130万の壁とは何?パートで働く人は106万の壁にも注意
パートやアルバイトの主婦で、ご主人の扶養に入っている場合、「103万の壁」や「130万の壁」といった扶養にかかわる収入の壁はとても気になります。
特に、自分で年金や健康保険料を払わなければならなくなる「130万の壁」を気にしながら、働く時間を調節している方も少なくないのではないでしょうか。
2016年に、130万の壁に関わる社会保険上の扶養の制度が変更となり、2018年には103万の壁に関わる税法上の扶養の制度が変わりました。
それぞれの制度の変更点とあわせて、年収に応じて保険料や税金の負担、手元に残る金額がどう変わるのかを見ていきたいと思います。
この記事の目次
130万の壁について解説します
よく耳にする「〇〇の壁」ですが、「103万の壁」は所得税の支払い、「130万の壁」は年金・保険料の支払いが、それぞれ必要となるかどうかという分かれ目になります。
130万の壁は社会保険上の扶養の壁です
「130万の壁」とは、自分で社会保険に加入する必要があるかどうかという壁です。所得控除前の年収が130万円未満であれば、ご主人の社会保険上の扶養となるので、自分で社会保険に加入して保険料を払う必要がありません。
健康保険は、ご主人の会社の健康保険組合に加入し、年金も「第3号被保険者」となるので、保険料を払うことなく将来年金が受け取れます。
国民年金・国民健康保険には扶養という制度はないので、奥さんも加入して保険料を払うことになります。
交通費や残業代も130万の壁に含まれます
年収130万円というのは、手取り額ではなく、税金等を控除する前のお給料の支給額です。基本給だけでなく交通費、残業代などの諸手当を含んだ総支給額になります。
そのため、同じように働いていても、遠方から通っていて交通費を多く貰っている人だけが、130万の壁を超えてしまうということも起こります。
年金・健康保険への加入の基準ですが、厳密には年収ではなく月収で判断します。
2016年にできた106万の壁にも注意
2016年10月から、社会保険上の扶養に関して制度の変更がありました。「106万の壁」という新たな壁ができて、社会保険に加入すべき人の範囲が拡大されました。
以下の条件を全て満たす人は、勤務先の厚生年金と健康保険への加入義務が生じます。
- 1週間の労働時間が20時間以上
- 1年以上の継続勤務の見込みがあること
- 月額賃金が88,000円以上
- ※従業員(社会保険の被保険者)が501人以上の企業
- 学生ではない
※2017年4月からは、従業員が500人以下の会社でも、社会保険を適用できるようになりました。ただ、強制加入ではなく、労働組合で合意がなされた場合などに適用がされます。
この106万の壁が出来たことで、新たに社会保険の加入が必要となったのは25万人とも言われています。
2018年から税法上の扶養の制度が変わりました
2018年から、配偶者特別控除の上限が引き上げられるなど、税法上の扶養について制度が変更になりました。
今までの配偶者控除と配偶者特別控除
配偶者控除は、たとえば妻の所得が一定額より少ない場合、夫の所得税を軽減できるというしくみです。
妻の年収が103万円であれば、夫の所得から38万円を控除することができます。103万円は、手取り額ではなく何も控除していない給与の額です。通勤手当は含みません。
ただし、103万円というのは、パートなどで会社からお給料をもらっている場合の上限です。
お給料をもらっている人は、38万円の基礎控除に加えて、65万円の給与所得控除が受けられるので、年収が103万円の場合は、所得税が掛かる収入が0となります。
フリーランスなどで仕事をしていている人は、給与所得控除の65万円がなく、収入から経費を引いた金額が課税される所得となります。
青色申告をしている人は、青色申告特別控除として65万円を引けます。それ以外の人は、収入から仕事に必要な経費を引いた所得が38万円以上になると、所得税が発生します。
今までの配偶者特別控除は、妻の年収が103万超~141万円以下(所得は38万円超~76万円以下)であれば、夫の所得から妻の収入に応じて38万円~3万円が控除できるという制度でした。
配偶者控除の103万の壁は変わらないけれど、世帯主の年収に制限が
2018年からは、配偶者控除の103万円の壁について世帯主の年収に制限ができました。
今までは、旦那さんのお給料の金額に関係なく、配偶者控除を受けることができたのですが、改正後は、以下のようになりました。
世帯主の年収 | 配偶者控除の金額 |
---|---|
1,120万円以下 | 38万円 |
1,120万円超~1,170万円以下 | 26万円 |
1,170万円超~1,220万円以下 | 13万円 |
旦那さんの所得控除前の年収が、1,220万円を超えた場合は控除が受けられなくなりました。
