあります。
絵カードは、障害を持つ子どもと親のコミュニケーションツールとして有効で、我が子の特性に合わせて手作りすることもできます。
この記事では、自閉症の子に使う絵カードのメリットや種類、使い方や注意点を紹介します。
自閉症の子どもの生活を支援する絵カードのメリット
上記の画像は筆者の息子が通う支援学校で作られたスケジュール式絵カードです。
この時は1泊2日の宿泊体験があったので冊子になっていますが、1日のスケジュール写真と絵が載っているので、次に何をするのかわかりやすくなります。
このように、説明をして理解が難しい子どもたちは絵や写真があるだけで見通しが立てやすく、初めて行く場所やいつもと違う行動をするときも不安を減らすことができます。
筆者の子どもは中学生なのでスケジュール式絵カードでも大丈夫でしたが、年齢が低い子どもさんの場合は、1つ1つイラストを描いたカードを提示すると分かりやすいと思います。
【絵カードのメリット】
- 見ることで不安や恐怖を減らせる
- 次にすることの確認ができる
- 子ども自身も絵カードで伝えることができる
不安や恐怖を減らす以外にも、コミュニケーションをとるのが苦手な自閉症児に「食べたいもの」や「やりたいこと」の気持ちの絵カードを並べて、指さしで教えてもらうコミュニケーション方法もあります。
絵カードの大まかな種類
絵カードには大まかに、「指示」「手順」「スケジュール」と種類がありますが、とくに様式も決まっていないので、お子さんの年齢や特性に合わせた絵カードを手作りし、使い分けてるママもいます。
予め決まった絵カードより、普段見慣れているママのイラストが伝わりやすかったり、我が子に合わせた絵カードを作るほうが効率的、ということもありそうですね。
①生活に必要な「指示カード」
指示カードは、日常の「ごはん」や「はみがき」「お風呂」など、子どもにやってほしい行動を伝えるカードです。
年齢が小さい子どもさんの場合、言葉をかけながらイラストのみのカードを見せて使ったりもしますが、高学年になると絵カードに文字を入れて、次の動作も一緒に考えたりもします。
毎日することなので、例えば「はみがき」の絵カードだったら自分から洗面所に行く→歯ブラシを持つ、などです。
②やり方を教える「手順カード」
生活から学習まで、様々な場面で使える手順カード。次にやることが分かるので不安を減らすことができます。
息子が小学生のときはやり方の手順だけでなく、学習やスポーツ面で「失敗したときはどうするのか」「負けたときはどうしたらいいのか」心の持ち方も一緒にカードに書きました。
その他、時間割や持ち物の確認、生活面で必要な「友達との関わり方」「お金の使い方」「公共の場での過ごし方」もどのようにするのか、手順カードで伝えるとわかりやすくなります。
③見通ししやすい「スケジュールカード」
1日の予定に順番をつけて、流れを把握しやすくするためのカードです。スケジュール式は番号をふって短い文章でスケジュールと絵を書きます。
しかし、この方法は情報がたくさん目に映ってしまうので自閉症の子供たちはうまく進めることができません。
スケジュール式では、1つ終わったらカードを裏返す、または終わったところに目印となる磁石を置いて1つずつクリアしたことを視覚で分かるように提示させていきます。
絵カードを使うときのポイント
筆者の息子が絵カードを使い始めたのは小学校の低学年で、朝の身支度と次の日の準備を定着させるためでした。
スケジュール式に、「家に帰ってからすること」と「朝の身支度」の絵カードをボードに貼り、終わったら裏返しにする、というやり方です。
失敗しても、1週間頑張ってできたらご褒美を出す「ご褒美作戦」も一緒に実行していました。
低学年のうちは身支度と家に帰ってからすることを目標にしていましたが、目標がクリアすれば新しいことに変えていきました。
初めから全てがうまくいっておらず、絵カードを使う時はいくつかポイントがあることが分かりました。
絵カードを使うときは親が近くで見守る
お子さんの年齢や特性によって違いますが、絵カードを使ってやってほしいときに、忙しい時間帯だと1人でさせようとしてしまいがちです。
忙しくてもまずは一旦手を止めて、必ず子どもの近くでやってほしいことを見守ります。親が見ていないと子どもは何をやっていいか分からず、後でバタバタするハメに。
うまくできないときは声かけをする
1つの動作ができるように、親は近くで見守りながら定着させていきます。もちろん、うまくいかない、やり方が分からないこともあります。
そんな時はカードを見せるだけでなく、声をかけながら教えてあげましょう。うまくお話ができない自閉症の子も、ただ絵カードを見せられて行うより、声をかけてもらいながらのほうが安心します。
何かできたら必ず褒める
何か1つでもできたら必ず褒めてあげます。いつもできていることでも、その日の体調や機嫌によってできなくなってしまうことがあります。
障害のある子どもたちは、1つ1つクリアしていくのにとても時間がかかります。
もちろん、毎日がんばった後はご褒美作戦も有効です。
失敗したら無理にさせず落ち着かせる
障害を持つ子どもさんはその日の体調や気分によってできないことがあります。筆者の子供も学校に帰ってきてはイライラして癇癪を起こし、全くできない日もありました。
