【体験談含む】障害児に災害時の準備や対応方法を日頃から教えていくコツ

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2018/09/12

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、死亡した障害者の死亡率が全住民の死亡率と比べて2倍近くあった、と言われています。

日常生活でさえ困難なことが多い障害者は、災害時はとくに支援が必要となります。

災害はいつどこで起こるか分かりません。災害に対して知識を教えることは、いつかは親元を自立する我が子への生きるための教育です。

障害をもつ筆者の息子の経験を含め、もし災害が起きたらどう行動すればいいか、障害児に教えていきたい準備や対応方法について紹介します。

子供の年齢は違うかもしれませんが、少しでも今後の参考になれば幸いです。

障害を持つ息子が経験した熊本地震

2016年4月14日に起きた熊本地震では、筆者の住む地域でも震度5強の大きな揺れを経験しました。障害を持つ息子は当時小学6年生。

寝ているときに大きな揺れを感じ、けたたましく鳴る災害ブザーで息子はパニックに。揺れが数秒続いている間も身動きがとれず「怖い、怖い」と耳をふさぎながら怯えていました。

眠ろうと思っても、いつまた来る地震の恐怖で息子が眠れず、私たちは身の回りの物を持って公民館へ行きました。

時折鳴るブザーや防災アナウンスが余計に恐怖を掻き立て「どこにいても怖い」とパニックになる息子を見て「周りの人に迷惑をかけるかもしれない」と、公民館には着いたものの、私たちは駐車場から降りることができませんでした。

その夜は車中で寝泊まりし、とても寒かったのを覚えています。車の中でも全く眠ることができず、息子も起きていました。

しかし、狭い車の中で家族一緒にいることが、息子にとっては一番の安心につながったようです。もし家族が別々の場所にいたとしたら、息子はどんな行動をするのだろう…全く予測がつきませんでした。

この熊本地震で息子には「災害が起きたときどのような行動をしたほうがいいのか」一緒に考えるきっかけとなりました。

障害を持つ我が子に教えた災害シュミレーション

大人でも冷静を保つのが難しい災害時に、果たして障害を持つ我が子が落ち着いて行動できるのかも不明でした。

しかし、息子が大人になったとき、少しでも自分が教えたことを行動に移すことができればそれだけで助かると思ったのです。

私は以下について1つずつ教えることにしました。

①避難場所の確認

まず初めに、自分が住んでいるところの避難場所を確認しました。

市から配布されていたハザードマップがありましたが、パッと見ても細かく書かれた文字や漢字も息子には難しく「自分の住む地図の場所がわからない」「避難場所がどこに書かれているかわからない」という状況でした。

小学校や公民館が避難場所となるので、毎日通っている小学校の名前を出すとすぐに納得しました。実際に避難所がわかっても、知らない人がたくさんいる避難所に行けるかどうかも不安でした。

1人で避難するときは、顔見知りの人がいたら必ず声をかけることを伝えました。こういう時にも、普段から近隣の付き合いや顔見知りになることはとても大切なことだと感じます。

②災害が起きたらどう行動するか

次に、1人のときに災害が起きたらどう行動するのかを伝えました。

障害の特性で、パニックになると慌てて外に飛び出す危険性もあります。
  • 急に家を飛び出したりしない
  • 揺れを感じたら机の下に隠れる(机がないときはダンゴムシのポーズをとる)

このように教えていても、落ち着いて判断して動くことができるかどうかは難しいかもしれません。

とにかく「自分の体と頭を守ること」を中心に伝えました。

③災害シュミレーション

災害が起きた時のシュミレーションと確認をしました。ダンゴムシのポーズや、懐中電灯の使い方、家の中で一番安全な場所の確認やマンションの非常口などです。

また、実際に地震体験ができる施設に参加し揺れを経験させたり、いつも歩いている身近な場所はどこが一番危険なのかを確認しました。

話すだけでは記憶が難しい息子は、普段から生活の中に災害シュミレーションを取り入れると視覚で覚えていくので、突然起こる災害時のパニックも少なくなります。

④家用と外出用の家庭内お約束ブック

災害が起きたときいつでも子供が確認できるように、障害の特性に合わせた家庭内のお約束ブックは必要です。

  • 緊急連絡先(両親・祖父母・親戚・病院)
  • 避難場所の確認
  • こういう時はどうするのか
  • 誰に相談したらいいのか
  • 非常用の持ち物
  • 注意事項(やってはいけないことなど)
外出中に災害が起きても困らないように、家用と外出用で別に作っておきカバンに入れて毎日持たせます。

⑤ヘルプカードの使い方を教える

「ヘルプカード」は、知的障害や難病疾患、妊娠初期など外見から分からなくても、援助や配慮を必要としている人が周囲に知らせるために持つカードです。

東日本大震災では、見た目では分からない障害のある人が助けを求められず集団の中で孤立することが多くあったと言います。

ヘルプカードがあれば災害時や日常でも困った際に、周囲の人に手助けをお願いしやすくなります。

ヘルプカードには以下を記載します。

【表面】

  • 氏名
  • 住所
  • 生年月日
  • 連絡先
  • 災害時の家族の集合場所

【裏面】

  • 障害名・病名
  • 通院先・電話番号
  • 服薬の有無
  • 配慮して欲しいこと

配布場所は市や県の福祉課、保健センターなどです。パソコンからダウンロードすることもできます。

特性に合った防災グッズの準備

非常用防災グッズは我が子の特性に合ったものを準備しなければいけません。とくに、災害時はいつもと違った環境でパニックになることが多いです。

【障害児を持つママが災害時で心配していること】

  • いつもと違う環境に馴染めない
  • 聴覚過敏症で大きな音が苦手
  • 避難所の人の多さで生活が困難
  • 非常食や救援物資が食べれず偏食
  • いつもと違うトイレが行けない