年収130万の壁については変わらず
2018年の改正では、所得税上の扶養については変更がありましたが、社会保険上の扶養にかかわる130万の壁には変化はありません。
これまでと変わらずに、年収が130万未満であれば、配偶者の社会保険の扶養に入ることができます。
年収201万円まで配偶者特別控除が受けられるように
配偶者特別控除は、上限が引き上げられました。今までの年収141万円(所得76万円)から、年収201万円6千円(所得123万円)未満までに控除の範囲が拡大されました。
ただし、配偶者控除と同様に、世帯主の年収に制限が設けられました。
たとえば、奥さんの年収が160万円だと、旦那さんの年収が1,120万円以下の場合は控除額は36万円、年収が1,120万円超~1,170万円以下で控除額が24万円、年収1,170万円超~が12万円という具合に、控除額が減っていきます。
旦那さんの所得控除前の年収が1,220万円を超えた場合は、奥さんの年収に関係なく控除額は0になります。
年収に応じた手取り額をシミュレーションします
制度の変更などもあり、収入から引かれる社会保険料や税金がどれ位になるのか気になるところです。
奥さんは40歳未満、旦那さんの所得控除前の年収が500万円、東京都大田区在住という設定で、概算の手取り額を計算してみたいと思います。
年収100万円の場合は丸々手元に残る
年収が100万円の場合は、収入に対して所得税・住民税が掛かりません。社会保険への加入義務もないため、なにも引かれることなく100万円が丸々手取り額となります。
所得税:0円
住民税:0円
手取り額:100万円
旦那さんも、配偶者控除38万円を受けることができます。
年収106万円の場合のシミュレーション
年収106万円(月収88,334円)となり、勤務先の社会保険への加入義務がある場合
所得税:0円
住民税:約5,000円
手取り額:約90万円
社会保険への加入義務があると、年収が106万円の場合、かなり手取り額が減ってしまいますね。年収を100万円に抑えた方が、手取り額が多くなるという逆転現象が起きています。
106万円の壁に該当して、社会保険料を払う必要がある人は、年収が125万円ほどにならないと、社会保険料を払わない場合の手取りを越せないと言われています。
旦那さんは、配偶者特別控除38万円を受けることができます。
年収129万円の場合のシミュレーション
年収129万円(月収107,500円)で、106万円の壁の要件に該当せず、旦那さんの社会保険に入ることができる場合はこうなりました。
所得税:約13,000円
住民税:約36,000円
手取り額:約124万円
自分で社会保険料を払う必要がないため、手取り額も124万円程になりました。
旦那さんは、配偶者特別控除38万円を受けることができます。
年収130万円の場合のシミュレーション(勤務先の社会保険に加入)
年収130万円(月収108,334円)の場合に、社会保険料や税金がどれ位かかるのでしょうか。勤務先の厚生年金・協会けんぽに加入した場合で、概算を出してみます。
所得税:約4,000円
住民税:約17,000円
手取り額:約109万円
社会保険料を払うと、年収100万円の時と比べて、9万円しか手取り額が増えていませんね。年収129万円の時と比べると、15万円ほど手取り額が減ってしまいます。
旦那さんは、配偶者特別控除38万円を受けることができます。
年収130万円の場合のシミュレーション(自分で国民年金と国保に加入)
年収130万円(月収108,334円)で、自分で国民年金と国民健康保険料を払った場合は以下の様になります。
所得税:500円
住民税:約14,000円
手取り額:約102万円
旦那さんは、配偶者特別控除38万円を受けることができます。
勤務先で加入する社会保険の場合、保険料は会社と従業員で1/2ずつ折半となります。自分で国民年金・国民健康保険料を払う場合は、負担額がそれよりも大きくなってしまいます。
年収130万円の壁を超えて働くときには、年収を約155万円ほど稼がないと、社会保険料を払わない場合の手取りを逆転できないとも言われています。
手取り額を減らしたくない場合は、年収130万円の壁を意識して超えないように調整するか、年金・健康保険料・税金を払っても年収が増えるように、年収130万円の壁を大きく超えて働くことになります。
社会保険に加入して手取り額で損をしない働き方
以下は、妻の年収によって、夫の社会保険の扶養に入れるか、夫の配偶者控除が受けられるかをまとめた表です。
妻の年収 | パート・アルバイトなどの給与所得者 | 給与所得者以外 |
---|---|---|
103万以下 | 配偶者控除:○(控除額38万円) 夫の扶養:入れる 自身での社会保険:加入義務なし | 配偶者控除(所得が38万円以下)か配偶者特別控除(所得123万円以下)の選択適用※1 夫の扶養:入れる 自身での社会保険:加入義務なし |
