妊娠高血圧症候群の症状。初期症状なら悪化の回避が可能!
妊娠高血圧症候群の主な症状は「高血圧」と「蛋白尿」です。しかし、この2つについては妊婦健診を受けるまで気付くことができません。
妊娠高血圧症候群の診断基準となる症状と、診断前に感じられる兆候や自覚症状について調べました。
この記事の目次
高血圧と蛋白尿が主症状!診断基準について
妊娠高血圧症候群は、「妊娠20週以降~分娩後12週までに高血圧がみられる場合、または、高血圧に蛋白尿を伴う場合に診断される」と定義されています。
(日本産科婦人科学会 妊娠高血圧症候群(PIH)管理ガイドライン 2009による)
高血圧・・・収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上
蛋白尿・・・1日あたり0.3g以上の蛋白が尿中に出ること
自覚症状が現れていなくても、すでに体に異変が起きている場合があります。妊婦健診を定期的に受診し、高血圧・蛋白尿の有無を調べることが、妊娠高血圧症の早期発見につながります。
では、検査ではどんな症状がわかるのでしょうか。高血圧と蛋白尿の検査方法や、異常を表す数値について調べてみました。
高血圧・・・血圧140mmHg/90mmHg以上は要注意!
高血圧の診断には、血圧測定が用いられます。血圧の数値は、収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)で表されます。
日本産科婦人科学会の「妊娠高血圧症候群(PIH)管理ガイドライン」に記されている高血圧の数値と診断方法、血圧測定の注意点についてまとめました。
診断方法について!数値により診断が異なる
血圧が一定の数値を超えると「高血圧」と診断されます。さらに数値が高い場合には「重症の高血圧」に分類されます。
- 【高血圧と診断される数値】
-
収縮期血圧 140mmHg以上~160mmHg未満 拡張期血圧 90mmHg以上~110mmHg未満 収縮期血圧・拡張期血圧のいずれか、もしくは両方がこの条件を満たす場合に、高血圧と診断されます。
- 【重症の高血圧と診断される数値】
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収縮期血圧 160mmHg以上 拡張期血圧 110mmHg以上
- 【高血圧の診断方法】
- 1回目の測定で高血圧の数値が出た場合には、約6時間以上あけて数回測定します。そのうち2回以上の計測で高血圧の数値を満たす場合に「高血圧」と診断されます。
血圧を測る際に正しい数値を出すための注意点!
血圧が高めと言われる方、数値に波がある方は、測定中の姿勢や測定前の過ごし方にも気を配ってみましょう。正確に血圧を測るには、次の点に気をつけます。
- 測定前2分~5分間は、座った姿勢でしばらく安静にする
- 測定時には腕を心臓の高さに保つ
- 足は床に付けた状態で測定する
蛋白尿・・・尿たんぱく(+)なら精密検査を!
尿を調べることで、腎臓機能の異常を知ることができます。蛋白尿は自覚症状には現れませんが、妊娠高血圧症候群の重要な症状の1つです。
尿蛋白を調べる方法と、結果の見方についてまとめました。
検査方法について!「定性法」と「定量法」の違い
蛋白尿の診断には、尿検査が用いられます。尿検査の方法には、「定性法(試験紙法)」と「定量法」があります。
- 定性法
- 一般的な尿検査の方法です。おおよその尿蛋白濃度を知ることができます。結果を「陰・陽(-/±/+/2+/3+)」で表します
- 定量法
- 精密検査の方法として用いられるのが「定量法」です。原則として24時間の尿中蛋白を調べ、具体的な濃度を測ります。
定性法による検査結果の見方
定性法による尿蛋白の結果は、次のように分類されます。陽性反応を表す「尿蛋白(+)以上」が出た場合には、定量法による精密検査を受けることが勧められています。
正常 | 尿蛋白(-)または(±) |
---|---|
軽症 | 複数回、連続して陽性反応が出た場合 |
重症 | 複数回、連続して(3+)以上出た場合 |
なお、妊娠中は非妊娠時よりも尿蛋白が出やすく、定性法(+)でも病的な蛋白尿ではないことがあります(偽陽性)。ただし、血圧が高い場合には慎重になった方がよいでしょう。
定量法による検査結果の見方
定量法による精密検査では、1日あたりの尿蛋白量を調べ、次のように結果が表されます。