息子のスイッチが入ると誰も止めることができません。そんな日は、落ち着かせるのを優先し好きなことをさせるのが一番です。
「毎日できるほうが珍しい」と言い聞かせながら、できるときは繰り返し絵カードを見せ、できないときは何もやらないほうが親も落ち着きます。
絵カードを使うときの注意点
絵カードと言っても、写真やイラスト、カラーやモノクロまでさまざまです。我が子に合った絵カードを使えるのが一番ですが、子どもが普段使っているものをカードにすると理解がしやすくなります。
そしてカードは、いつも同じ場所に置いておきます。例えば、靴を揃えてほしいなら玄関にカードを置いておきます。
また、カードのイラストや写真の意味を理解していないと活用することが難しくなります。絵カードを使う前は子どもさんに確認するようにします。
【絵カードを使う時の注意点】
- 子どもが普段使っている物をカードにする
- カードはいつも同じ場所に置いておく
- 絵カードを使う前は理解しているか見せて確認する
絵カードは手作り派?購入派?グッズ紹介と作り方
絵カードの購入キッドを使う人から手作りする人まで様々ですが、家にパソコンとプリンタ、必要な文房具さえあればかんたんに作成が可能です。
【おすすめ素材集】
ドロップス | 視覚支援のためのスケジュール、絵カード、学習用素材、 |
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ちびむすドリル | イラストから学習、知育遊びまで幼児から小学生向けの素材集 |
絵カードを作る派
絵カードを作るステップは以下の通りです。
- イラスト・画像の素材集め
- イラスト・画像の加工(無料ソフト・ワードなどで)
- 絵カードのプリントアウト
- 絵カードの整形
手間はかかってしまいますが、私が実際作った一番かんたんな方法です。
- ラミネートフィルム数枚
- セロテープ
- マグネットテープ
- ホワイトボード
- 1.イラスト・画像の素材集め
- 必要なイラストや画像を集めます。パソコン上で無料ダウンロードできるのもから、スマホで撮った写真をそのまま使うこともできます。
- 2.無料ソフト・オフィス系(ワード・エクセル)を使って加工
- 無料ソフトの(ラベル屋さん)やオフィス系ソフトを使い、大きさや形を決めたり文字を配置していきます。
- 3.絵カードのプリントアウト
- 絵カードを印刷していきます。もし、自宅にプリンタがなければUSBにデータさえ保存すればコンビニやカメラ屋さんでも印刷することができます。
- 4.絵カードの整形
- 絵カードをハサミで切ったら、ラミネートフィルムに絵カードを挟みセロテープで止めます。後ろはマグネットテープを貼りつけ、ホワイトボードに並べていけば完成です。
100円ショップ「セリア」の幼児教材を使う
100円ショップのセリアの幼児コーナーに「知育カード」が販売されてます。この知育カードは絵と文字が書かれていて自閉症の子供にも使える絵カードとして話題になりました。
- あいさつ・ことば
- はんたいことば
- なにしてる?
- のりもの
寝る時間になったらあいさつカードの「おやすみ」を見せて寝る時間を教えます。外出時に持参して、時間があるときは「のりもの」や「なにしてるの?」を見せたりします。
100均の商品は売り切れになると次回の入荷が未定で廃盤になることも多く、パッケージも度々リニューアルします。もし見かけたら使ってみるといいですよ。
アプリの絵カードを使ってコミュニケーション
コミュニケーションが難しい子どものコミュニケーションをサポートするアプリが登場。意思表示からことばの学習にも使えます。
気持ちを伝える以外に、オリジナルカードも作ることができるので子どもに合ったカードを作ることができます。
えこみゅ | iPhone | 無料で200種類の絵カード全てに音声つき。好きな写真と録音で オリジナルカードが作成できる |
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やることカード | iPhone | やることを順序立ててシンプルに絵カードでスケジュール管理が できる。絵カードを並べて音声の読み上げにも対応 |
絵カードタイマー | iPhone | 絵カードに表示機能を付加。時間の把握が難しい自閉症の子供に 時間を視覚的に表示。 |
絵カードを使ってパニックやストレスを上手に和らげよう!
我が子の体験も踏まえながら、絵カードのメリットや使い方、注意点を紹介しました。
障害をもつ子どもたちは、1つ1つの出来事が未知との遭遇です。見通しの立たないスケジュールや、急な予定変更、新しい場所に行くことさえもストレスやパニックになってしまうことがあります。
年齢が上がれば少しずつできることは増えていきます。それでも、根気よく小さいうちから繰り返し教えていくことは大切です。
絵カードが合う合わないはお子さんによってありますが、有効なコミュニケーションツールとして今後の役に立てていきたいですね。
発達障害や自閉症の幼児の特性についてはこちらに詳しく載っています。