子どもの体の異変ロコモの症状と予防対策!ロコモ体操で体幹を鍛える

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2017/05/20

子供たちの外遊びが減り、ゲームなどで遊ぶことから体を動かす機会も減っています。何となく子供たちの体が弱くなり異変が起きているのは知られているところです。

文部科学省の調査からも子供の運動不足はますます悪化していて、老人の体力の衰えで言われる「ロコモティブシンドローム(運動器機能不全)」と同じ状態だというのです。

ロコモとはどんな状態なのか子供の体の動きをチェックしてみましょう。また予防のために取り入れたいロコモ体操をご紹介します。

今回、兵庫県の健康運動指導士水田伸一氏にお話を伺っていますので、実際に指導していて気づかれたことなどもお伝えしたいと思います。

子どものロコモは体の老化現象!?

子どもの体の異変については、昭和60年頃から始まっているそうです。文部科学省が行っている「体力・運動能力調査」では子どもの運動能力がずっと低下し続けているということなんです。

これは親の私たちも随分以前から耳にしていますよね。私たち親の世代もロコモの先駆けと言えるかもしれません。

ロコモとは「ロコモティブシンドローム」の略称で運動器機能不全や不調のことをいいます。「運動器」という言葉もあまり聞き慣れませんが、体を支えたり動かすための器官をいいます。

腹筋、背筋などの体幹筋、手や足の筋肉、それらを動かす関節、じん帯やアキレス腱といった部分も運動器といいます。全身すみずみまでの器官がそれぞれ関係し合って働きます。

この全身の運動器がちゃんと働かなくなって不調なことを一般的に「ロコモ」と呼んでいます。高齢者向けのロコモ予防講座などは介護予防として最近よく開催されているようですよ。

子どものロコモによる驚くべき怪我の事例を紹介しますと、「跳び箱を飛ぼうとしてついた両手首を骨折した」「転んで顎を強打した」「2年の間に骨折3回、捻挫2回を経験」といったケースです。

高齢者の怪我の仕方と似ていると思いませんか?スポーツ中の怪我やスポーツ障害も非常に増えています。原因は、外遊びが減り体を動かさなくなった「運動不足」です。

運動器検診で分かった子どものロコモの状態

私たちの生活は昔と比べると体力を使わなくなりました。車や公共機関を使い、エスカレーター・エレベーターを利用し、便利な家電製品も普及し家事労働も楽になりました。

昔のように大人も体を動かさなくなりましたし、子どもも外遊びだけでなく、雑巾がけやお使いなど家のお手伝いをする機会が減っているはずです。

高齢者のロコモでは、骨粗鬆症から骨折しやすくなったり、軟骨がすり減り関節が固くなったり、筋力の低下等を言いますが、子どももまさしく同じような状態なのです。

  • 体幹が弱い
  • 手足の関節が硬い
  • 筋力が低下している
  • 体のバランスが弱い

このような状態に体の運動器機能が低下するのは、運動不足だけに限らず生活習慣や食事習慣からも影響を受けています。

では、ロコモを疑う具体的な動作はどのようなことかと言いますと、「まさかこんなこともできないの?」と目を疑うような内容です。

  • 片足立ちができない
  • しゃがめない
  • 体育座りができない
  • 椅子にきちんと座れない
  • くにゃくにゃとして姿勢よく立てない
  • 歩き方が不自然(ロボット歩き)
  • 転んだ時受身ができない

上記のように、当たり前にできそうなことができない子どもが増えているということなんです。

Q:「子どもだけでなく、ママさんたちもロコモという可能性がありますよね?」

水田:「そうなんです。ロコモについては最近知られるようになってきたところですので、親御さんにロコモの勉強をしていただく必要があります。子どもにロコモの症状があっても気づかなかったり、学校の検診でロコモと診断されてもスルーしてしまうことが危険なんです。」

最近では関心の高い小学校では、保護者向けのロコモの講習会を開催したりしているようです。

幼稚園から小学校までの成長期に体づくりができていないと、クラブなどで激しいスポーツに関わる中学校では怪我が絶えません。

実際使用されている運動器検診項目でロコモチェック!

