ネガティブな事ばかり言われる食生活が子どもに与える影響とは
「ちゃんとお行儀良くして。」「バランスよくなんでも食べなさい。」「早く食べて」…かわいい子供のことを思えばこそ、ツッコミどころ満載の食事のシーン。健康で、すくすく成長してほしい。これは、家族共通の気持ちだと思います。
一生懸命に食事の用意をしているお母さんは、なおさらそういった気持ちを強く持つでしょう。バランスのとれた栄養をたくさんとって、大きく成長することはとても大切なことです。
でも、その気持ちが親からの一方通行になっているとしたら…。
家庭の食事と食べることの意味
幼児期、園での懇談会などでも「少ししか食べない。」とか「食べるのが遅い。」などの悩みをあげるお母さんが多くみられます。
親としては、たくさん食べて大きくなってほしい。一生懸命作った食事を、おいしいと言って食べてほしい。という気持ちがあって当たり前です。
ですから、思ったより食べなかったりグズグズと食がすすまない様子がみられると、心配になったり、腹が立ったりしてしまうのですね。
母親基準?子ども基準?
そもそも、私たちは何を基準にして、子どもが「食べる」とか「食べない」と思うのでしょうね。
何の根拠も無く、自分が「このぐらい食べてほしい。」という気持ちより食べないからといって、怒ったり責めたりするのは、おかしなことかもしれません。
子どもにしたら楽しい食卓どころか、食事の時間は辛くて嫌な苦痛の場になってしまいます。いやいや食べて、食事がすすむわけはありませんよね。
「バランスのいい食べ物をたくさん食べて、元気に成長してほしい。」…お母さんの気持ちを上手に伝えて、子どもも楽しく食事できるようになるといいですね。
「子どもは好き嫌いせずに、たくさん食べるべき」などという母親基準の理想にガチガチになりすぎていないか、振り返ってみませんか。
食事の時間、子どもが楽しくなさそうだったら要注意。お母さんの言葉が、子どもを苦しめているかもしれません。
「家庭の食卓が苦痛」の悪影響
お母さんがよかれと思って言っていても、自分の「食事の理想」をかかげて怒ったり責めたりばかりでは、逆効果。
食事の時にガミガミ怒られてばかりいると、子どもにはどんな影響があるのでしょう。
身体からのSOS
ストレスが溜まると、大人よりも身体の症状に出やすいのが子どもです。いつも怒られたり「早く食べなさい。」と急かされたりしながら食べて、食がすすむわけがありませんよね。すると、食べないからまた叱られる。
下痢や便秘、腹痛を多く訴えるなどの症状があれば、食事の風景を振り返ってみてください。
食べ物を消化吸収するには、リラックスした状態が必要です。大人でも緊張のあまり物が食べられないとか、胃腸の調子が悪くなったりすることがあるでしょう。嫌なことがあったから、食欲が無い。なんてことも。
子どもならなおのこと。嫌な気持ちでビクビクしたり緊張していたりしたら、体の機能がうまく働いてくれません。
同じものを食べていても、楽しくリラックスして食べているときと緊張しているときでは、消化吸収の度合いが違ってきてしまうのです。
疲れやすかったり元気がなかったりするときは、食事の時間、リラックスして消化吸収がうまくできていないのかもしれません。
心からのSOS
身体からのSOSで、リラックスできない食事では消化吸収がうまくいかない。というお話をしました。
嫌なことばかり言われながら食事をすると、食がすすみません。食べる量が少ない、または怒られてしぶしぶ量を食べてはいるものの、消化吸収がスムーズにいかないため必要な栄養素が不足してしまうことがあります。
キレやすいのは栄養不足かも?
「いつもイライラしている」「キレやすい」「集中力がない」など、情緒不安定の原因。それは、ビタミンB群が不足しているのかもしれません。
子どもの情緒が安定していないと思ったら、食卓で子どもが楽しくリラックスしているかどうか、子どもを怒ってばかりいないか、振り返ってみてください。せっかくとった栄養を、消化吸収できていないのかもしれませんよ。
また、気持ちを安定させるような食材を食卓に並べるのもいいですね。納豆や大豆などの豆類、豚肉、雑穀、卵などにビタミンB群は多く含まれています。魚(イワシやサバなど)にも多く含まれています。お手軽なツナもおすすめ。
食事は身体にはもちろん、心の状態にも密接に関係しています。いい栄養を、リラックスした状態で消化吸収させてあげたいですね。
その言葉、子供に届いてますか
親の「これを食べてほしい。」「これぐらいの量を食べてほしい。」という気持ちに答えないからといって怒られてばかりいる子どもは、どんな気持ちで食事をしているのでしょうか。
小さなことだと思われるかもしれませんが、毎日積み重なっていくと、心と身体に悪影響を与えてしまうことに。大きなトラブルにつながってしまう可能性もあります。
どんなことでも同じですが、ガミガミ怒っているだけでは子どもの心には届きません。子どもは「あ、お母さん、また怒ってる。」と、ただただ「聞き流す」ことを身につけるだけです。
母親の大切な仕事は栄養管理?
