妊娠高血圧症候群は食事で対策!塩分とカロリーを控えるコツ
塩分を控え、高タンパクでミネラル・ビタミンが豊富な食事をすることが、妊娠高血圧症候群の悪化を防ぐと考えられています。
また、妊娠高血圧症候群のリスクとなる急激な体重増加を防ぐためには、摂取カロリーに注意することも大切です。
妊娠中の血圧上昇を防ぐための食事のポイントと、塩分を控えた料理を美味しくいただく工夫についてまとめました。
妊娠高血圧症候群の食事療法!8つのポイント
2006年に発行された日産婦誌58巻5号「診療の基本 妊娠高血圧症候群」には、妊娠高血圧症候群の患者さんの栄養管理についての指針が書かれています。
妊娠高血圧症候群を抑えるためには、次の7点に気をつけた食事を摂るようにしましょう。
- 低カロリー
- 塩分控えめ
- 過剰な水分制限はしない
- 高タンパク食
- カルシウムをしっかりと摂る
- カリウム・マグネシウムを摂る
- 葉酸を摂取
それぞれの項目について詳しくみていきましょう。
低カロリー:1日に摂取してよい総カロリーを知ろう!
妊娠高血圧症候群の抑止には、適切な体重管理が重要となります。「妊娠中は赤ちゃんの分まで食べなさい」というのは食料が不足していた時代のこと。
現代では、十分に食料を手に入れることができます。また、食の欧米化や外食・インスタント食品などの影響で、1食あたりの摂取カロリーも高めになってきています。
適切な体重管理のためには妊娠中の摂取カロリーに注意しましょう。1日あたりの摂取カロリーは、体格を表す「BMI」(非妊娠時)によって異なります。
- 【1日のエネルギー摂取量の目安】
- (日本産婦人科学会「妊娠高血圧症候群の生活指導および栄養指導」より)
BMI24以下 30kcal× 理想体重(kg)+200kcal/ 日 BMI24以上 30kcal× 理想体重(kg)/日 ※BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
※理想体重とはBMIが22となる体重のことで、統計的に病気にかかりにくいといわれている数値です。標準体重ともいいます。
- BMI=52÷1.57÷1.57=21.096
- 理想体重=22×1.57×1.57=54.2
BMIが24以下なので、1日に摂取してよい総カロリーは・・・
30kcal× 理想体重(kg)+200kcal/ 日=30×54.2+200=1830 kcal
となります。
動物性脂肪や糖質は、少量でもカロリーが高くなります。洋菓子やパン、麺類などの食べ過ぎに注意しましょう。
塩分を控えめに!ただし過剰な制限は禁物
塩分の摂りすぎは、血圧上昇につながります。妊娠高血圧症候群を抑えるためには、1日の塩分摂取量を次のように抑えます。
- 塩分制限
- (日本産婦人科学会「妊娠高血圧症候群の生活指導および栄養指導」より)
妊娠高血圧症候群 発症後 1日あたり塩分7~8g 妊娠高血圧症候群 予防 1日あたり塩分10g以下 ※塩分10g=小さじ2杯分の食塩
以前は、塩分摂取量が多いほど妊娠高血圧症候群の発症率が高くなるとされ、重症患者なら3g/日までと制限されていました。しかし最近では、過剰な塩分制限には危険があると指摘されています。
たとえ、高血圧の発症や悪化が怖いと感じても、過剰な塩分制限は行わないようにしましょう。
なお、食品の成分表にナトリウム量(mg)で記載されている場合は、×0.0254した数値が食塩相当量(g)になります。
水分摂取について。特別な制限は不要
妊娠高血圧症候群の場合、体内の循環血液量を減らさないために、水分の摂取は制限しません。口の渇きを感じないほどに、適度に水分を補給するようにします。
症状や合併症の有無によって対応が変わるので、不安な場合には、水分補給について担当のお医者様とよく相談してみましょう。
タンパク質をしっかりと!理想体重をグラムに置き換えて摂取量を換算!