埼玉県の運動器検診モデル事業で使われた主な問診内容をそのまま例に挙げますので、きちんとできるかどうか試してみましょう。

  • 正しい姿勢で「きをつけ」の姿勢動作ができるかをチェックし、その後、歩容状態を観察する。(左右の手足の歩行時の動きとバランスを見る)
  • 片脚立ち(左右ともにバランスよく、5秒以上ふらつかずに立てるか)
  • しゃがみ込み(途中で止まらず、最後までしゃがめるか。かかとが上がらない、後ろにひっくり返らないかをみる)
  • 腕の曲げ伸ばし(ひじが伸びているか、曲げられるか)
  • 両肩挙上(左右ともバランスよく両腕が180度まで上がるかをみる)
  • 体前屈(ひざを曲げずに、指先が楽に床につくか。体幹の硬さをみる)

参照…「跳び箱に手をつき骨折する子供」著:柴田輝明

これらの項目でもし引っかかるものがあれば、ロコモの可能性があるということになります。

決してふざけてできないのではなく、本人は大真面目にやってみるのですがなぜかできない子達が増えてきています。

幼稚園児では、しゃがめない子がいたり、ボールが普通に投げられない子が多く、小学生では、授業中に椅子から落ちる子がいるそうです。じっと椅子に座れない状態ですね。

とにかく疲れやすく、肩こりや腰痛で保健室に来る子も多いといいます。体幹が弱く、運動習慣がないため体も硬く血流が悪くなって症状に出ているとみられます。

まるでくたびれた中高年のオジさんオバさんのようです。体幹をしっかりさせるには、しっかりした筋肉が必要なんです。運動不足で筋力も弱っています。

親子でできる子どものロコモ体操!

幼児からできる簡単に体幹を鍛える運動、ロコモ体操をご紹介しますね。運動器検診で使われる簡単な動作を体に負担をかけないよう取り入れています。

胴体を支える、腹筋・背筋・胸筋・大殿筋などの体幹筋を使います。体幹がしっかりしてくると、姿勢良く立つ、転びそうになっても踏ん張れる、バランス良い歩き方ができるという基本的なことができるようになります。

【子どものロコモ体操】

  1. 起立の姿勢で両方の腕を肘を伸ばしたまま上げる(腕が耳につくように)
  2. 両手を真っ直ぐに横に伸ばして広げる
  3. 手のひらを上に向けて腕を前にまっすぐ伸ばす
  4. 両方の腕を前に習えした状態で肘を曲げたり伸ばしたりする
  5. 同じく前に習えした状態で肘を曲げずに手のひらを回す。
  6. そのままの手のひらを上に向け、両手をグーパーグーパーする
  7. さらにそのままの状態で手首を曲げ伸ばしする
  8. 左右とも5秒以上片足で立つ
  9. 両手を前に伸ばしてかかとを地面につけたまましゃがみこむ
  10. 両方の腕を前に伸ばして手のひらを合わせる
  11. 上体を前にかがめる(脊柱側弯症チェックのため)そのまま床に指をつける
  12. 体を後ろに反らす

体が硬いとどれもスムーズに行えないと思いますが、それぞれの動作を丁寧に、背筋をピンと伸ばしてきちんとやることが大切です。

子供には下記の様に簡単なところから始めていきましょう。

ロコモジムナスティックス0508-1

  • 両手を広げて片足立ち:10数える(フラフラはNG)
  • 両手をゆっくり上げる:耳の後ろ(前に上げるのはNG)
  • グーパー:脇をしめてグーと声を出し、次に手首を十分にそらして前に出しながらパーと声を出す
  • しゃがみ込み:手を前に出して腰を落とす(かかとを浮かすのはNG)
  • 膝を曲げずに体前屈:足の付け根を折りたたむように前屈して手を下して床につける

まっすぐ腕を伸ばして耳につけるように上に上げることができないお子さんもいて、初めてその様子を見たお母さんはビックリして心配になるかもしれませんが、毎日練習していればできるようになります。

介護予防対策を目的に高齢者のために考えられた体操はいろいろあるのですが、子どもにも楽しく基本体操ができるように音楽に合わせて親子でできるロコモ体操もあります。ネットで確認してみてくださいね。

赤ちゃんのロコモ体操にはハイハイがいい!

