【体験談】産後数日の新生児スクリーニングで聴覚障害が発覚
大事に育んできたお腹のベビーと会える楽しみな出産、また、産後は可愛いベビーとの毎日に不安と期待で胸がいっぱいですよね。
障害にも色々あり、中でも聴覚障害は産後数日の簡単な検査でわかることがあるのです。現在小学6年生の息子の例でお伝えします。
新生児聴覚スクリーニングからのプロセス
私が長男を産んだ2007年(平成19年)は、まだ全国的にこんなに広まってはいませんでした。
実家のある北九州で、いち早く取り組まれていたので、今でも運命というか有難いなぁ…と思っています。
検査は赤ちゃんが寝てる間に痛みも無い
耳にイヤホン、額のあたりに電極を付けて、脳波の測定をします。数分で終わり、結果もその日のうちにわかります。
長男の場合は再検査となり、翌日、また翌日に検査を受けました。
看護師さんには、「体も小さめだし、まだ新生児さんは反応が出ない場合もあるからね。」と、優しく声をかけていただき、不安は的中するものの気持ちは落ち着くことができました。
費用は産院によって数千円~自治体によって助成も。
私の時は3000円くらいでしたが、それくらいが相場みたいです。
赤ちゃんは、生まれてすぐからドアの開閉やお客さんの笑い声、隣の子の泣き声などにも反応しますよね。
検査では、囁くくらいの声で反応があるかを調べるので、ママとのかかわりの中だけでは判断できない程度の聴覚障害もわかり、おすすめです。
結果の報告…referは再検査
passという、異常なしの結果は、検査の翌日や当日に知らされます。そこで終了になります。息子の場合は、referという再検査のお知らせが連日あり、退院の日にドクターからお話がありました。
- 産後3日目 初めての検査 結果…refer
- 産後4日目 結果…refer
- 産後5日目 退院の日に検査 結果…refer
- 退院後1週間検診検査 結果…refer
- 退院後2週間検診検査 結果…refer
- 生後1ヵ月 検査結果…refer
計5回の検査を経て、1ヶ月健診後紹介所を頂き、総合病院を紹介されました。
スクリーニング後は耳鼻科で詳しい検査を
聴力検査にはいろいろな種類の方法があります。
- AABR
- ABR
- COR
- オージオメーター
- 骨導聴力検査
- AABR
-
産院でしてもらった検査です。赤ちゃんの負担はほぼなく、数分で終わりますが、他の検査ほど精密ではなく詳細は分かりません。
産院でreferの結果を受けたら、大きな病院を紹介されます。私は実家近くの総合病院へ。
乳児の検査ができる病院は限られているので、大学病院などの大きな病院になります。
息子は里帰り出産だったので、そこで結果が分かっても自宅のある宮崎に戻らなければいけません。
- 新スクでreferだったなら聞こえてないでしょう
- 乳児だし、検査も大変
- どうせ県外に行くんだからそこでした方が良い
と、検査もせずに病院を後にしたのでした。
実際に、私は息子に聴覚障害があるのかないのかを知ることができたので、その日から「聞こえないかも」ではなく「聞こえない」子として関わるようになりました。
気を付けたこと
- 声をかけながら目を合わせる
- 肌と肌のふれあいを大切に
- ベビーサインを勉強して使う
1歳までの流れ
- 近くの耳鼻科で簡単な聴力検査ABR
- 1週間後に再検査
- 発達障害支援センターの紹介を受ける
- 月数回の検査
- 大学病院への紹介
- 障害者手帳の申請
- 補聴器装用開始
- AABR
-
1歳になるまでの間、多い時は週1、少なくても月に2回以上は高速で1時間ほどの大学病院へ通っていました。
ABRより細かい結果が出る検査で、寝た状態で周波数・音の大きさを変えて図ります。
寝ていないといけないので、睡眠導入剤を飲ませて眠るまで病院で数時間待ち、検査を1時間以上待ち…なんてこともありました。
睡眠導入剤は、強いバニラの香りが漂うほど甘くしたシロップになっていたのですが、これを飲ませるのも一苦労でした。
3階の耳鼻科待合で投薬してから1階の授乳室へ移動して授乳、また寝かしつけながら3階へ…。私も疲れていました。
息子は、車で寝るタイプだったので、道中起こしていくのも大変でした。
その後も1年に数回。小学校高学年からは年に1回ほど医大に通っています。
- COR
-
1才前位になると、子ども自身の反応などで、起きたままもっと簡単な検査が短時間でスムーズにできるようになっていきます。
音が聞こえたらおもちゃが動くことを知ると、聞こえたらそっち向くようになるので、その反射を使った検査がCORです。通っていた発達支援センターという医療機関では、電車が動くようになっていて大好きでした。検査室にも、喜んで入っていました。
