ダイバーシティ推進はママに嬉しい!誰でも働きやすい職場を知ろう
ダイバーシティの推進は、白人や黒人、アジア系など多様な民族が集まる欧米を中心に議論されてきました。
しかし、現在では企業の業績や働きやすい組織作りに大きな影響を与えるため、日本企業でも経営戦略として取り組む企業が増えてきています。
企業におけるダイバーシティの推進は、性別、国籍や人種、ものの考え方や価値観、年齢や学歴に限らず、多様な「視点」を取り入れることが重要とされています。
女性が企業で働くうえで、知っておいて損はないダイバーシティの考え方や取組企業の実例をご紹介します。
ダイバーシティ経営とは多様性を認めること
ダイバーシティは、直訳すると「多様性」という意味です。
企業では、多様な人材を受け入れ、その個性を活かせる働きやすい職場環境を整え、イノベーションの創出などにつなげようとしています。
インクルージョン(包摂)というと難しく聞こえるかも知れませんが、多様性を認めたうえで、すべての人が能力を発揮し、活躍している状態といえます。
どのような人材でも働きやすい職場環境を整備するために、100人いれば100通りの働き方があることを認め、個々の事情に合わせた働き方を尊重するということです。
日本企業のダイバーシティ推進は道半ば
このような趣旨に反対する人はいないと思いますが、多様性のない組織では、育児や介護で時間的制約のある社員などに対する理解が進まない実情もあるでしょう。
メディアでも注目されているLGBTをはじめとした性的マイノリティの人々やさまざまな障碍を持つ人などの考え方や感じていることを知る機会も限られています。
実際に自分が制約のある立場に置かれてみないと、保育園から発熱の連絡を受け早退するときの周囲に迷惑をかけてしまう申し訳ない気持ちや他の社員と違って出張などを組めずにもどかしくなる気持ちなどは、表面的にしか分からないものです。
KIRINが導入している「なりキリンママ・パパ」プロジェクト!
ビールやジュースなど飲料メーカー大手のKIRINは、2018年2月から「なりキリンママ・パパ」プロジェクトを開始しました。
このプロジェクトは、実際には子供がいない女性の営業社員5人の仮想ママ実験から始まりました。
営業職は、取引先のお客様もあるため、短時間での勤務は難しいと考えられていましたが、ママになっても働き続けるためには、具体的にはどのような改革が必要なのかいう問題意識から、始まったプロジェクトです。
2018年2月から全社で導入された「なりキリンママ・パパ」プロジェクトでは、体験する社員1人あたり1か月間、ママやパパになりきります。
- 「なりキリンママ・パパ」プロジェクトのルール
- 仮想の前提条件
- 子供の年齢は2歳前後
- パートナー(配偶者など)とは同居
- 実家のサポートは原則なし
- フルタイム勤務
始業・就業時間は厳守 | ・こどもを保育園に預けていることを前提に、原則定時で出勤、退社 |
配偶者のサポート | ・週に1度は、パートナーが全面的に育児を引き受けてくれる ・その日は、早朝出勤や残業、業務上必要な懇親会等にも参加できる |
「発熱連絡」で突発の休暇が発生 | ・保育園から、予期せぬ発熱の連絡により、「すぐにお迎え(即時退社)」か「翌日看病(翌日勤務不可)」の指示を受ける ・連絡を受けた社員は、業務に支障のないよう迅速に引き継ぎを行い、電話の指示通り行動する |
ベビーシッター利用制度 | ・どうしても、業務都合で残業せざるを得ない場合、保育園の送迎をベビーシッターに頼んだと仮定して、各地域の相場によって、どの程度費用が発生するか把握し、記録する |
ママパパ日記 | ・仮想ママ・パパを体験し、日々の働き方や気付いた改善策などを振り返って記録する |
ママパパ活動宣言(任意) | ・プロジェクトを開始する際、仕事で関わる人に連絡、宣言する |
ダイバーシティ経営のメリット
KIRINで導入された「なりキリンママ・パパ」プロジェクトでは、労働生産性の向上や組織における意識改革などの成果が見られました。
子育て女性に限らず、さまざまな視点を取り入れるダイバーシティ経営を実践していくことによって、企業が得られるメリットは大きく分けて3つあります。
1. 優秀な人材の確保
インターネットの普及から、ビジネスの変化の速度は過去と比較しても飛躍的に早くなっています。
ビジネス環境が激しく変化する中、企業パフォーマンスに貢献する高度な知識とスキルを持つ優秀な人材は、世界中から取り合いになっています。
また、今後、日本では少子高齢化が進展していくため、十分な労働力が確保できなくなる可能性もあります。
優秀な人材を確保だけにとどまらず、すべての人が自分の強みを発揮できるよう能力を活用する企業は、業績も伸びていきます。
2. イノベーションを実現するきっかけ
一般に、イノベーションは知識の掛け合わせで生まれることが多く、同じようなことを同じように考えている人々の間では、イノベーションが生まれるきっかけが少ないと考えられています。