赤ちゃんは成長過程で自然と全身運動で体幹を鍛える動きをしています。それはハイハイです。まさに寝ながらにしてのロコモ体操です。

赤ちゃんのハイハイは、背筋、腹筋、股関節、肩関節、手足の筋肉など見事に使いこなしています。

ハイハイの順番としては、腹這い、ずり這い、四つ這いへと変化し、お尻を高く突き上げたハイハイ、高這いをしたりもしますよね。

だれも教えているわけではないのに、成長に必要な筋肉や関節周りを巧みに鍛えています。素晴らしい赤ちゃんの不思議です。

またよく観察してみますと、手の指足の指も使って、自分から床を引き寄せたり蹴ったりして指先まで鍛えています。

腹ばいしている時も亀が首を伸ばすように、体のバランスからすると大きい重そうな頭をグイっと首の筋肉で持ち上げています。

8~9ヶ月頃にうつぶせの状態で赤ちゃんを持ち上げ、頭を下に向けて床に近づけようとすると、手を広げて体を支えるような動作「パラシュート反射」という反応をします。

歩くようになり転んだ時にパッと手を前に出す動作も、このように赤ちゃんの頃にマスターしているんですよ。

ハイハイをたっぷり経験した赤ちゃんは転ぶ時、咄嗟に手が前に出て顔を強打したり擦りむくようなことはありません。体が覚えているものなんですね。

しっかりとした体幹、手足の筋力、全身が連動した運動の発達にはハイハイをしっかり体得させることが子どもの将来にもいい影響を与えるということです。

幼いうちから運動機能を発達させるための方法は、家の中でハイハイをたくさんさせてあげることです。

ロコモ予備軍にならないために体を使って遊ぼう

ロコモ予備軍にならないためには、幼児期に全身を使って体の様々な器官を動かしながら遊ぶことが一番です。

幼稚園から小学校低学年までにしっかり体を動かす外遊びをすることです。走ったりジャンプしたりボールを投げたりして遊びます。

Q:「具体的にはどんな遊びを取り入れたらいいですか?」

水田:「小さい子どもにおすすめなのは、手遊び、鬼ごっこ、缶けり、竹馬、おしくらまんじゅう、ダンスなんかもいいですよ。幼児期は神経回路が成人の8~9割程度にも発達します。体を使う器用さや、リズム感などをしっかり養うことが大切です。」

子どもの体の発達には個人差がありますので、その子その子に合わせて基本動作ができるよう運動させましょう。

怪我をしないためにもストレッチなどで体を柔らかくすることも大切ですね。ロコモ体操の動きを取り入れながら体幹を強くしていきましょう。

幼児期からしっかり運動でロコモ予防!

子どもたちの運動量は私たちが思う以上に少なくなっています。幼児期には症状として見えにくいのですが、小学校高学年の頃にはロコモの子どもは症状がはっきり出るというお話でした。

しかも、幼児期~小学校低学年で全身の運動器をバランスよく動かすことが大切で、その成果は後々わかるというものですから侮れません。

子どもたちの運動器疾患を見逃さないために行われていた平成19年から23年の運動器検診モデル事業が終了し、現在では全国の公立学校で学校医による検診が始まっています。

もし、学校から運動機能に異常ありと連絡を受けたら、あまり心配せず、学校の運動器検診協力医に登録されている整形外科医に見てもらうのが一番です。

運動機器疾患が認められても治療するほどでもない場合もあります。このロコモ予備軍は「まだ大丈夫」と安心して放置するのではなく予防のための体操を進めていきましょう。

危険なのは、学校運動器検診で予備軍判定されたにも関わらず、野球やサッカーなど長時間同じスポーツばかりを激しく行うことです。

体幹も弱く筋力も備わっておらず、柔軟性もないところに激しい運動を加えると骨折やスポーツ障害を引き起こすもとです。

筋力を鍛えるのに年齢は全く関係ありません。ママもパパも、おじいさん、おばあさんでも筋肉は鍛えればついてきます。

ロコモ体操に取り組みながらしなやかな肉体を作りましょう。転んでも大きな怪我につながらない体幹を目指し家族全員でロコモ予防に取り組みましょう。

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