シュタイナー教育ってどんなもの?教育理念と子供への影響

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2017/09/04

シュタイナー教育で育っている子供

「シュタイナー教育」とは、20世紀の始めごろ、ドイツのシュタイナーによって提唱され、世界中に広まった教育方法です。

自由教育の象徴的存在として位置付けられています。子供には自ら学び育つ力があるので、それを促してやるのが目的です。

子供の自主性を伸ばす教育とはどのようなものなのでしょうか。具体的な方法論について紹介します。

知能だけでなく精神を育てる教育法

シュタイナー教育理論は、教育学だけでなく、独自の哲学的理論に裏打ちされています。

それは人間を一つの宇宙、ミクロコスモスとして捉えるなど、かなり複雑なもので、全てを理解することは困難だとされています。

ですが、理論が発表されてから、知的障害を持った子供、既存の学校に馴染めない子供の親からは広く支持されています。

普通の学校の様にただ知識を教え込むのではありません。子供の精神性を育てる事を目的としています。

シュタイナー教育を専門に行う学校も、世界に780校ほど存在しています。一般的な学校に適応出来なかった子供の受皿としての側面もあります。

子供とは完全に自由で独立した存在

基本的なシュタイナーの教育理論は、キリスト教を元にして構築されました。ですが、宗教教育がシュタイナーの目的ではありません。

むしろ宗教の様な特定の、画一的な教えを子供に押し付けることを否定しています。

現代の学校における一斉教育は、社会に適応して、社会の役に立つ人間だけを育てる物だ、という批判に立った考え方です。

そうではなく、子供とは、精神的に完全に自由な存在なのであり、その意思の方向を大人が妨げてはならないと考えています。

精神性の自由の保証、あるいは、精神的に誰にも依存しない生き方の出来る子供を育てること。それがシュタイナー教育の要です。

心と体を併せた独特の発達段階と教育

シュタイナーの理論には、子供を育てていく上で独自の発達段階とそれを構成する要素が提示されています。

  • 自我…自分自身に目覚めること
  • 感情の発現…アストラル体と呼ばれる
  • 生命力の伸長…エーテル体と呼ばれる
  • 物質である肉体

この4つの要素は、誕生してから肉体的な成長と供にそれぞれが発達変化していくと考えられています。

7年単位の発達段階

4つの要素は、7年単位でその発達の順番を変化させていきます。

7歳まで
生物の基本である肉体が成長し、必要な筋肉動作を身に付けます。そして、エーテル体である生命力がどんどん発展して行きます。

この時期の基本は子供の生きる力を刺激することであり、後の発達の土台をつくる大切な時期に当たります。

14歳まで
肉体と生命力が安定し、精神が育ち始める時期に当たります。この時期、感情の芽生えが始まります。

自分の感情を豊かに表現することが目的とされ、そのために芸術面での発達に重きが置かれます。

21歳まで
感情が安定し、自我の獲得が完了する時期です。このころになると、肉体的、感情的な表現を自由に行うことが出来るようになります。

思考も抽象的になって行き、言語の表現、数学的な思考などを、完璧に操作するようになります。

シュタイナーは、この発達段階をクリアしていくことによって、誰でも精神的に自律した存在になれると考えました。

何者にも縛られずに自由であること。それこそがシュタイナーの目指しているものであり子供の自然な姿と考えられているのです。

シュタイナー教育の実践法

子供の精神性を養うために、独特の教育方法が実践されています。

  • 点数で評価をしない
  • テストを行わない
  • 子供がどれだけ自主的に動いているかで成績を判断する
  • 感情教育を重視する
  • 自主性を養う事に重きを置く