子どものために、栄養たっぷり手の込んだ料理を作ってあげるのが私の仕事。そう思ってがんばっているお母さんは、たくさんいるでしょう。
こんなにがんばって作ったんだから、大喜びでたくさん食べてほしい!そう思うのは当然かもしれません。
でも、期待通りに食が進まないからといって、子どもに怒るのはNG。「なんでもっと食べないの?」と怒られても、子どもは困るだけ。大人だって「なぜ?」と理由を問い詰められても、答えられないことが多いでしょう?
なんだかわかんないけど、お母さんがすごく怒ってる。そうすると、子どもは困ってしまってますます食べられなくなってしまいます。
「お母さん、こんなに一生懸命作ったのに!」なんて、最悪です。これは、母親の都合と期待を押し付けているだけですから。本来、子どもは意外とシンプルな食べ物が好きだったりしますし。
子どもの好きな味付けとは
わかりやすく言うと、手をかけて長い時間かけて作った料理より、きゅうりの塩もみを大量に食べたりしませんか?キャベツを手でちぎって、塩を振っただけのものとか。
うちの子どもたちは、おいしければ人参でも白菜でも生でパリパリ食べちゃいます。気がつくと、鍋の材料が無くなりそうになっていることも。
「時間と手間をかけて一生懸命作った料理=愛情」ではありません。簡単な料理は、お母さんにとっても楽ちん。おまけに、子どもと笑顔でお話できる時間が増えるなんてすごくいい!そう思いませんか?
ついでにお手伝いもプラスして
キャベツをちぎったり、きゅうりを塩もみしたりするぐらいのことは、子どもにお手伝いしてもらって一緒にやっちゃいましょう。4~5歳になったら、きゅうりを切ることにチャレンジしてみるのも楽しいですよね。デコボコでも気にしない!
そして、子どもは、作るときに自分が参加した食べ物は不思議と喜んで食べるものです。
子どもに食事を楽しませるためには、まずお母さんが食事を楽しまないとね。お母さんが食事を楽しむことを忘れていないか、振り返ってみてくださいね。
「早く早く!」時間に追われる
子どもに食事をとらせたらさっさと後片付けをして、あ!今日はお風呂もまだだった。早くお風呂に入れて、早く寝かさなきゃ。がんばるお母さんは、毎日大忙しです。
早く食事の時間にしたくて大急ぎで準備をしたのに、当の子どもは呼んでも生返事。テレビの前から動こうとしません。
「もう!いつまでテレビ見てるのよ!せっかくの食事が冷めちゃうじゃない!」ついつい大きな声で怒っていませんか?でも、大声で怒って言われる言葉は、子どもの心は聞こうとしないことが多いです。
楽しくって面白いテレビと、目をつり上げて怒って大きい声で何か言ってるお母さん。あなたなら、どっちがいいでしょうか。とりあえず、怒っている人のところには近づきたくないのが人情というもの。
こんなときは、怒鳴りたいのをぐっとこらえて深呼吸。怒るのではなく、「あったかいうちに食べようよ。そのほうがおいしいよ。」と優しく誘ってあげて。
すぐに来なくても、怒るのはNG。くすぐったり抱っこしたりして、まずは自分に注意を向けさせて。そして、目を見ながらもう一回笑顔で誘ってみましょう。「お母さん、お腹減っちゃったな。○○ちゃんと一緒に食べたいな。」でもいいですね。
テレビを見始めたりする前に「ご飯できたら呼ぶね。一緒に食べようね。」とか、ちょっと大きい子なら「短い針が6で、長い針が12になったらテレビおしまいにしようね。」と声かけをしておくのもいいですよ。
片付けたいのに話をしてばかり
食事が始まったら、箸を止めてしゃべり続け。それどころか、口の中に食べ物がいっぱい入っているのに、まだまだ話は続く…。子どもは、その日にあったことをお母さんに聞いてほしいんですね。
子どもが小さいうちは、話も要領を得ず時間も前後することが多いため「どうでもいいことばっかりしゃべって。」とうんざりすることもよくあるでしょう。
だからと言って、「さっきからしゃべってばっかりで、全然食べてないじゃない!」と子どもの話をシャットアウトするのはNG。確かに、しゃべってばかりでお箸が全然動かない子もいます。
シャットアウトされたのではなく、後でゆっくり聞いてくれるんだと思えれば、子どもも落ち着いて食事をとることができるでしょう。
ペースは人それぞれと心得る
その子によって体質は様々です。食事の早い子もいれば、遅い子もいます。たくさん食べる子もいれば、少ししか食べない子もいる。これは、食べ物の好みもそうですが、きょうだいでもそれぞれ全然違います。
唾液がたくさん出る子は、口の中の食べ物と唾液がよく混ざるので、すぐにのみこみたくなります。こんな子に「たくさん噛みなさい」と言っても、本人からすると知らないうちになくなってしまうような感じ。自然にのみこんでしまうのです。
唾液が少ない子は、口の中で食べ物と唾液がなかなかうまく混ざりません。のみこむのに、時間がかかるんですね。こんな子に無理にたくさん食べさせても、お腹をこわすだけ。
