保育士不足の原因と国の対策は?ホワイト保育園の探し方も紹介
今、保育士不足は深刻な問題です。待機児童に直結するので、関心をもつママも多いのではないでしょうか。
実際には、保育士資格を持つ人数が足りていないのではありません。現場で働かない有資格者がとても多いというのが実態です。
保育士の仕事の実態、国や自治体の対策はどうなっているのでしょうか。
この記事の目次
保育士不足の原因
保育士資格を持つ人の半分以上が現場で働いていない現実があります。実際に資格を持っていて働かない人、離職した人、復帰しない人の多くが頷く保育士の辛さはどのようなものなのでしょうか。
- お給料が安い、昇給しない
- 「遊ぶだけ」と言われるが、かなりの肉体労働
- 保護者とのトラブルで精神的に限界
- 女の職場でいじめが横行
- 出会いが無くて、結婚もできない
- 子育てしながら保育士は、責任や負担が大きすぎる
これが保育士の「あるある」という、大半が頷く現状です。
保育士のお給料は、多職種と比べても下の下
厚生労働省の調査、そのほかのデータから、保育士の給与と業務のバランスは、とても見合っているとは考えにくく、正職員・非正規職員共にお給料は、下の下。保育士の給与は、他の職種と比べても決して良い方だとは言えません。
地域によっては250万円程度の園も多いと考えられます。
非正規のパートの職員の場合、時給はその自治体の最低賃金レベルという園も多く、資格を持つ職種の中でも優遇されていない仕事だと言えます。
6割の潜在保育士&過酷な業務に離職率10%以上
保育士資格を取得している人の内、現場で働く人は半分を切っています、いわゆる「潜在保育士」と言われる人がなんと6割に上るのです。
このように、不足していると言っても、全国的に保育士の数自体は今の倍以上います。
そして潜在保育士の中には、「子どもが好き」で保育士になったにも関わらず働かない。「子どもが好き」だからこそ働かないという声がとても多いのです。
保育現場の多くはブラック?
「子どもが好き」だけでできる仕事ではなく、「子どもと遊んでいるだけでお給料がもらえる」わけではない。では、これだけ不足している保育士という仕事はどういったものなのでしょうか?
- 拘束時間は、就業時間+数時間が当たり前
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普通、労働時間とは、就業時間(始業から就業)-休憩時間と考えられています。
保育士の昼食は、子どものお世話をしながら一緒に食べる給食の時間のことで、「休憩」とは言い難いものです。
また、子どもたちが帰った後、ミーティングや記録、明日以降の保育の準備は、到底就業時間内に終わるものではないのです。
- タイミングなんてどこにもない。有給のとりにくさ
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保育園には長期休暇がありません。そして、担任を持っているとなかなかお休みを取ることが難しく、配慮の無い園では「有給」など耳にすることもありません。
特に大きな行事の前は残業が積み重なり有給休暇どころか休みをとることすらは難しい休日返上の日々になるのです。
- 安全確保の難しさと責任の重さ
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保育士の大きな責任である「安全確保」ですが、一人で多くの子どもたちを把握することはとても神経を使うものです。
- 水遊びでも、10センチの深さでも溺れることがあるという考えのもと、常に人数把握、全員の所在を確認しながら遊んでいます。
- 乳児は寝ていることが多いですが、SIDSの危険性を極力下げるため、5分ごとに呼吸の確認をするなどのケアをしています。
そんな中でも数分の間に事故が起きた場合、自責は勿論とてつもないです。保護者から問われる問題も大きくのしかかり、保育の現場から遠ざかる保育士は多いです。
保育士向けの訴訟のための保険などもあり、金銭的な負担を軽減できる場合があります。
しかし、大好きな子どもにけがを負わせたり辛い思いをさせたりすることは、大変苦しいものです。その上で保護者からの過度の追及は、お金の問題だけではありません。
- 健康を把握し適切に対処する負担
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保育士は、常に子どもを第一に考えています。特に月齢の低い子どもたちは、体調が急変することがあります。同時に、熱が下がることも多くあります。
働く保護者のご都合を思えば、簡単に「発熱=連絡」とはならず、お迎えをお願いするタイミングも一生懸命考えます。
高熱で急を要する場合には園から診療に連れていくこともまれにありますが、ボーダーラインのはっきりしない問題の方が日々の保育の中では断然多いです。
その中で「これくらいで連絡しないで欲しい」「仕事に大きな穴をあけた責任を」等の保護者の言葉は辛いです。どうしても仕事を抜けられないことはありますよね。でも、苦しそうな子どもに寄り添い一緒にママのお迎えを待つ保育士にとって「変わってあげられない」といった苦しい気持ちも知っていていただきたいというのも本心ではないでしょうか。
- 体力勝負の肉体労働
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「遊んでいるだけでお給料がもらえていいね」という言葉に、引っかかった経験のある保育士は9割に上るのではないでしょうか。
遊び以外の仕事が沢山ありますし、「遊ぶ」ことも、毎日何時間もとなると身体的疲労は大きいです。
保護者もご存知の通り、子どもの体力は無限です。そして、人数が増えると倍ではなく数倍から二乗以上になります。
- だっこも毎日何人分
- 「もう一回」も人数分