- オージオメーター
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幼児~学齢期になると、オージオメーターという機械を使って検査します。ヘッドフォンから流れる周波数と音量がかわり、聞こえたらボタンを押すなどして知らせるという方法です。
小学校の集団健康診断で使われる機械ですが、聴かせる音がより細かくなります。
- 骨導検査
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耳の機能にも色々あり、例えば鼓膜に問題がある場合、聴神経等は問題ないこともあります。聴覚障害の原因を探るにも大切な検査ですが、息子は、骨導の反応もなく、内耳の障害だということが分かりました。
障害者手帳の申請から届くまでは3か月ほど
障害者手帳の申請には、指定の医師の診断書が必要なため、遠くの医大に通う必要がありました。
障害者手帳は都道府県から発行されますが、申請、受け取りは住んでいる市町村になります。
それぞれの市町村で、窓口や必要な書類、手続きの流れはご確認ください。
- 4cm×3cmの本人の顔の写真
- 申請書(窓口でもらえる)
- 医師の診断書…指定の書式で医師が記入するもの
- 印鑑
- マイナンバーのわかるもの
- 医大の診察予約(時期や場所に寄りますが1ヵ月~数か月後の予約)
- 受診・検査
- 診断書が届く(2週間ほど)
- 市役所の福祉事務所へ申請
- 手帳が市役所に届くまで2か月ほど
- 市役所からの通知が郵送で自宅に届く
- 指定日に受け取りに行く
手帳があると、種別や級に寄りますが、医療費控除、障害年金、助成金、ETC・有料道路の割引、その他公共施設等の割引などが受けられます。
聴覚障害の原因は遺伝や感染症など様々
聴覚障害は、先天性のものと後天的なものがあります。
主な先天性の聴覚障害の原因
- 遺伝
- 妊娠中の感染症
- 奇形
- 周産期の問題
妊婦の風疹のリスクはよく聞きますね。私の場合は、妊娠中も出産時も問題がなかったようで、医師からは「たまたま」と言われました。
私は、検査はしていませんが、今後の聴力の変化の傾向などが分かるかもしれないので、調べるメリットもあると思っています。
後天性の聴覚障害は、ヘレンケラーのような高熱、事故などがあります。
早期発見のメリット&デメリット
新スクが広がっているのには理由があり、聴覚障害は早期発見のメリットがとても大きい障害の一つです。
私自身、「ま、いっか」と、息子の障害を受け入れていたことがあだとなり、早期発見の割に対応がちょっと遅いのですが、それでも1歳までにはおおまかなことは把握でき、対応の仕方もはっきりしていました。
1歳になるちょっと前から聴覚支援学校の幼児教育に通いました。そこで親としても聴覚障害についてたくさん勉強しました。
手話や音声とその形にこだわらず、言語獲得のメソッドがあり、どんどん吸収していきました。
3歳で同じく幼稚部の年少組に入学すると同時に地域の幼稚園に入園しました。様々な体験を通して言葉を覚え、補聴器等の取り扱いや自己理解もしていきました。
私が第三子を妊娠出産したこともあり、特例で二重在籍をさせてもらっていました。
年長時には音声言語でのやり取りができるようになっていました。
発達障害により、5年生から支援学級に在籍。6年生の今年度は授業全般を通常級で受けていますが、FM補聴システムを使って大きな問題はなく参加しているようです。
早期発見のデメリット
- ママが、受け止められない
- 知識が足りない中で選択を強いられることも
- 相談窓口・相手がわからず抱え込む
知らせる側である病院も、デリケートな問題と気を使ってくれることを感じました。
補聴器・人工内耳・手話の世界
聴覚障害児の聴力を支えるツールには以下のようなものがあります。
- 補聴器
- 人工内耳
- 手話
- UDトーク
- 補聴器
-
息子が装用しているもので、1歳になる前からつけています。老人の補聴器とは少し違って、デジタル補聴器といって周波数によって出力を設定できます。
検査によって聞こえにくい周波数が分かるので、個々の聞こえに合わせられます。
イヤモールドという、イヤホン部分は、自分の耳の穴の型を取って作るので、ずれにくいです。機械なので水に弱く、汗カバーなどを作っていましたが、今は防水機能のあるものを使っています。小さい頃は、シールを貼って可愛くデコって子どもも喜んでいました。今も補聴器、イヤモールド共にカラフルなので、色を選ぶのも楽しそうです。
FM補聴システムという、マイクの音声を電波で補聴器の受信機に届ける機能は、学齢期におすすめです。