妊娠高血圧症候群では、尿にたんぱくが排出されるため、体内のタンパク質が不足がちになります。普段の食事にタンパク質を取り入れるようにします。
- 1日のタンパク質摂取量
- (日本産婦人科学会「妊娠高血圧症候群の生活指導および栄養指導」より)
1日に必要なタンパク質 理想体重 (kg)×1.0g/日 ※妊娠高血圧発症予防には〔理想体重 ×1.2~ 1.4g/日〕のタンパク質摂取が効果的。
たとえば身長157㎝の場合、理想体重が54.2kgとなりますので、1日に54.2gのタンパク質を摂取するようにします。
- タンパク質を多く含む食品
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- 肉類・・・豚肉(ヒレ・モモ)・鶏肉(むね)・牛肉(モモ)
- 魚類・・・マグロなどの赤身の魚・煮干し・鰹節
- 卵・牛乳
- 豆類・・・大豆、豆腐、凍り豆腐、油揚げ
カルシウム:妊娠高血圧症候群の予防に有効との研究あり
日本産婦人科学会の「妊娠高血圧症候群の生活指導および栄養指導(1998)」には、「1日900mgに加え、さらに1~2gのカルシウム摂取が妊娠高血圧症候群の予防に効果がある」と書かれています。
実は1998年当時、妊婦は1日900mgのカルシウムが必要と考えられていました。(厚生省「第6次改定 日本人の栄養所要量-食事摂取基準-」(1999)による)
2017年現在、女性のカルシウム摂取推奨量は650mg/日です。これは妊婦でも同じです。妊娠高血圧症候群に備えるには、この数値を満たすカルシウムを摂取したいものです。
乳製品、小魚、豆製品、青菜などを意識的に摂り、1日のカルシウム摂取推奨量を満たせるようにしましょう。
カリウム:ナトリウムの作用を和らげ、血圧を下げる
人間の体内では、カリウムとナトリウムがペアになって働きます。体内のナトリウムが増えると高血圧になりやすくなりますが、カリウムを多く摂ることで血圧の上昇を防ぐことができます。
高血圧を防ぐには、ナトリウムとカリウムのバランスが重要です。カリウムを多く含む食材には、次のようなものがあります。
- カリウムを多く含む食材
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- ほうれん草、春菊
- りんご、バナナ
- ウリ科の野菜・果物・・・かぼちゃ、きゅうり、なす、スイカ
- 海藻類・・・昆布、わかめ、ひじき
- 里芋、山芋、さつまいも、じゃがいも
- 切り干し大根、納豆
- カリウム摂取時の注意事項
- 食材の中に含まれるカリウムは、ゆでると食材からゆで汁に流れ出てしまいます。たとえば、煮物にすると約30%のカリウムが食材から流出してしまいます。
溶け出したカリウムを摂取するには、スープや鍋物などにして茹で汁ごと飲むのがよいでしょう。
ただし、味付けを濃くしてしまうと塩分の摂りすぎになりやすいので、薄味でいただくようにしましょう。
マグネシウム:カルシウムの作用を助けて、血圧上昇を抑える
また、マグネシウムにも血圧低下の作用があります。カルシウムと一緒に作用し、血管の緊張性を保ったり、心臓をきちんと動かすことができます。
- マグネシウムを含む食品
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- 海藻類(昆布、ひじき、わかめ)
- 種実(ごま、アーモンド、カシューナッツ)
- 大豆加工品(がんもどき、油揚げ)
特に、海藻類にはカリウムもマグネシウムも豊富に含まれています。便秘解消に役立つ食物繊維など数多くの栄養素を取り入れることができるので、積極的に食べたいですね。
葉酸:妊娠高血圧症候群の発症予防に期待!