例えば、日本の大企業を見てみると、大学受験を経て名門大学に入学し、その後、大手企業に入社するというコースが未だに多いです。
一人ひとりの優秀な人材が、ダイバーシティ経営を実践している企業に入社すれば、多様な人材のさまざまな経歴や能力を掛け合わせにより、ビジネス環境の変化を捉え、より柔軟に対応する方法を構築することができるようになります。
3. グローバル化への適応
海外企業でダイバーシティが重視されるのは、多様化する消費者の価値観や要求を捉え、ビジネスとして発展させていくためです。
多様な社員がいれば、そのニーズや需要に対して、マーケティングや商品開発などで、迅速かつ的確に対応できるようになります。
例えば、ある日本企業が成長著しい中国やインドでのビジネス展開を見据えて、マーケティングを開始する場合を考えてみます。
現地に乗り込んで、商慣習や歴史的背景、文化・教育などについて調べ上げる方法もありますが、時間がかかると同時に、やはり、日本人の観点からの理解にとどまってしまうことが多くあります。
ダイバーシティ経営の課題
ダイバーシティ経営に取り組むと、さまざまなメリットがあるため、すべての企業がすぐにダイバーシティの推進に真剣に取り組むべきと考えられますが、実はダイバーシティ経営の実践には、課題もあります。
多様な考え方を取り入れると衝突や誤解が発生しやすくなる
同じような考え方や仕事のプロセスを共有している場合には、コミュニケーションは円滑に進み、阿吽の呼吸で業務を遂行することができます。
一方、多様性のある組織では、お互いの文化や言語、仕事への考え方や働き方の違いから、やりづらさを感じたり、衝突や誤解が生じやすくなってしまいます。
一日の大半の時間を過ごす職場でのストレスは、社員満足度の低下や退職率の上昇といった形で顕在化することがあります。
そのため、単純に多様性を取り入れるだけではなく、個々の強みが発揮できるような環境を合わせて整備していくことがダイバーシティ経営の重要なポイントになります。
ダイバーシティ経営は継続することでしか効果が得られません。
企業のダイバーシティを推進していくためには、相互理解と意識改革を浸透させることが最大の課題と言えるでしょう。
女性管理者の育成を阻むジェンダー・バイアス
日本企業において、特に急務とされている女性管理者の育成の課題は、産休・育休の取得による長期間の休業に加え、育児や介護などの分担が女性に偏ってしまうなど、労働時間制約にかかる負担が挙げられます。
しかし、それ以外にも、女性社員の育成にはジェンダー・バイアスが影響していることが指摘されています。
ジェンダー・バイアスとは、同じ総合職の男性と女性では、男性の方により困難な仕事や面倒な仕事を与えるというケースです。
一見すると上司から女性社員に対する配慮にも感じますが、その女性社員が一人前になったときに、男性社員との間に経験値の差が生じ、スピード感やタフさで劣ってしまいます。
女性社員にとっても、上司から期待されていないのではないかと感じ、やる気や自信を失ってしまうことにもつながります。
ダイバーシティ経営に対する具体的な取り組み
ダイバーシティ経営を実践する企業では、具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか。
1.経済産業省からの情報発信
経済産業省では、それぞれの企業が取り組んでいるダイバーシティ経営を推進するため、先進事例を紹介し、女性を含む多様な人材の活用に取り組むための方策を検討しています。
また、特に女性活躍推進に優れた上場企業の株式を「なでしこ銘柄」に選定しています。
なでしこ銘柄の株価のパフォーマンスは、東証株価指数(TOPIX)を上回っており、投資家にとって有益な情報となっています。
2.「超時短労働」で障碍者雇用を多様化
日本では、多くの企業が、新卒一括採用で長年1つの企業に勤務することが一般的です。
しかし、このような勤務形態では働きづらい障碍者の人たちの多くを労働市場から締め出すことになってしまっていました。
このような状況を改善すべく、一日15分の労働でも報酬を得られるような就業モデルを導入している企業もあります。
しかし、「超時短労働」モデル導入しているソフトバンクの技術部門で働くことにより、現在は、週20時間未満の勤務でプログラミングや物品整理などの仕事をしているといいます。
特性に合わせた業務を任せることによって、「超時短勤務」で働く社員、企業の両方から評判が良いようです。
誰もが輝けるダイバーシティ経営の企業へ
今、社会全体が、自分の能力を過小評価せず、自信を持って得意な能力を活かして働けるように変わろうとしています。
この流れを受け、ダイバーシティ経営の推進のペースは、今後加速していくと考えられます。
育児や介護等の制約があっても働きつづけられる社会や、さまざまな立場の人が協力し、お互いの強みや価値観を取り入れながら企業の成長を実現できるように、一人ひとりの意識改革が重要です。
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