正常 | 1日あたり尿蛋白300mg以下 |
---|---|
軽症 | 1日あたり尿蛋白300mg以上、2g未満 |
重症 | 1日あたり尿蛋白2g以上 |
異常を感じたら早めに相談!妊娠高血圧症候群の自覚症状
さて、妊婦健診を受ければ妊娠高血圧症候群になっているかを調べられることがわかっていただけたと思います。しかし、健診前に自覚症状として気付くことはできないのでしょうか。
実に、半数近くの方が兆候を感じていたというのです。症状の出方には個人差がありますが、妊娠高血圧症候群の自覚症状には、次のようなものが挙げられます。
- 【自覚症状】
-
- むくみ
- 頭痛
- 倦怠感・眠気
- 目がチカチカする
- 吐き気
- 動悸
- 子宮の収縮
- 急激な体重増加
これらの症状にあてはまる場合には、病院を受診して医師の診察を受けましょう。尿検査や血圧測定の結果を踏まえ、総合的に判断してもらえます。
また、まったく自覚症状がないまま、妊婦健診で高血圧が発見され、入院や帝王切開を余儀なくされるケースもあります。
ここでは、妊娠高血圧症候群を発症しやすい時期と自覚症状について説明していきます。
妊娠高血圧症候群の発症時期・・・妊娠32週未満は重症化しやすい早発型
妊娠高血圧症候群は妊娠後期に発症しやすい病気です。妊娠初期にも同じような症状が出ることがありますが、その場合はつわりである可能性が高いでしょう。
妊娠20週を過ぎ、つわりが治ったはずなのに、また頭痛や倦怠感・吐き気などの症状がある場合には妊娠高血圧症候群の可能性が疑われます。
特に、妊娠32週未満で発症した場合(早発型)は重症化することが多いため、注意が必要です。
こんな症状は妊娠高血圧症候群の兆候かも・・・自覚症状から読み取る体の異変
妊娠高血圧症候群は自覚症状だけで判断するのが難しい病気です。ここでは体験談でよくみられる自覚症状を4項目に分け、ピックアックしてみましょう。
- むくみ・尿量の減少
- 腎臓の機能低下を示します。一晩寝ても治らないほどの浮腫には注意が必要です。
- 頭痛・めまい・吐き気・目がチカチカする
- 高血圧の兆候として現れます。倦怠感、眠気、動悸などを起こすケースもあり、子癇や脳卒中のサインという可能性があります。
- 子宮の収縮
- 常位胎盤早期剥離など、子宮内に異変が起きている可能性があります。
- 体重増加
- 急な体重増加は、血圧上昇につながる可能性が高くなります。
ただし、特徴的な自覚症状である「むくみ」や「子宮の収縮」は、妊娠高血圧症でない場合もあるので判断材料には適しません。頭痛やめまいなど、他の症状にも注意してみましょう。
高血圧や尿蛋白が起きるメカニズム
妊娠高血圧症候群の原因は、「胎盤形成時のトラブル」だと考えられています。胎盤がきちんと機能しないことで血流に異常が生じ、様々な症状を引き起こします。
高血圧や尿蛋白など、各症状が起きる仕組みをみてみましょう。
胎盤の血液循環がうまくいかない・・・赤ちゃんの発育悪化と高血圧の引き金に
胎盤がきちんと作られないと、胎児への血液の流れが悪くなります。赤ちゃんに送る酸素や栄養が不足してしまい、赤ちゃんの成長が遅くなる可能性が高くなるのです。
妊娠中の高血圧は「子癇」というけいれん発作の原因となり、常位胎盤早期剥離のリスク因子にもなります。
母体の血管細胞の損傷・・・蛋白尿、凝固障害を引き起こす
胎盤で血流トラブルがあると、母体の血管に負担がかかり、全身の血管細胞が傷つくことになります。特に、腎臓の血管が傷つくと、蛋白尿などの症状を引き起こします。
同様に、腎臓のフィルター機能が低下すると、老廃物を排泄することができなくなり、むくみの発症にもつながります。
さらに悪化すると、全身の血管障害によって赤血球の破壊や血小板の減少が起き、出血が止まらなくなってしまうことがあります。(HELLP症候群)
重症化する前に適切な治療を・・・妊婦健診の受診が要
重度の妊娠高血圧症候群になると、母子の命に危険を及す合併症を発症する恐れがでてきます。
子癇、HELLP症候群、肺水腫、急性妊娠脂肪肝、常位胎盤早期剥離、胎児発育不全、低出生体重児、胎児機能不全、子宮内胎児死亡
妊娠高血圧症候群の発症を防ぐ方法は、まだ見つかっていません。症状や兆候を知っておくことで、病気の早期発見につなげましょう。
また、病気を重症化させないためには、妊婦健診をきちんと受診して軽症のうちに治療することが重要です。