106万以上 | 配偶者控除:× 配偶者特別控除:○(控除額38万円) 夫の扶養:入れる 自身での社会保険:加入義務なし (条件を満たすと加入義務あり)※2 | 配偶者控除(所得が38万円以下)か配偶者特別控除(所得123万円以下)の選択適用 夫の扶養:入れる 自身での社会保険:加入義務なし |
130万未満 | 配偶者控除:× 配偶者特別控除:○(控除額38万円) 夫の扶養:入れる 自身での社会保険:加入義務なし (条件を満たすと加入義務あり) | 配偶者控除(所得が38万円以下)か配偶者特別控除(所得123万円以下)の選択適用 夫の扶養:入れる 自身での社会保険:加入義務なし |
130万以上 | 配偶者控除:× 配偶者特別控除:○(控除額38万円) 夫の扶養:入れない 自身での社会保険:加入義務あり |
配偶者控除(所得が38万円以下)か配偶者特別控除(所得123万円以下)の選択適用 夫の扶養:入れない※3 国民年金・国民健康保険に加入する義務あり |
150万以下 | 配偶者控除:× 配偶者特別控除:〇(控除額38万円) 夫の扶養:入れない 自身での社会保険:加入義務あり |
配偶者控除(所得が38万円以下)か配偶者特別控除(所得123万円以下)の選択適用 夫の扶養:入れない 国民年金・国民健康保険に加入する義務あり |
150万超 | 配偶者控除:× 配偶者特別控除:○(控除額36万円) 夫の扶養:入れない 自身での社会保険:加入義務あり | 配偶者控除(所得が38万円以下)か配偶者特別控除(所得123万円以下)の選択適用 夫の扶養:入れない 国民年金・国民健康保険に加入する義務あり |
201万6千円以上 | 配偶者控除:× 配偶者特別控除:× 夫の扶養:入れない 自身での社会保険:加入義務あり |
配偶者控除(所得が38万円以下)か配偶者特別控除(所得123万円以下)の選択適用 夫の扶養:入れない 国民年金・国民健康保険に加入する義務あり |
※1 フリーランスや個人事業主では、給与所得者の場合と所得の計算方法が異なります。
白色申告:所得=収入-経費
こうして計算した所得が、38万円以下であれば配偶者控除、123万円以下であれば配偶者特別控除が受けられます。
※2 従業員501人以上の会社に勤務するなどの条件を満たす場合は、年収が106万以上になると社会保険へ加入します。
※3 パート・アルバイト以外の人も、年収が130万円以上になると、社会保険の加入義務が発生しますが、加入する健康保険によって経費が引ける・引けないといった定めが異なります。実際に加入する組合に問い合わせが必要です。
同様に、130万の壁を超えて働く場合、社会保険料の支払いによる手取りの減少を取り戻すために必要な年収は、155万円ほどと言われています。
勤務先の社会保険に加入するメリット
社会保険に加入すると、手取り額が減りますが良い面もあります。
厚生年金に加入すると将来の年金額が増える
勤務先の厚生年金に加入することが出来れば、将来受け取ることができる年金額が増えます。
厚生年金は2階建ての年金と言われています。配偶者の扶養になっている場合(国民年金の3号)は、基礎年金しかもらえませんが、厚生年金に加入していれば、働いた金額に応じて基礎年金にプラスした年金が貰えます。
年金制度がこの先どうなるかはわかりませんが、将来の年金額が増える可能性がある点はメリットですね。
また、厚生年金は、国民年金に比べて障害年金や遺族年金など収入が途絶えたり働けなくなった時のサポートが手厚いです。
企業の健康保険には出産手当金などの給付がある
自分で加入する国民健康保険に比べて、勤め先の健康保険は給付金などの保障が手厚いです。
勤務先の社会保険に加入すると、傷病手当金や出産手当金といった、給付金を受け取ることができます。
このように、厚生年金・企業の社会保険に加入するとそれぞれメリットがあります。しかし、これは、自分で国民年金・国民健康保険に加入した場合では受けられない恩恵です。
年収が130万円以上になりそうな時には、会社側の社会保険に加入できないか確認を取った方が良いと思います。
制度は今後も変わる可能性もあるので、見落とさないようにチェック
ここ数年で、年収130万の壁・103万の壁といった扶養に関する制度に、大きな変更がありました。106万の壁についても、いずれは全ての企業で強制的に社会保険に加入するようになるという動きもあるようです。
制度が変わったことを見落とすと、せっかく働いても損をしてしまうかもしれません。扶養に関する制度の変更など、自分の働き方に影響を与えるものについては、気を付けてチェックしていたいですね。
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