- 姿勢はほぼ中腰
- 常に小走りから駆け足
- 遊びの間も一人一人への配慮で集中力は常に100パーセント
- 一日に何度もある、トラブルや事故等のヒヤリへの対応も
- 意外と多い書類の業務は残業か持ち帰りで
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保育士の仕事は、子どもとの関わりだけではありません。一人一人の成長の記録や課題、保育目標や達成度など、それぞれに対してきめ細かく対応するための記録があります。
- 個人の記録
- 日案
- 週案
- 月案
お子さんの良い面を伸ばし、苦手を乗り越えるための手立てを考えるにも必要不可欠なもので、進級の際には次の担任に引き継ぎますし、小学校への申し送りがある場合もあります。基本的な生活習慣においては、排せつや衣服の着脱の自立へのステップや、人間関係、遊びの種類や興味、言語的な習熟度、性格や食の好み等色んな面を見ています。
毎日成長する一つ一つを、できる限り見逃さずに記録し、次につなげるのです。年度末といった節目にきちんと様式に沿って残すためにも、日々の記録は大切です。
そんな大切な書類だからこそ、時間もかかります。多くの先生は、子どもが帰った後か、お家で作っています。
他にも、いつの間にか季節に合わせて変わっている壁面の制作も、子どもと一緒にできないものが沢山あります。保育室の環境づくりも大切な仕事であり、大変な作業で す。
- 保育士の職業病、腱鞘炎や膀胱炎
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保育士は、自分の体よりも子どもの「今」を優先しがちで、少しずつ無理をしてしまう先生が多いです。
- 抱っこのし過ぎで腱鞘炎になる先生も多く、日々の少しずつの無理が重なって病院行きに…
- 「膀胱炎」は、トイレに行く時間もないほど忙しいことの現れ
実際に、保育中に好きな時間にお手洗いには行けず、子どもたちが落ち着いていて、一人保育士が減っても安全が確保される状態の時にしか外せません。
実は私も、保育士時代に膀胱炎になり、さらに無理をして「腎盂炎」に至った経験があります。
- 行事前のサービス残業や徹夜の仕事
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保育士の仕事の特徴の一つに「行事」があります。運動会、発表会のほか、年に数回大きなイベントを抱える園がほとんどです。
- 数か月前から内容を考え、具体案を出して検討し、新しいことにはリスクがあるので子どもの安全、子どもが楽しむために会議を重ねる
- 1ヶ月くらい前になると、衣装や小道具づくりに何時間も費やす(時には保護者からのクレームでやり直しも…)
徹夜になっても、日々の保育がおろそかにならないように、「ちゃんと休む」努力までしています。ギリギリのところまで、子どもたちのために頑張っています。
先生が体調を崩したら、困るのは子どもたち。多くの保育士は、「頑張りすぎない」ことまで強いられることもあるのです。
国の対策「保育士確保プラン」
厚生労働省は、待機児童問題や保育士不足に対する対策の指針を発表しています。実際に全国的な保育士不足の現状を調査し、以下のような対策を実施しています。
- 保育士資格を取りやすく
- 都道府県が実施いている保育士の国家試験は、年1回だったのが2回に増えました。
- 賃金アップ
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平成29年度から具体的に賃金アップされており、月6000円程昇給しています。
また、キャリア・役職のある保育士を対象に補助金を出しています。使い方は、園の裁量になるので、実際に現場の職員が全額貰えるというものではありません。
副園長・主任などの役職を持った保育士だけが恩恵を受けるというわけでもありません。
- 離職者の復帰対策
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ブランクのある保育士に対して、研修等を積極的に実施しています。
また、自治体によって異なりますが、再就職支援として準備金貸し付けや保育士ママへの保育料補助などもあります。
自治体・園でできる保育士不足対策
国の対策以外でも、園や自治体で保育士のお給料を上げることは効果的です。また、目的別に対策を考えてみましょう。
- 就職率を上げる
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多くの有資格者は、職業安定所やネットで職場探しをしています。見るのはお給料と就業時間、お休み、です。
多くの園の求人では、3交代等で時間の表示がありますが、「これは絶対に超える」という前提で見ています。
就業時間に、休憩や保育時間の詳細があると目を引きます。特に、休憩を別室で設けている園は明記すると良いのではないでしょうか。
- 職場環境改善
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一番大切で不可欠なのがヒアリング。長く一つの園で働いていると、他の園と比較ができず、自分の園の改善点に気付かないことがあります。
特に新採用の保育士には、沢山ヒアリングをすることで環境改善につながり保育士が離れません。ヒアリングすること自体が高評価につながります。加えて、保育士のネットワークは広く、情報は伝わりやすいので、実際に働きやすい保育園の噂もよく耳に入ります。もちろん逆もすぐに広まります。
- 離職率を低減
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なぜ保育士がその園を辞めるのでしょうか。おそらく誰でも、何かのきっかけですぐに退職を決めるわけではありません。