唾液の少ない子にたくさん食べさせようとすると、食事の時間はその子にとって苦痛の時間になってしまいます。その子のペースで食べられる分をゆっくり食べて、リラックスして全て消化吸収できれば、それがその子の適量なのです。
生き物は、自分が必要としている栄養や量を本能的に知っているはずです。そんなに神経質にならなくても、栄養障害になることはないと思います。身体は、必要なものをおいしく感じるようにできているからです。
食べない子や、食べるのが遅い子の成長が遅くて心配だったら、受診して確かめてみましょう。特別に異常がなければ、その子の体質なんだと思って見守ってあげてくださいね。
楽しい食卓で栄養を吸収できる
「好き嫌いが多くって」と、真剣に悩んでいるお母さんはたくさんいます。でも、子どもたちを見ていると、食べ物の好みは生まれ持ってきたものだと思えます。
同じ親から生まれ同じような生活をして育ってきても、その子によって好きなものも嫌いなものも違いますから。
幼いうちから、そんなに全てのものを食べなくてもいいのです。好き嫌いにも、時期によって変化があります。あんなに大好きだったのに全然食べなくなったとか、突然食べたがるようになったとか。
肉がダメなら豆からタンパク質
思い返すと、納豆や豆類がものすごく好きだった時期がどの子にもあるのですが、その頃は肉をほとんど食べませんでした。肉の代わりに、豆類からタンパク質をとっていたのだと思います。
幼い子どもは、肉の繊維が噛み切りにくいから苦手な子も多いんだと聞いたことがあります。
別に、「お肉を食べないんだったら、畑のお肉の豆を食べなさい」って指導していたわけではないですよ。きっと、その時の成長に必要な栄養だったから、身体が欲しがっていただけなのですね。
ひどい栄養障害でない限り、無理に食べたがらないものを食べさせる必要はありません。無理強いをしたり脅したりするような声掛けは、栄養の吸収の邪魔にしかならないのです。
野菜嫌いには具だくさんの汁物
どうしても野菜を食べさせたいと思うあまり「野菜をたくさん食べないと、大きくなれないよ。」こんな脅しを言うのなら、子どもの好きなカレーやシチューやスープに、たっぷり野菜をいれてあげればいいのです。お味噌汁も、具だくさんにすればいい。
そうすれば、野菜の栄養は野菜を食べなくても汁からとれます。また、こうやって野菜の味を少しずつ覚えていけば、時期が来たら自然に食べられるようになります。
楽しいはずの食卓で責められたり追い込まれてばかりいると、子どもが栄養を消化吸収できないばかりか、親子関係も悪くなってしまいます。思春期の摂食障害にまでつながるとも言われています。
食卓は、「家族と楽しく過ごす」「おいしい」が大切なのです。
マナーが悪くて怒ってばかり
周りの人を不愉快にさせ食べ物をまずくしてしまうようなことがないように、マナーをきちんと教えるのはまわりの大人のつとめです。
でも、幼い子どもに何度教えても、すんなり行儀良くなってくれませんよね。ついつい感情的に叱ってしまったり「女の子のくせに」とか「何度言ったらわかるの?」などという、NGワードを言ってしまったり。
子どもは、どうしてその食べ方が怒られたのかわかっていなかったりします。きっと幼いときは、ほかの人がくちゃくちゃ音を立てて食べ物をかんだり手づかみでグチャグチャやっていても、面白そう、と思うだけでしょからね。
そういうことを「気持ち悪いからやめて」と思うようになるのは、小学校に入ってずいぶん大きくなってからです。
まず、どうしてそのマナーが必要なのかを伝えてください。
そして、どうすれば人を不愉快にさせないような食べ方ができるか、見本を見せるのは周りの大人の勤めです。だんだんできるようになりますから、それまで気長に待ちましょう。
お母さん以外の、お父さんやおじいちゃんおばあちゃん、他人に注意してもらうのもいいですね。
娘は、出席した披露宴のDVDを見て「私、こんなに行儀悪いの?」と驚いていました。親としては「だからいつも言ってるでしょうに。」と心の中で思いますが。子どもにしたら、客観的に自分を見る機会でもないと自覚しにくいのかもしれません。
マナーについては、ゆるーっと気長に伝えてあげてください。食卓は、訓練や教育の場でもあるかもしれませんが、几帳面すぎるマナーは子どもを苦しませるだけです。
一緒に家族が食卓を囲んで団欒のひとときを過ごす。この幸せを無くしてまでもしなければならないことなんてあるのでしょうか。
家族で楽しく食事をする大切さ
家庭の食事は、大切な「家族とのコミュニケーションの場」です。栄養をとる、ということ以上の意味を持っています。
目を閉じて思い出してみてください。あなたが子どもの頃の、食卓の風景はどんな感じですか?意外とはっきり記憶に残っているのではないでしょうか?
