子宮頸がんワクチン接種期間内に妊娠!母体や胎児への影響
接種率が年々伸びている子宮頸がんワクチン。子宮頸がんは、性交渉経験があれば誰でもかかる可能性のある病気です。
子宮頸がんの約8割の型を予防するものとして子宮頸がんワクチンは注目されています。ただし、副作用などの懸念もあります。
そしてワクチン接種の期間内に妊娠することも考えられます。その場合、母体や胎児へ影響はあるのでしょうか。ワクチンの意義と安全性とともに確認していきましょう。
接種の途中段階で妊娠発覚!母体と赤ちゃんへの影響について
日本で認可されている子宮頸がんワクチンには、2価ワクチンのサーバリックス (Cervarix) と4価ワクチンのガーダシル (Gardasil)の2種類があります。
これらのワクチンは「不活性化ワクチン」つまり免疫をつけるのに必要な成分を取り出して毒性をなくしてワクチン化したものです。
毒性を除いていない「生ワクチン」に比べて安全性が高いとされている反面、免疫を維持するために複数回の接種が必要な場合があります。
子宮頸がんワクチンも不活性化ワクチンに当てはまり、一度の接種では効果を発揮しません。
妊娠していない時期の6カ月間のうちに3回接種することが基本となり、どちらの種類も接種完了までに通常7か月以上かかります。
性交渉経験後にワクチンの接種を行うと、まれに3回の接種の途中期間で妊娠が発覚する場合があります。そのような場合にとても心配なのがワクチンの影響ですよね。
母体と赤ちゃんへの影響はないとされているものの、比較的新しいワクチンであるのと副作用が叫ばれている点、そして妊娠中に接種する有効性はまだ確立していないことから、妊婦への継続接種は避けられています。
有用性が危険性を上回る場合に接種が基本!残りの接種を受けられる時期は卒乳後が一般的
子宮頸がんワクチン接種後に妊娠が判明し接種回数が残っている場合、それ以降のワクチン接種は分娩後に行います。
しかし、分娩後母乳で赤ちゃんを育てている場合は、ワクチン接種の有益性(メリット)が危険性(デメリット)を上回ると判断される際にワクチンを接種するように判断します。
これは「有益性投与」と呼ばれ、ワクチン接種が100%安全と言い切れない時「病気にかかるよりもワクチン接種の方が安全」という見解の下で接種することを指します。
しかし明確な基準があるわけではなく、接種である医師や病院の方針や見解によっても判断は変わってくるものなので、定期検診の時以外でも納得がいくまで説明を受けるようにしてください。
ただし、母乳育児期間に有益性投与がされることはほとんどありませんので、基本的には母乳での育児を終えた後に接種が再開されると考えて良いでしょう。
子宮頸がんワクチンの3回の接種の間隔は、既定の定期接種スケジュールよりも短い間隔で接種した場合に十分な抗体ができない可能性が出てくるため、短い間隔で接種しないよう注意することが必要です。
ただし、間隔が開いた場合については、アメリカの予防接種諮問委員会の公式見解によると、「奨励される回数を接種されなければ期待される予防効果は得られないが、接種の間隔が既定のスケジュールより延びても抗体が減少することはない、接種間隔があいても1回目から接種しなおす必要はない」との発表を行っています。
子宮頸がんワクチンの副作用には個人差がある!
子宮頸がんの原因の主な原因はウイルス感染です。ヒトパピローマウイルス(通称HPV)というもので、100以上の型があるのが特徴です
子宮頸がんワクチンはその中でも発がんリスクの高いHPVの感染を予防するものであり、感染後に接種しても意味がないのが特徴です。
子宮頸がんワクチンの副作用・副反応にはどういったものがあるのか?