その他にも子供の特性で心配事は違いますが、苦手なものへの対策は災害時も大きく関わってくると言えそうです。

非常用に準備したいもの

下記の準備は一例なので、子供に合ったものを準備してくださいね。

持ち物 備考
療育手帳のコピー 本人が分かる部分と判定の記録があるところのコピー
健康保険証のコピー 健康保険証の裏表のコピー
母子手帳のコピー 出生証明書、妊娠出産の記録、予防接種の履歴のコピー
サポートブック サポートブックがあると困り感や支援方法が伝わりやすくなります
ヘルプカード 障害者が災害時や日常で困ったときに提示することができるカード。
必要な支援や配慮を求めることができる
耳せん・イヤーマフ 大きな音が苦手な場合は持参しましょう
アイマスク 光が苦手な子は必要。眠るときにもアイマスクがあると便利です
マスク 砂ぼこりや病気の感染を防ぐ以外にも、防寒代わりにもなります
持病薬・その他必要な薬 持病薬以外に、風邪薬や整腸剤などその他飲める薬
薬の説明書 避難中に薬が切れた場合、説明書を見せて同じものをもらいます
不安解消グッズ 普段遊んでいるおもちゃやお気に入りのグッズなど
ホイッスル・笛 助けてほしい時、笛で居場所を知らせます
おむつ トイレに行けないこともあるので、子供のサイズに合わせたものを用意
非常食・飲み物 子供が食べられる非常食や飲み物

※非常食や薬の期限も定期的に見直しをしましょう。

非常食を避難所でいきなり出すと子供が食べれない可能性があります。生活の中で非常食を出して食べれるものかどうか確認しておくと安心です。

配慮が必要な人のための災害時福祉避難所

災害時は、避難所の生活が難しい障害者や、配慮が必要な高齢者や妊産婦も困難な状況におかれます。

東日本大震災の教訓から「福祉避難所設置・運営に関するガイドライン」を改定し、内閣府は平成28年4月に「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」を定めました。

福祉避難所は、配慮が必要とする人たちが避難し必要な支援や体制を整え、良好な生活環境の確保を目的として設置(災害対策基本法施行令第20条の6第5号)

福祉避難所を設置することで、配慮を必要とする人たちが支援や助言を受けれるように開設するのが目的です。

福祉避難所となる場所

内閣府の「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」によると、福祉避難所の対象となる施設については「バリアフリー」「支援者をより確保しやすい施設を主眼として選定」とあります。

  • 一般の避難所となっている施設(小・中学校、公民館等)
  • 老人福祉施設(デイサービスセンター、小規模多機能施設、老人福祉センター等)
  • 障害者支援施設等の施設(公共・民間)
  • 児童福祉施設(保育所等)
  • 保健センター
  • 特別支援学校
  • 宿泊施設(公共・民間)

自治体がどこに福祉避難所として設置しているのか、予め確認しておく必要があります。筆者は自治体に確認しましたが、どこが福祉避難所になるのかはまだ明確に決まっていないようです。

平成28年の時点で、全国でまだ2万185施設しか設置されておらず現在の設置数も把握ができません。

過去に災害が少ない地域では、福祉避難所の設置もまだまだ遠い先の話になりそうです。

福祉避難所の対象者

福祉避難所の対象者となるのは、何らかの支援が必要となる方を指します。

  • 身体障害者(視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者等)
  • 知的障害者・精神障害者
  • 病弱者・傷病者
  • 難病患者
  • 高齢者
  • 妊産婦
  • 乳幼児

内閣府のガイドラインによると「配慮を必要とする家族まで含めて差支えがない」とされています。

体制が整っていないのが現状

筆者の自治体のように、福祉避難所の設置に関しては現時点で決まっていない地域のほうが多いかもしれません。

遅れてる自治体では、福祉避難所として運営する施設や人員不足なども要因として考えられます。

また、内閣府のガイドラインでは、

  • 福祉避難所に関しては住民に周知されていない
  • 福祉避難所を支える支援者の確保が不十分
  • 広域に避難することを余儀なくされ、交通手段・燃料の確保が困難

など、福祉避難所に関して課題があることも指摘されています。

自分の住んでいる所ではどこが福祉避難所として設置しているのか、事前に確認することが必要です。

災害シュミレーションを生活に取り入れて不安要素を減らそう!

災害時は誰もが不安で強いストレスを感じます。いつもと違う環境や、現実を理解するのが難しい障害児はとくに強く感じることでしょう。

災害を想定したシュミレーションや特性に合わせた備えはとても大切です。親が生きてる間にできることは、我が子に「自分の命を守る方法」を伝えることです。

年齢が低くてまだ理解できない時期は、親が子供の特性に合わせた備えをしっかり準備して、不安要素を減らしてあげてください。

子供の特性によっては教え込み過ぎると、「災害がとても怖いもの」として植え付けてしまう可能性もあります。

我が子に教えることができるベストな時期はそれぞれ違いますが、ハンディキャップを持った人たちが少しでも支援を受けられるように、体制の整った世の中が来ることを願うばかりです。

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