そのぐらい、食卓の影響は大きいのです。お母さんによく言われた言葉は、生涯心のどこかに残ります。笑顔で「おいしいね」ならいいのです。
摂食障害は、小さい頃の食事の環境も大きく関係していると言われています。拒食症の人は「食べ過ぎだから、そんなに食べちゃダメ」と言われた経験を持ち、過食症の人は「もっと食べなきゃダメ」と言われた経験を持つ傾向があるのです。
きっと、食卓が「楽しく家族とコミュニケーションをとる場」ではなかったのでしょうね。お腹が減ったからとりあえず食べるだけだったり、強制される苦痛な時間だったり。
バラバラに食事をする日本
私の周りにも、家族がバラバラに食事をする、という家庭は珍しくありません。時間がバラバラというだけではありません。食べるものまでバラバラです。
20年ぐらい前に、そんな友人宅の様子を見てずいぶんびっくりしましたが、どんどん増えていますよね。「自分の時間とか好みに合わせられるから、そっちのほうが気楽でいいよね。」とうらやましがる人までいて、びっくりです。
家族が揃って、「同じ釜の飯を食う」という言葉がありますが、同じものを感謝していただくという習慣が消えていっています。
大人はもちろん忙しい。子どもも、少し大きくなると習い事やら塾やらで、やっぱり忙しいのです。好きでバラバラにしているわけではなくても、家族で食卓を囲むことが難しくなっているような気がします。
家族団らんは、ほんの短い期間
先日、こんな話を聞きました。彼女には4人の子どもがいます。去年、最後の一人が巣立っていったそうです。
「子どもが大きくなると、さみしいよ。4人も子どもがいるのに、もう、何年も親子揃って食事をしたことが無いんだから。お正月だってお盆だってバラバラに帰ってくるし、仕事で帰ってこられない子もいるからね。」
子どもはいずれ、巣立っていくのです。そう思うと、子どもたちと食卓を囲めるのは、一生のうちのほんの短い期間しかないのではないでしょうか。
大人になって思い出したとき、ほんわか、胸があったかくなるような食卓を作ってあげてください。
残念ながら、楽しくない思い出しかない人もいるでしょう。でも、食事の時間は訓練や教育や強制だけの場ではないのです。
もしも、「楽しい食卓を囲んだことなんかない。どうやって子どもと食事すればいいのかわからない。」というお母さんがいたら。まわりに、きっと私みたいなおせっかいがいますから「わかんないから、助けて。」と言ってみてください。
私の母もおせっかいなので、うちではいろんな子どもがご飯を食べていました。家でひとりぼっちの子、お父さんになぐられて帰れない子、家出してきた子。
夜、大人が誰もいなくて冷蔵庫が空っぽだという友達の家に、母に車で送ってもらいおかずを届けたりしました。決して裕福な家では無かったのですが。
私も結婚したら、同じことをするようになりました。夫も同じタイプで、誰にでもご飯を食べていくように言います。
鍵をなくして家に入れなくなった子、「親が離婚したから、俺はグレてやる。」という小学生。中学校の3年間、週の半分以上はうちで晩御飯を食べた子もいました。
私の妹も同じです。夜はいつも一人でレトルトを食べている子が遊びに来ると、おにぎりを食べさせてやります。知り合いのおばさんは、お母さんが出て行ってしまった子の家に、毎朝おにぎりを届けていました。
というような人は、きっとどこにでもいるはずです。「楽しい食卓ってどんなの?」って私に聞いてくれれば、「子どもと一緒に、うちでご飯食べていったら。」って言いますよ。
ぜひ、子どもたちにのびのびと楽しい食事をさせてやってください。お母さんも、理想の食卓や栄養のことは少しだけ遠くに置いておいて、家族で囲む食卓を楽しんでくださいね。
子どもが親になったとき、その幸せな時間をそのまた子どもに伝えていけるように。
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