悩んだり改善の努力をする保育士の姿に敏感になりましょう。
例えば、園の倉庫がいつも雑然としていて、時々整理されていても、気づかないでいませんか?何も言わずに一人で職場環境を良くしようと片付けている保育士がいるかも知れません。
- 復帰しやすい職場
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家庭のことをしながら仕事を続けることはハードで、産休育休ではなく退職する保育士は多いです。
そんな保育士が、ちょっと子育てが落ち着いてきたとこには、「パート」を望む場合が多いです。正職員のプレッシャー、責任感で復帰するには足踏みしてしまいます。
パートは入れ替えが続く危険性もあり、正職員が多い方が園にも保護者にも安心です。でも、復帰を望むママ保育士には、ちょっとだけ気楽に保育に携われる環境を用意することも手立てのひとつです。パートであってもプロ意識はあり、前の職場であれば内情もわかっているので保育に大きな差はないでしょう。正職員とのバランス次第で園にもたらす効果は絶大です。
保育士の抱える仕事の悩み
- 夢でまでうなされる?モンスターペアレンツに怯え健康被害も
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お子さんを思う気持ちは十分理解しているつもりです。問題があれば話し合うことは大切です。しかし、理不尽な要求も多いのが現状です。
いわゆるモンスターペアレントと呼んでいいと考えられる保護者の執拗な攻撃に、うつや適応障害に悩む保育士も多いです。
- 女の職場あるある?いじめに耐えて笑顔で保育
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よく「女の世界」といわれる保育士の世界。職場の中でのいじめもよく聞きます。子どもには悟られないよう、笑顔で過ごし影の涙は、より辛く心を押しつぶします。
- 妊娠・出産の自由がない。自分の人生も年度計画
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「年度」で計画される保育園。自身の進退も、基本的には年度末が目処となります。しかし、結婚しても働く場合の、妊娠・出産は、そう簡単にコントロールできるものではありません。
行事前に「できちゃった」が重なり、一気に数名退職となるのは園にとって大きな痛手です。
逆に園側が「今年度は妊娠しないように」と通告するのもおかしな話です。園に迷惑をかけないようにと、妊活を優先して無職を選ぶ先生が多いのはこのためです。
保育士の働きやすい環境とは?ホワイト保育園について
ブラック企業と呼ばれる会社のように過酷な労働環境の保育園を「ブラック保育園」といいます。保育士不足の今、注目されているのが「ホワイト保育園」です。
離職率が低く、復帰率の高い「ホワイト保育園」とは、どのような園でしょう。
- 就業時間、年休の徹底、文書作業も就業時間に
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保育園の管理者が、きちんと就業時間・労働時間等を、法にのっとって管理する園です。
保育士側から主張するのは勇気のいることですが、園側がきちんと「有給消化」等を徹底してくれたら良いですね。
残業代が出るのも大切ですが、保育士の仕事をきちんと理解し、文書作成を保育時間内に組み込んでもらうこともできます。
きちんと人員補充をして休憩時間を別室で確保する等の配慮がある園は働きやすいです。
- 保育士の配置にゆとり
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保育士の人員配置は、法で定められた人数があります。例えば0才児は3人に1人の保育士が必要です。しかし、2人で4人見るのと、1人で3人見るのは負担が全然違います。
必要最少人数ではなく、ゆとりのある人員配置で、保育の質も断然上がります。
- 人間関係は、お互いの気配り。ミーティングは大切に
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先生同士の風通しを良くすることも大切です。現場の声を管理職に届ける機会をわざわざ作ってヒアリングすることは、保育士一人一人がストレスを溜めないコツです。
時に生意気、失敗ばかりの「ゆとり」と言われる先生もいるかも知れません。厳しいだけではなく、お局様がちゃんと新人の話を聞いて寄り添ってくれたら、期待以上の力を発揮できるかもしれません。新人の先生は、もしかしたら「古い考え」を押し付けてくるかもしれない先輩から学ぼうという姿勢を大事にしましょう。積極的に「教えてください」という後輩は、先輩先生から可愛がられるのではないでしょうか。媚びるのではなく、慕うというイメージです。
人間関係を円滑にするための役職も大切です。もし、相容れない人間関係があるなら、間に入って調整する先生がいると良いですね。
辛いだけの仕事ではありません。自分に合った働き方を
保育士は、現状として、まだいろいろな問題を抱えているのは事実です。しかし、日々得られる感情は、他では感じることのできない温かいものです。
子どもの笑顔、可愛い言葉、ちょっと成長をともに喜び、体いっぱいの喜怒哀楽…。
努力というのは、無理をすることではありません。勇気をもってつらい職場を辞めても良いと思います。
自分に合った、自分が生き生きと働ける職場で「保育士」としての力を発揮していただきたいと思います。
保護者の皆様には、少し保育士の現状を理解していただけるとありがたいです。きちんと話し合い、お子様のために良い環境を保護者と保育士で一緒に作れたら良いですね。
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まだデータがありません。