三つ子次男の虐待はなぜ起きた?多胎育児の悩みや支援について

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2019/06/28

2018年1月愛知県豊田市の母親が、生後11ヶ月の三つ子の次男を床に叩きつけて虐待死させたとして実刑判決を受けたニュースがありました。

母親は三つ子の育児で憔悴しきっており、うつ状態だったことが分かっているにも関わらず、判決では責任能力があったとされ執行猶予なしの懲役3年6ヶ月(求刑懲役6年)の実刑判決が言い渡されました。

この判決に、SNSでは子供を持つ親を中心に執行猶予付きの判決を求める署名活動が拡散されました。

このニュースから分かるように、子供を虐待死してしまうほど三つ子の育児に母親が精神的に追い詰められている状況、周りに助けを求められないほど過酷な状況だったことが分かります。

双子・三つ子…多胎児を持つ母親の悩み、ワンオペ育児や支援について紹介します。

事前に防ぐことができた事件ではなかったのか…三つ子の母の苦悩

このニュースでは「次男の泣き声にイライラし自宅の畳で次男を2回たたきつけ脳損傷により死なせた」とありました。

虐待死させた母親の当時の状況は「睡眠時間は1時間」「ミルクは1日24回」「次男は成長が遅く、よく泣き手がかかった」「産後鬱があった」と、かなり過酷な状況だったことが分かります。

実家の両親は飲食店を経営しておりほとんど頼ることができず、育児休暇を取得してくれた夫に対しても、育児のやり方に不満を持ってしまい次第に頼ることもなくなったようです。

保健師が訪問来所したときに子育てについて相談したところ「ファミリサポート」の利用を勧められましたが、事前面談に3人の子供を連れていけず断念しています。

実家も無理、夫のサポートも得られない、日頃から子育ての不安を行政に相談していたにも関わらず助けてもらえない、最悪な状況が重なって起きてしまったことが分かります。

虐待死は絶対に許されないことです。ですが、1人の子育てでも大変なのに一気に3人の子供の母親として1人で育てていくのはとても過酷です。

不妊治療で授かった三つ子は自己責任なのでしょうか?全ての歯車がかみ合わず最悪な事態が起きてしまったのではないか、こうなる前に止めることはできなかったのか、とても悔やんでなりません。

双子・三つ子・多胎児を持つママが抱える苦労や悩み

双子・三つ子・多胎児を持つ母親たちはこのニュースに対して「これは他人事ではない」と感じ、この母親を責めることができなかったと言います。

子供を持つ母親なら子育ての大変さは分かると思います。とくに、多胎児を育てるママたちはどういう苦労や悩みを抱えているのでしょうか。

三つ子の育児を例にとって紹介します。

母親の睡眠は1日1時間ほど

赤ちゃんが1人っ子であればお昼寝のときにママも一緒に寝ることができますが、双子・三つ子の場合は同じ時間に寝てくれることはほぼありません。

1人が寝ていても2人は起きている、という状況なので休むことなくママはずっと起きていることになります。

三つ子のママは睡眠時間があっても30分~1時間位しかとれないので、ほぼ毎日が睡眠不足な状態です。睡眠がとれない環境はストレスや産後鬱をひどく悪化させてしまいます。

ミルクは3人で24回、オムツ替えが1日に30回以上

0歳の赤ちゃんは2~4時間起きにミルクが必要なので、1人で8回飲むとすれば3人分で24回のミルクが必要ということになります。

3人とも同じ時間に飲めれば良いですが、1人は寝ていたり、1人はミルクの時間だったり、1人は機嫌が悪かったり状況もバラバラです。

また、3人分のオムツ替えが1日30回以上あります。ミルクを飲んだ後はうんちやおしっこをしやすくなるので赤ちゃんが泣いたら常におむつはチェックしている状況です。

出かけるだけで準備が大変

3人分のミルク、おむつ、おしりふき、着替え、タオルetc…考えただけで大荷物です。大きいバックに3人分の荷物を入れても1泊2日の旅行ができるくらいの量になります。

移動の際にはベビーカーや抱っこ紐の持参から、入れるお店のスペースや階段がないなどのリサーチも必要です。

3人の子供を連れてちょっと買い物に行くだけでも大変なのに、行政サポートを受けたくても準備や移動を考えると足が止まってしまうのも分かります。

1人が泣くとみんな泣いてしまう

赤ちゃんは1人が泣くとつられたようにみんな泣いてしまいます。やっと寝かしつけた~と思っても、1人が泣いただけで伝染したかのように泣いてしまいみんな起きてしまった…ということもあります。

寝かしつけをするときはおんぶやは抱っこをして30分以上たちっぱなし、ということもあるので赤ちゃんの寝かしつけはどれだけ大変なことなのか、母親が全く睡眠のとれない状況がよく分かります。

家事がほとんどできない

三つ子の0歳児の1日の生活は「ミルク→おむつ→寝かしつけ→ミルク→おむつ→寝かしつけ→お風呂→着替え→ミルク→おむつ→寝かしつけ→夜泣き→ミルク→寝かしつけ」このルーティーンを3人分です。