これらの目的を実践するために行われているのが、シュタイナー教育学校の個性的な教育法です。

既存の一斉教育とはかなり違ったものになっています。子供の自由を伸ばす教育とは何でしょう。具体的に見て行きます。

芸術教育

肉体的、精神的、感情的各面での成長を促すための一番の要とされているのが、芸術教育です。

国語、算数と言った科目扱う時にも、実物のリンゴを用いたり、本物に触れることによって、感受性を養いつつ、知識を増やします。

芸術教育の具体的な内容

  • 絵画
  • ダンス
  • 物語
  • 演劇
  • 合唱

子供が感情的に、感覚的に成長していくことを促します。これらの働きかけは、肉体と精神を同時に刺激することの出来る合理的な方法です。

1つの科目を学び続けるエポック教育

シュタイナー教育に、時間割は存在していません。学習を行う時は、一つの科目に数週間単位の時間を掛けて取り組みます。

この方法をエポック教育と言います。もちろん、子供の自由を促すために、選ぶ科目も自分で決めさせます。

1つの科目を学んでいる間は、他の事は置いておきます。エポック教育中の科目に集中することで、国語なら国語、算数なら算数の知識を掘り下げて行きます。

ある程度その科目についての知識が深まったら、また別の教科の学習へと移行して行きます。

この様に、毎日複数の教科をとびとびにやって行くのではなく、一つのテーマについて自分の気が済むまで深めていくというのが特徴です。

教科書は使わない

学習をしている間、教科書は用いません。みんなが同じものを使って勉強するというスタイルではないのです。

あくまでも自主性を求めるために、学校での勉強中は子供たちが自分の思い思いの教材を使って、カリキュラムを進めて行きます。

そして、エポックノートと呼ばれる個人ノートに、その結果を記録して行きます。これはいわば個人的な教科書となるもの。

シュタイナー教育は、子供がそれぞれ自分なりの教科書を独自に作って行くという手法が取られているのです。

そのため一人として同じ内容の教科書を持っている子供はいません。自分の感覚や感情に従ってテキストを選ぶことで、感性を養い、その自律性をも育てます。

新しい教育の方法としてのシュタイナー教育

現在日本の学校の多くでは、みんなが同じ教科書を使い、同じ科目のテストを受けるという方法が取られていますね。

これは多くの子供に一斉に同じスキルを身に着けさせるという利点がある一方、「人間を機械の様に同一に育てる方法」として、否定的な意見もあります。

シュタイナー教育の一番の特徴は、この画一的な教化を脱却し、子供を一人ひとり自由に個性的に、精神的に豊かな人物にすることを目指します。

しかしそれによって、既存の科目教育に遅れが生じ、大学受験などに対応できないなどのデメリットもあります。

子供の自主性を重んじた、画期的な教育法という評価は間違っていません。お子さんをどんな風に育てたいかを見極めたうえで、学校を選んでください。

▼モンテッソーリ教育についてはコチラも参考にしてみて!

みんなのコメント
  • ウチヤマチアキさん

    初めまして。米国のオレゴン州ポートランドのシュタイナー学校で日本語を教えているウチヤマチアキと申します。ほんわかと暖かい記事を読ませていただきました。どちらの教育についても、客観的に文章がまとめてあって、共感が持てました。ありがとうございます。

    補足になりますが、モンテッソーリとシュタイナー教育の大きな違いの根本は、モンテッソーリ教育は、子供の感情と意思を結びつける教育。つまり、子供が興味を持ったもの、子供が好きだと思うものを伸ばし、応援する教育です。シュタイナー教育は、子供の感情と意思を切り離す教育。つまり、子供の好きキライを問わず、子供の成長に必要なものを与えていく教育です。そのためモンテッソーリ教育では、子供が得意で、その子の心がときめいたものを選択させますが、シュタイナー教育では、得意不得意にかかわらず、どの子供も12年間音楽も体育も外国語も芸術もオイリュトミーも、数学も歴史も科学も言語も、全てを必修として学ばなければなりません。言い換えれば、モンテッソーリ教育は早くから「ある道に長けているスペシャリスト」を育て、シュタイナー教育では、逆に「どの道にも明るいマルチ人間」を育てる教育であるといえるでしょう。

    • オゼキ ナオミさん

      ウチヤマチアキ さま 
      初めまして。私は、愛知県名古屋市在住の臨床心理士です。以前は高校数学の教師もしていました。2年前に愛知総合HEARセンターを開設し、その中でオルタナティブスクールに取り組み、不登校、引きこもりの高校生を対象に“カウンセリング+Education”を行い始めました。そこで、モンテッソリーとシュタイナー教育がずっと気になっており、何とか今の日本の高校教育に取り入れられないものかと勉強しています。今回のウチヤマさまのコメントはとてもわかりやすく、其々の核心を知る一つの視点となりました。ありがとうございます。
      そこで、二点質問があります。
      ①二者の共通点は?「子どもを理解しようとしている事、それを教育の中にわかりやすく取り入れている事でしょうか?」
      ②両者を統合的に教育に取り入れる事は出来ないでしょうか?いいとこどりになり、本質を亡くしては意味がないと思えます。しかし、両者が必要に思えます。

      日本の子どもは、好奇心を持っても意識して行動できにくい環境にあるようです。また、ゆっくりと自然を感覚でとらえ表現する知恵や体験が与えられることが十分ではありません。教師も子どもも親も疲れていて、ゲームや動画に見入る事で自分を捉えて動けなくしています。まるで、それでいやせるかのように、逃避しているかのように・・・
      日本の子ども達にとり、何が必要と考えられますか?
      ウチヤマさんのその環境からの想いをお聞かせ下さると嬉しいです。
      突然、この様なメールで失礼します。どうぞ、宜しくお願い致します。

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