胎児の神経管閉鎖障害の発症リスク減少のために、妊娠前から葉酸をしっかり摂取しておくはとても大切です。
その一例として、妊娠高血圧症候群管理ガイドラインには「神経管閉鎖予防のために葉酸を摂取していた妊婦において、妊娠高血圧の発症が抑制された」と記されています。
- 葉酸の摂取量(厚生労働省推奨)
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通常時 250㎍/日 妊娠前~妊娠3ヶ月まで 650㎍/日 ※1日の摂取量が1000㎍を超えないようにすること。
今後、葉酸による妊娠高血圧症候群の予防についての研究結果が出されることに期待がかかります。
減塩食・低カロリー食をおいしく!調理法や食べ方の工夫
妊娠高血圧症候群の抑制には、タンパク質やカルシウムなど効果が期待できる食材を積極的に取り入れていきましょう。
さらに、塩分や動物性脂肪を控え、ミネラル分をしっかり摂るには、「献立・調理法」「味付け」「食べ方」において、次のような工夫が重要になります。
献立・調理法の工夫:シンプルおかずの組み合わせで満足感アップ!
食事を作る際には、一食分の献立を考えてから作り始めましょう。血圧上昇を防ぐことを念頭におき、おかずの組み合わせを決めていきます。
- 加工食品は控えて、手作りを心がける(漬け物、佃煮などは控える)
- 塩鮭やしらす干しなどの魚には、塩分が多く含まれるので気をつける
- おかずのうち、塩味をつけるのは1品にする
- 油を使わない調理方法を取り入れる
インスタント食品や冷凍食品などの加工食品には、沢山の塩分が使われています。食事はできるだけ、素材から手作りするようにしましょう。
調理するときには、ノンオイル調理やオーブン焼き、蒸し料理などで油の使用を控えるようにしましょう。
シンプルなおかずでも、食材ごとに調理法を変えて組み合わせることで、献立のバリエーションを増やすことができます。
味付けの工夫:ダシを含ませて味付けは表面のみに!
調味料の使用を控えると、1日の塩分摂取量を減らすことができます。調味料控えめでも美味しいと感じるために、次のように工夫してみましょう。
- 味を染みこませない
- だしをしっかりとり、素材の味を生かす
- きのこ、貝、昆布など、「うまみ」の多い食材を使う
- 減塩タイプの調味料を使う、化学調味料は控える
- 食べる直前に調味料を少しだけつける
- きなこ・ゴマ・薬味・香辛料などでアクセントをつける
- レモンやお酢の酸味を利用する
具の中まで味の染みた煮込み料理はとっても美味しいですが、少量でも多くの塩分が含まれています。
また、調理の際には塩分を使わず、食べる直前に少しだけ塩やお醤油を付けるのもよいでしょう。調味料は一度にかけず、お皿に少しずつ出して使うようにします。
酸味は塩味を引き立たせる役割をしてくれます。ネギや大葉、生姜、ワサビなど風味を補うと、減塩食をおいしくいただけるようになります。
食べ方の工夫:外食でも塩分とカロリーをカット
自宅での食事ならカロリーや塩分を調整することができても、外食になるとなかなか難しいものです。
どうしても食事の手作りが難しいときには、食べ方を工夫することで塩分とカロリーを減らすことができます。
- 塩分とカロリーを減らず食べ方の工夫
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- 塩分が多く含まれる汁物はスープを残す
- よく噛んでゆっくり食べる
ただし、カリウムを多く含む食材は、できるだけゆで汁までいただくようにします。味付けによる塩分量とのバランスを考えながら、いただきましょう。
また、食べ過ぎによるカロリーオーバーを防ぐには、よく噛んでゆっくり食べることが重要です。
東京工業大学院の林直亨教授らの研究によると、ゆっくり食べることで食後のエネルギー消費量が増加することも明らかになっています。
食事療法でママ自身と赤ちゃんを守ろう
妊娠中、ママの健康とお腹の赤ちゃんの成長を守るために、食事に気をつけることはとても大切です。
妊娠高血圧症候群は、重症化させてしまうと危険な病気です。体重と血圧をコントロールして、1日でも長く妊娠を継続できるようにしましょう。
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