家事ができるのは子供が寝ている間、または機嫌が良いときにちょっとするくらいです。その間に予防接種や検診が入ってくるのできっちりと家事をこなすことはほぼ不可能です。

ワンオペ育児は危険!まずは多胎児育児の大変さを理解することが大事

パソコンやスマホを開く暇もないほど忙しく多胎児を育てながらワンオペ育児をしているママ、知り合い、身近な人がいればどうか手を差し伸べてほしいです。

多胎児を持つママは毎日が忙しすぎて情報を知ることも、サポートがあることも知らない人もいるかもしれません。

毎日の育児が精一杯で外に出れない、疲れすぎて家から出る気力もない、この状況が育児ノイローゼや産後鬱を引き起こします。

自分に負けたくない、責任感が強いママほどSOSを出さない、行政やサポートを利用しないということもあるでしょう。

しかしワンオペ育児はとても危険です。今回の虐待死は子供を持つ母親なら誰でも起こりうることです。

それに、育児をするママだけが責められることじゃなく国や行政も含めて多胎児育児の大変さをもっと声を出して伝えていくべきだと思います。

育児サポート、育児施設、どれも子供を持つ親たちに与えられたサービスです。それを1人っ子だけでなく、双子、三つ子、多胎児みんなが平等に利用できるものです。

今回のケースは、母親がファミリサポートを利用したくても事前登録で三つ子を連れて行かなければいけないことで断念しています。

それだったら双子、三つ子に合わせたサポートのやり方、母親の精神状態や環境に合わせて変えていかないと、こういう悲しいニュースは減らない気がします。

多胎児を持つ家族の支援やサポート

多胎児を育てている家族の支援やサポートはどのようなものがあるのか調べてみました。

上記で述べたようにまだまだ事前登録が必要なところもありますが、まずは誰かにこの辛さを知ってもらう、話すだけでも違います。

そこからいろいろなサポートや支援情報を教えてもらうこともできますので「子育てに不安がある」「誰かの手を借りたい」と思うことがあればぜひ下記を参考にして活用してみてください。

児童相談所全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」

厚生労働省管轄の児童相談所全国共通ダイヤルは「子育てがつらくて子供にあたってしまう」「これって虐待かも」「近くに子育てで悩んでる人がいる」など、相談をしたい人、通告する人どちらも相談が可能です。

近くの児童相談所につながり、内容に関する秘密は守られます。子どもや保護者たちのSOSがいち早く分かるように、平成27年7月1日から「189(いちはやく)」という3桁の番号に変わりました。

  • 電話番号:189(いちはやく) 全国共通
  • 相談料:無料(通話料はかかります)
  • 受付時間:24時間

子育てがつらい!と感じたら「よりそいホットライン」

東日本大震災の翌年、3月11日に設立した電話相談窓口です。子育ての悩み、夫婦関係、暮らしの中で困っていること、気持ちや悩みを聞いてほしいなど、どんな悩みでも相談可能です。

音声ガイダンスが流れるので相談したい内容を選んでから専門員につながります。

  • 電話番号:0120-279-338  
    ※携帯電話(PHS)・公衆電話からもつながります。
  • 相談料:24時間通話料無料

子育てについての悩み・相談は「ママさん110番」

日本保育協会が運営するママさん110番は、保健師・元保育士の先生が専門員として対応するので妊娠中から子育てについての悩みを聞いてもらえます。
子育てに不安がある、産後体調がよくない、子育てのサポートを受けたいなど、どんな悩みも相談できます。

  • 電話番号:03-3222-2120
  • 相談日:月曜~金曜日(土日祝・年末年始除く)
  • 相談時間:10:00~12:00 ・ 13:00~16:00
  • 相談料:無料(通話料はかかります)

多胎サークルを全国に設置「日本多胎支援協会」

日本多胎支援協会は多胎育児や支援、研修会やサークル、医療や行政の団体立ち上げの支援を行っています。

お住いの多胎サークルの場所や多胎知識に関する紹介もホームページで閲覧することができます。

日本多胎支援協会公式HP

全国保育サービス協会が運営する「双生児等多胎児家庭育児支援事業」

全国保育サービス協会が国から委託を受けて運営している事業で、多胎児を持つ家庭にリフレッシュを図っていただくため育児支援割引制度があります。

両親の勤め先が協会と連携していて、就学前までの多胎児を養育している家庭がベビーシッター派遣サービスを利用した場合、一部助成を受けられるサービスです。

  • 双子の場合:1日9000円
  • 三つ子の場合:1日18000円

の割引が可能で、1年度内に2回まで利用が可能です。

該当するかどうかは下記をご確認ください。

1.利用対象者:両親の勤め先が協会と連携している、就学前の双生児等多胎児を養育している方
2.対象児童年齢:0歳~義務教育就学前
3.利用は公益社団法人全国保育サービス協会が認定している割引券取扱事業者のみ利用可。【割引券取扱事業者一覧】
4.利用条件:就労のためにベビーシッターサービスを利用する場合、または利用者の家庭内での保育、家庭と保育所等への送迎を依頼する場合に限ります

