吸引分娩でも焦らずに!トラブル回避・救命のための分娩方法
出産の際、母体は陣痛を起こして子宮を収縮させ胎児を外に出そうとします。赤ちゃんも自分の力で産道をくぐることを目指し動き始めます。
しかし、何らかの原因で赤ちゃんが子宮口から下へ降りてこられなくなることがあります。
吸引分娩はどのような方法で行われるのか、赤ちゃんは安全に産まれてこれるのかについて解説していきます。
赤ちゃんが降りてこない「回旋異常」
赤ちゃんは産道を通るとき、背中を丸め腕を組み体全体を縮めた状態になります。そして少しずつ自分で動きながら下へ下へと降りていくのです。これが回旋です。
お産の途中に胎児の回旋が止まってしまうことを、回旋異常と言います。動きが止まってしまい、本来なら後頭部が先に見えるはずのところ頭が反ってしまう状態です。
回旋が止まってしまう原因はよくわかっていません。
- 骨盤が広すぎて胎児の姿勢が定まらない
- 骨盤が開かずに胎児の頭が引っ掛かる
- 子宮筋腫がある
- 胎児が大きい
- 低体重児
- 水頭症
- 逆子
- 胎児機能不全
- 妊娠高血圧症候群などの合併症
- 微弱陣痛
- お産が長引くことによる母体の疲労
この様な事が起こると、産道の伸びが悪くなり、赤ちゃんがお腹の中でうまく動くことが出来なくなるので回旋が止まるのだと考えらえています。
回旋が止まったままになると、お産に時間がかかり赤ちゃんが酸欠になってしまうので低酸素脳症で危険な状態になります。
そこで吸引分娩によって胎児の姿勢を治すとともに、産道を通りやすくする処置がとられるのです。
吸引分娩の方法と母子それぞれのリスク
回旋の止まった胎児の頭部に吸引カップをつけ、カップが空気を吸い上げる力を利用して外に出します。「引っ張り出す」という感覚が強いですね。
ちょっと乱暴な方法にも聞こえますが、同じく赤ちゃんを引っ張り出す鉗子分娩より母体のダメージが少なく済みます。でも胎児は頭部を圧迫される衝撃が加わります。
そのため、安全に気を付けても通常のお産よりはママの体にも赤ちゃんにも負担が大きくなります。影響や後遺症へのリスクが心配されます。
会陰裂傷を引き起こすかもしれません
出産の時に子宮頚部や外陰部が裂けてしまうことを軟産道損傷と呼びます。通常のお産でも起きやすいものですが、吸引圧がかかることでリスクは高まります。
また、会陰という膣と肛門をつなぐ皮膚が裂けることもあります。これを、会陰裂傷と言います。
組織に傷が走ってしまう症状なので直ちに縫合して治療します。処置が遅れると出血が多くなり危険です。
縫合したあとは痛みが残り、歩いたり座ったりすることが困難なこともあるので、医師に判断してもらって痛み止を使いましょう。
縫合跡は抜糸して糸を取り除くこともありますが、体に吸引されていく素材のものが使われる場合もあります。
赤ちゃんの頭への影響
頭部に圧力がかかるので様々な形で赤ちゃんの頭に影響が現れます。
- 頭血腫
- 赤ちゃんの頭に出来るこぶの一種です。頭の骨膜の下に出来る内出血により、血の塊が丸くたんこぶを作ります。
溜まった血は自然に体に戻っていくのであまり心配はいりません。ですが中には黄疸の症状が強く出ることもあります。
黄疸は、いらなくなった血液を処理する過程で出る黄色い色素ビリルビンの量が増えることで起こります。肝臓への負担が心配な場合は、光線療法を行います。
- 帽状腱膜下血腫
- 帽状腱膜とは、前頭部から後頭部にかけて頭頂を覆う硬い組織です。この下に内出血が起こるものを帽状腱膜下血腫といいます。
頭血腫との違いは内出血が起こる層の違いと、こぶの大きさです。解消するまでに2ヶ月ほど要します。大量出血の危険をともなうため輸血の準備をしておく必要もあります。
また、赤ちゃんの骨は柔らかいため引っ張られた影響で縦に長く伸びた長頭症になることもありますが、多くは自然に直っていくものなので心配はいりません。
保険適用になり費用が支払われます
吸引分娩は赤ちゃんの命を救うための処置なので医療行為にあたります。そのため保険の適用対象になり、加入している医療保険から費用が給付されます。
その際医師に診断書を作成してもらう必要があるので、出産した病院で相談してください。診断書の作成にもお金がかかります。保険の内容によってはここが自己負担となります。
費用は病院によって開きがあり、相場は6000円~25000円ほどです。予定外の出費になりますので、保険に入っていない方は妊娠したら加入を検討してみてください。
妊娠27週以降になると入れなくなる保険商品も多いので、妊娠が分かったらすぐに情報を集めることをおすすめします。
吸引分娩以外にお産を進める方法
吸引分娩と同じく赤ちゃんを人工的に外に引っ張り出す方法には、鉗子分娩があります。大きなスプーンの様なものを頭に引っかけて、抑えつつ外に出します。
先に書きましたがこの方法は赤ちゃんへのダメージは吸引分娩よりは低いですが、その分母体への負担が大きくなるので、どちらを選択するかは医師の判断によります。
鉗子分娩も同様に頭の変形や血腫が出来るなどの後遺症の例がありますが、こちらも自然に治る物なので心配はいりません。
しっかり動いて赤ちゃんが下りてきやすくしましょう
臨月に入ったら赤ちゃんはいつ生まれてもいい状態です。骨盤の筋肉が柔らかなって産道がしっかり開けるように、適度な運動を心がけましょう。
一番いいのはウォーキングです。外に出るのが大変だと言う方は、階段などをつかって踏み台昇降をしても効果を得られます。
またバランスボールがあればその上に足を開いて座る体操をしましょう。股関節がほぐれて骨盤の血の巡りが良くなります。
ですが無理に動くのは禁物です。お腹は充分大きくなっていますし、いつ陣痛がくるのか分からないので、安全を期して運動を続けましょう。
運動以外で陣痛を促進する方法
お産がなかなか進まない場合には、陣痛促進剤を使って人工的に陣痛を起こすという方法もあります。
これは子宮を収縮させる作用のある薬品で、よく使用されるものはオキシトシンとプロスタグランジンです。
通常はこのどちらか一方を点滴などで投与して陣痛のタイミングを計り、効果が見られない場合は薬を変えて再度チャレンジします。
その他のお産を促す方法です。
- ツボ押し
- 三陰交と呼ばれる、くるぶしから指4本分ほど上にあるツボを刺激します。このツボは女性ホルモンの分泌を促すので、温めると陣痛が起こりやすいと言われます。
- アロマを使う
- 陣痛を促進させるアロマというものもあります。子宮を収縮させる効果のあるクラリセージというものです。そのため臨月以前の仕様は控えるように注意が必要です。
- おっぱいマッサージ
- 乳頭を柔らかくするためのおっぱいマッサージは、産後授乳をスムーズにするためにも欠かせないものです。
お風呂に入ったときなどに取り組んでみましょう。乳頭を刺激すると、陣痛促進剤と同じオキシトシンというホルモンが分泌されやすくなります
安全なお産のための処置。頭の形は自然に回復する!
赤ちゃんの小さな頭に圧をかけるので、吸引分娩に対して不安を感じるママも少なくないと思います。
でも、急いで赤ちゃんを外に出さないと酸素が足りなくなってより危険です。赤ちゃんを無事に産むための処置が吸引分娩なので、先生を信頼して任せましょう。



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