一時話題になった子宮頸がんワクチンの副作用ですが、本当に副作用なのかどうか検証している最中のものもあります。
2016年時点で、発現しうる副作用・副反応として世界共通で発表されているのは以下の通りです。
- 局所反応(痒み、痛み、皮膚が固くなる)
- 蕁麻疹
- 失神、めまい、吐き気
- アナフィラキシー
まれに重篤な症状として、脊髄炎や血栓症に罹患することも報告されています。
全ての人に副作用や副反応が出るわけではありませんが、リスクを必ず理解した上で接種するかどうかを判断するようにしましょう。
2016年現在、厚生労働省では子宮頸がんの予防ワクチン接種を積極的には推奨していません。
子宮頸がんワクチンの副作用と副反応について検証が行われ、重篤な副反応に対しては予防接種健康被害救済制度の対象としています。
厚生労働省リーフレット
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/pdf/leaflet_h25_6_01.pdf
子宮頸がんワクチンの推奨中止について
一方で、厚生労働省の子宮頸がんのワクチン接種の推奨中止に対し、日本産科婦人科学会は子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)接種の勧奨再開を求める声明を発表しています。
日本だけが子宮頸癌予防に遅れをとり、子宮頸癌の罹患率の高い国となってしまう恐れを懸念しているためです。
また、WHOからは厚生労働省の対応について度々非難する声明が発表されています。
WHOは日本よりも先にワクチン接種を行っていた国々からしても子宮頸がんワクチンは安全であると断言し、国として科学的なエビデンスを行うように忠告しています。
性交渉前の年代での接種が効果発揮の可能性大なので、20代以降の妊婦さんは検診を優先しよう
HPV感染予防という視点に立つと、性交渉を初めて行う年齢よりも前にワクチンの接種を受けた方がより効果を発揮します。
そのため、10代前半での接種が最優先と言われていますが、正式には性交渉経験以前であればかなりの予防効果を発揮すると考えられています。
逆に接種年齢の上限は、はっきりとした年齢の節目は定められていません。
しかし、性交渉経験のある20代以上についてはすでにHPVに感染している可能性があるので、まず検診を受けてから主治医に接種をすべきか相談する流れが良いでしょう。
「接種で不妊になる」は単なる噂
インターネット上でたまに見かける「ワクチン接種で不妊になる」という話。実際に見て不安になった方もいるかもしれません。
しかし、実際に妊娠確率が下がったり不妊になったという報告例は存在しません。
私も実際に20代前半に接種を行いましたが、その後無事に妊娠に至りました。
子宮頸がんの主な原因はウイルス感染
子宮頸がんの原因の主な原因は先述の通りウイルス感染ですが、必ずしもがんを発症させるとは限りません。
日本における子宮頸がんの原因となるHPVは16・18・31・33・52・58型の7種類が主なもので、16・18型が全体の60%を占めます。
HPVは性感染症である尖圭コンジローマの原因となる場合もありますし、何の病変も生じず潜伏し続けることもあります。
HPVは性的接触によって感染することから、性交渉経験者なら誰でもウイルス保有者になる可能性があり、子宮頸がんになる可能性も出てくると言われているのです。
高リスクのHPVの型に感染してもすぐにがんになるわけではありません。ほとんどの場合、HPVは免疫力によって排除されます。
ごくまれに生き残ったHPVが子宮頚部で数年をかけてがん化したものが子宮頸がんとなって表れるのです。
また、HPVは子宮頸がんの「主な原因」というように100パーセントの原因ではありません。喫煙も危険因子として報告されています。
実際に、性交渉を行っていない女性も子宮頸がん患者の約2割に該当します。
扁平上皮がんと腺がんの2種類に分けられる
子宮頸がんは大きく分けると2つのグループになります。扁平上皮がんと腺がんです。
- 扁平上皮がん
-
HPV由来のがんの大半が当てはまる
子宮頸がんのうち約8割を占める
検診で発見しやすく、対処が遅れなければ予後も良い - 腺がん
-
子宮頸がんのうち約2割を占める
HPV由来とは限らないため予防が難しく、性交渉の有無関係なくなりうる
検診で発見されにくく、治療も扁平上皮がんに比べて難しい
混合型(扁平上皮がんと腺がんを併発)のがんもまれにあります。ワクチンによって予防ができるのはHPV由来の扁平上皮がんの方です。
初期症状はほとんどなし!定期的な検診を受けよう
子宮頸がんに万が一なった場合、発見が早ければ早いほど治療の成果は上がります。
しかし、子宮頸がんの初期症状は全くと言っていいほどありません。初期のうちに発見するには、定期的な検診を受けることが有効です。
30歳を過ぎたら、最低2年に1回子宮がんの検診を受けると良いでしょう。
結婚していたり性交渉をするパートナーがいる場合は、25歳頃からでも早すぎるということはありません。
また、妊娠初期の時点で必ずHPV検査を受けますが、もしHPV陽性であったとしても出産時にHPVが赤ちゃんに悪影響を及ぼしたり、発育に影響することはありません。
自治体や企業によっては集団での検診を行っていたり、子宮頸がんの検査に補助金を出す取り組みを行っているところもあります。
何かおかしいな、と感じる頃にはすでにがんは進行しています。
【子宮頸がんの進行とともに見られる症状】
- 不正出血
- 性行為の際の出血
- おりものの増加、臭いや色の異変
- 月経の量の増加、期間の長期化
これらの症状は、子宮頸がんに限らず婦人科系の疾患の症状としてもよく見られるものなので、異変があった時点ですぐに婦人科を受診をするようにしましょう。
正しい知識を持ってワクチンと付き合おう
子宮頸がんワクチンは比較的新しいワクチンということもあり、効果は認められつつも様々な類の情報が氾濫しやすくなっています。
その後の安心のためにも納得がいくまで専門窓口や医師に相談し、納得できればワクチン接種を行いましょう。
また、接種の途中段階で妊娠した時にも慌てずに!すぐに接種を受けていた医療機関に報告し、スケジュールを立て直す措置を取りましょう。