割引に関する問合せもできます。

育児は大変だけど楽しいことも倍!多胎児のあるある話や家計のやりくり

双子・三つ子の多胎育児は大変なことも多いけど、その分倍の可愛さや楽しさがありますよね。子供が成長するにつれ双子・三つ子で良かった…と思える日が必ずあります。

そんな、多胎児を育てるママたちの「育てて良かった!」の声や多胎児あるある話、家計のやりくりについて紹介します。

双子・三つ子を育てて良かった!ママたちの声

まずは多胎児を育てて良かった、楽しかった、というママたちの声を紹介します。大変なことが多いと思われてしまう多胎児だけど、大変な分楽しいこともたくさんあるはずです。

  • おそろいの洋服を着せることができるので見てるだけで可愛すぎる!
  • 外に行くと必ずと言っていいほど声をかけられます。どの子よりも我が子たちに集中してくれるのが嬉しい。
  • 何かできるようになったら喜びが2倍になる。
  • 大きくなると3人で遊んでくれるので目が離せる時間が増えて家事がはかどる。
  • 3人の育児は貴重なので、楽しみながら過ごしてます。

可愛さも倍、楽しさも倍、なんといっても手が離れるようになったら3人で一緒に遊んでくれるようになるから親も家事がはかどりますよね。

赤ちゃんの時は大変だけど、それも怒涛のように過ぎる毎日をこなしたからこそ手が離れたときはちょっぴり寂しく感じるかもしれませんね。

双子・三つ子・多胎児のあるある話

次に多胎児のあるある話を紹介します。双子・三つ子だからこそよくありがちなこと、思わず「それある!」と納得してしまいます。

  • 顔が似ているのでどっちがどっちだか分からなくなる
  • 双子を育ててから外でもよく見かけるようになった
  • 1人が笑うとつられて2人も笑うことがある
  • 1日に出るゴミの量がすごい、とくにオムツ

その他にも、1人が病気すると次々に移ってしまう、役員を子供の人数分しなければいけないので大変、などのあるあるや苦労もありました。

多胎育児の家計のやりくりは?

おむつ、ミルク、ベビー用品、そろえるだけでも倍の金額がかかってしまう双子、三つ子のママはどのようにやりくりしているのでしょうか。

三つ子を育てている場合、ミルク缶は2日に1缶、おむつは2日に1袋なくなります。ミルク缶が1缶1500円だとすると1ヶ月で22500円、おむつは1袋800円としても12000円かかっている計算になります。

その他にも、シッター代、病院、予防接種などお金がたくさんかかります。大量消費が基本なので、多胎児を育てているママたちはどのようにやりくりをしているのか調べてみました。

ミルク・おむつは安価で大量購入
ネットで箱買いしているママが多いようです。ネット購入であればポイントの割引からポイントもついてお得です。大量に買っても家まで運ばなくて良いし楽ですよね。
ベビー用品はフリマやオークションが基本
リサイクルショップ、オークション、知り合いママからの譲り受けなど、上手に活用してベビー用品をそろえてるママが多いです。すぐに大きくなるし、中古でも十分使えますよね。
不要なものはすぐに売る
使わないもの、使わなくなったものはフリマやオークションで売って、たまったお金でおむつやベビー服を買っているかしこいママも。
代用品で使えるものは使い必要じゃないものは買わない
妊娠中から代用できそうなもの、買ってもあまり使わないものを徹底的に調べて極力必要なもの以外は買わないようにします。布おむつや短肌着は使わない、ベビー布団は購入せず大人用の布団に子供たちを寝かせて対応することもできます。
たまに親からの援助してもらっている
全てのママに該当するわけではありませんが、粉ミルクやベビー用品を買ってもらったり金銭面で援助してもらいながらやりくりしているママもいます。家にくるときはおむつやミルクをついでに買ってきてもらうなど外に中々行けないので助かりますよね。

多胎育児は想像以上に大変!周りの理解とサポートが必要不可欠

今年3月に起きた愛知県豊田市の虐待ニュースを踏まえながら、多胎育児の大変さとワンオペ育児の過酷さを伝えました。

このニュースが取り上げられ大きな反響をよんだのは、育児の大変さを知る母親たちが判決内容に不満を持ち立ち上がったからです。

「執行猶予つきの判決を求める」署名活動に25000人以上の賛同者が集まり、3月22日に母親は釈放されました。

虐待は絶対にあってはならないことですが、今回のニュースのように誰にも相談できず子育てをしているママ、サポートを得られずがんばっているママがいるかもしれません。

悲しいニュースが起きないためにも多胎育児の情報を増やしたり、サポート体制の見直し、声を上げやすい環境つくりなど国全体が考えていかなければいけない問題だと感じます。

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