赤ちゃんの体重が増えないのは病気のせい?原因となる疾患
赤ちゃんの体重が増えないのには、体質や栄養不足、成長のペースがゆっくりなど様々な原因があります。
多くは自然に改善していって、問題なく成長していけますが、中には病気が原因で体が大きくならないこともあります。
どのような病気が赤ちゃんの成長を妨げているのでしょうか。病気の場合はどんな治療法があるのでしょうか。
ミルクを吐くために太れない「肥厚性幽門狭窄症」
新生児期から生後2~3ヶ月の赤ちゃんがミルクを吐いてしまう病気です。原因は胃の出口にあたる「幽門」という部分の筋肉が、分厚くなっているからです。
通常の胃ならば、飲んだミルクがスムーズに超まで届きますが、肥厚性幽門狭窄症の赤ちゃんは厚くなった筋肉に邪魔されて、ミルクが胃の中にたまってしまいます。
そして目いっぱい溜まると許容量を超えて吐きだしてしまうのです。吐きだすと空腹で辛くなるため、赤ちゃんは泣いてミルク欲しがるようになります。
でも飲んだとしてもまた吐いてしまい、栄養をとることが出来ないので体重がどんどん減っていくのです。
赤ちゃんの幽門狭窄症の治療法
幽門の筋肉がどうして厚くなってしまうのかは原因がよく分かっていません。しかし男の子の発症が女の子に比べて5倍以上もあります。
そこで何らかの遺伝的な症例ではないかと考えられています。治療が遅くなると体液がアルカリ性になってしまうので、早めの受診が必要です。
筋肉が肥大しているかどうかの診断はエコー検査で簡単に行えます。幽門狭窄症だと判明すれば、厚くなった筋肉を切開手術で広げるという方法が取られます。
まだ、研究途中の治療法ですが、硫酸アトロピンという薬を静脈から注入することで、筋肉を柔らかくし、切開しなくても症状を改善できると言われています。
どちらにせよ幽門に充分な広さが確保できればミルクが腸に入ります。栄養分を吸収できるようになって体重も平均に近づいていくでしょう。
甲状腺の機能障害「クレチン症」
先天性甲状腺機能障害とも呼ばれています。文字通り、喉の辺りに位置する甲状腺に何らかの障害があり働きが阻害されている病気です。
甲状腺ホルモンは、細胞のエネルギー代謝に深くかかわっており、幼児の成長には欠かせないものです。
罹患率は3000~5000人に1人と言われていて、遺伝子異常が原因ではないかと研究がすすめられています。
クレチン症は症状の現れ方が様々で、軽症ですむ場合から重症化してしまうことも有ります。
クレチン症の種類は次の通りです。
- 欠損性…胎児期からの甲状腺の形成異常
- 異所性…喉にあるはずの甲状腺が舌の根基にできてしまった状態
- 甲状腺腫性…ホルモンの合成異常
これ以外にも、視床下部や下垂体など脳の機能障害が原因の型もあります。いずれもせよ甲状腺ホルモンが機能しない状態なので、発育異常を起こすのです。
治療には内服薬が用いられます
クレチン症の治療には主に内服薬が処方されます。赤ちゃんのうちは薬が飲めないので、粉薬を水で練って舐めさせるなど、工夫が必要です。
内服薬は甲状腺ホルモンを含んだものになっていて、足らないホルモンの働きを補う目的を持っています。
この内服薬によって、まれに副作用が見られることがあります。甲状腺ホルモン以外の成分による反応です。重篤な場合は医師に相談しましょう。
おおむね小学校に入る年齢までには、永続性なのか一過性なのかの判断が付きます。一過性の物ならやがて服薬の必要もなくなるでしょう。
腸閉塞を起こす「ヒルシュスプルング病」
ヒルシュスプルング病になると重い便秘を起こしたり、腸閉塞になるなどの危険が伴います。
この病気は、胃や腸の働きを制御するための神経が存在しないために、消化器官がうまく動かないので、排便が出来なくなってしまうのです。
胃腸の働きが阻害されるために、ミルクや母乳を飲んだとしても消化吸収が出来ず、体重を増やすためのエネルギーが不足するのです。
放っておくと命にもかかわる病気です。頻繁なお腹の張りや、激しい泣きが続く場合には早く病院に行かなくてはなりません。
治療には腹腔鏡手術が行われます
ヒルシュスプルング病では、腸全体の神経が無いのではなく、神経が残っている部分があるのです。
動かない部分の腸を切除し、健康な腸を引っ張ってきて、肛門に繋ぐ手術を行います。その際傷跡が残りにくいよう、腹腔鏡が用いられることが多くなりました。
あるいは肛門から術具を入れて手術を行うことで、更に傷跡を隠すことが検討されています。
術後も切除した部分に炎症が起こってしまうなどのトラブルもあり、お子さんが順調に成長できるかどうかは、長い目で見守ってあげる必要があります。
神経やホルモンを原因とした病気で低体重が起こります
ホルモンは細胞の代謝や成長に不可欠なものなので、異常が現れると低体重以外にも生命にかかわる重い病気になります。
いずれにせよ早めの治療が必要になります。中には一生付き合っていく症状もありますが、手術することによって根治することもできます。
赤ちゃんの安全で健康な成長のために、パパもママも普段から体の観察を習慣づけるようにしなくてはなりません。