- 人工内耳
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内耳の蝸牛と呼ばれるところに電極を入れることで、脳へ音を届けることができます。全身麻酔の手術が必要で、頭の内側にインプラント、マグネットでくっつくように外にマイクが付きます。マイクで集めた音を埋め込まれた部分が受信し聴神経を刺激して音を認識します。
- 手話
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多くの教育機関でも子どもたちが触れている言語の一つです。主に手指を使って伝達する方法です。日本で使われている手話は日本語であり、世界中でその気にの手話が使われています。
特に息子の言語発達がまだ見据えられなかった頃、私は、音声言語と同じように母語として息子に十分な言語環境を、と思い手話を勉強しました。
今は、補聴器の効果と言語訓練の甲斐あって口話中心でコミュニケーションを取っていますが、健聴者と同じ聞こえではなく、補聴器がないと全く聞こえないので、手話は欠かせません。
下の子たちは、手話がないとお兄ちゃんに伝わらないことがあるため、手話は大切なツールとして自主的に身につけました。
- UDトーク
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スマホ、タブレットにアプリをインストールすると、音声を文字に変えてくれるツールもあります。
国会や議会などの中継でも、見られていますね。
聴覚障害児・者の選択は色々ありますが、機器や技術の発達と同時に社会の理解や制度も変わっていくと良いなぁと思います。
聴覚障害児のママへ
聴覚に関わらず、我が子の障害を知ったときには悲観したり落ち込んだりする方が多いかもしれません。
知らないからこそ不安もあるし、少数派であるからこそまだまだ社会で困ることもあります。
ママの不安の多くは、自分の知らない世界のことを、我が子にどう教えてあげられるだろうか…という思いではないでしょうか。
の障害を知った瞬間「この子は私を選んでくれた!」と、晴れやかな気持ちになりました。ママになっただけでも嬉しいのに、この、ハンデと言われるものを持ったこの子が私の子だと、未来にワクワクしたんです。
私の知らなかったこと、素敵なこと、特別なことを、この子はきっといっぱい私に教えてくれる、見せてくれる…と思いました。
音声が通じないことへの不安はありましたが、子どもとママの体温は何も変わりません。
実際に、私は今、手話の世界に魅せられて一生懸命勉強をつづけ、通訳のお仕事をしています。
大丈夫。子どもは胸を張って聴覚障害を持つ素敵なあなたでいればいいし、ママが辛い時、きっとお子さんが支えてくれます。聞こえないというだけで、あとは何も変わらないのです。
私と息子がぶつかった壁、感謝とこれから
息子の障害を比較的すんなり受け入れた私が、初めて泣いたのは、全く知らない人の言葉でした。
「え?私もこの子も、しあわせなんですけど~!」と反論したいのを抑え、こういう偏見に、息子は一生触れていくんだんぁと、痛む気持ちを抱きしめました。
「本人が言ってきたらどうするの?」とのことでしたが、今、息子は小学6年生。いまだに聞こえないことを私のせいにしたり謝れと言ってきたことはありません。
色々なところで補聴器を「それ何?」と聞かれ、「これ補聴器!」と明るく答えます。
公園で知らない子に聞かれ、お母さんは気まずそうにしていましたが、子どもたちの無垢なやり取りに驚きと安堵の表情になった方もいました。
すんなり受け入れたつもりでしたが、隠しきれない不安や責められたことへのショックもあったかもしれません。私の作り笑顔が痛々しかったのでしょうか。そのママ友たちとは、今も親友と言える関係です。
傷つくようなことがあっても、私は周りの人の本音も温かさも知ることができました。
幼稚園から、喧嘩の原因が耳にあることもありましたが、私は喧嘩を通してこそ本当に理解をしてもらえるものだと思っていました。
お互いに理解が深まり、幼稚園時代を含め、ぶつかった子たちは皆心強い理解者・仲間・友達になってくれています。
下の二人も、明るく真っすぐお兄ちゃんの障害を受け入れています。喧嘩もするし、理解できるまでぶつかるし…。この子から、また、ぶつかる壁も含めこの子のおかげで出会うすべてから、日々得るものがあると感じています。
出産を控えたプレママの皆さんへ
もしも生まれてきた子に障害があったら…と、心配ばかりしていても始まりません。
「案ずるより産むがやすし」です。不安より楽しみに、素敵な出産をしてくださいね!